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Sam Cooke – Live At The Harlem Square Club 1963 (1985)

 偉大なソウル・シンガーSam Cookeの全貌は、サウンドに抑制の効いたスタジオ・アルバムだけでは到底伺えるものではなかった。今までにもコパカバーナにおける熱狂的なライブ盤は世に出ていたものの、彼の死から数十年経ってから発表された伝説のクラブ〈ハーレム・スクエア〉でのコンサートは、観客とのコール&レスポンスから生まれる熱量が他に類を見ないほどだった。70年の編集盤『The Two Sides Of Sam Cooke』では、Cookeの持つゴスペルとポップスの二面性を対比していたが、本作はまさに後者、つまり彼の俗っぽいパフォーマンスの到達点ともいうべき瞬間をとらえている。
 ソウル・サックスの王者King Curtisらの演奏に支えられたCookeは「Feel It」の歌詞に込められたメッセージで、のっけからゲットーのオーディエンスの心をつかみ、自分の作り出す渦に巻き込んでいく。リズミカルな掛け声をかける彼らに応えるように高らかなシャウトを決める「Chain Gang」などは、ソウルの歴史に残る決定的な瞬間といえるだろう。誰もが知る有名曲「Twistin' The Night Away」が素晴らしいのはもちろんのこと、「Nothing Can Change This Love」ではCurtisのブロウがさえわたり、高ぶるCookeの感情は時おり痛快な笑い声となってあふれ出す。
 あらゆるソウル・シンガーの頂点に彼が君臨しているのは、スイート・ソウルのささやきと激しいシャウトを巧みに使い分ける幅広い音楽性があったからにほかならない。Otis ReddingとCooke、このふたつの点は本作という線ではっきりと繋がっている。