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Fleetwood Mac ‎– Rumours (1977)

 もともとはイギリスのブルース・ムーブメントから出現し、世界最高のポップ・ロックバンドへと変貌を遂げたFleetwood Macだが、『Rumours』を発表した絶頂期とも言える時代は、メンバーにとっては心休まる時期とは言い難いものであった。それを踏まえれば、メンバー内の諍いやドラッグ、家庭の不和といった人間模様がアルバムタイトルに集約されていることに気づかされるだろう。
 そういったバンドの実情に反比例するように、この世の幸せをかき集めたような美しいメロディが本作にはあふれている。アコースティックギターで駆け出すような「Second Hand News」のオープニングから、ビルボードの1位を勝ち取ったStevie Nicksの「Dreams」に続く。「Don't Stop」はChristine McVieのピアノとLindsey Buckinghamのハードなギターのコントラストが映える。そして、そんな切なくも前向きな歌詞の歌から、アルバムを代表するリードトラック「Go Your Own Way」へと流れる完璧な曲の構成は見事としか言いようがない。
 B面にはリズムを重視した展開も見られる。後の名盤『Tusk』を彷彿とさせるMick Fleetwood特有の重量級のグルーブがバンドをけん引していく「The Chain」は、FleetwoodとMcVieというリズム隊の二人を中心にして発展してきたFleetwood Macらしい独特なサウンドだ。「I Don't Want To Know」はカントリー調の弾むようなメロディにボーカルのハーモニーが乗る。
 『Rumours』はメロディ、コーラス、グルーヴ、どれを取ってもあらゆる点でAORの最高傑作だ。メンバーそれぞれの苦境がこうした名曲として昇華されたのならば、世界中を探してもバンドにとってこれほど皮肉なアルバムもそうそうないだろう。