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質問の方法

「先生,この問題わからないんですけど〜」
「この問題のどこがわからないの?」
「えっと〜,ここのところです」
「で,どこまではわかっているの?」
「う〜ん,これはこういうことですよね.その次がわかりません」
「そこを,どういうふうに考えてみたの?」
「こう考えたんですけど...」
「なるほど.それはね...」

以上は講義の後や演習の時にありがちな学生と教員のやりとりです.学生の質問に対して教員が質問で返しているのは,質問が質問としての体を為していないからです.そのため,何を答えていいかわからないからです.まともな質問の仕方というものを身に付けてこなかったので,こういうことになるのでしょう.

学生と教員の間に限らず,誰かに何かわからないことを尋ねるとき,「〜について教えて下さい」だけでは,本人がどこまで勉強していて,どこまでが理解できていて,どこからが理解できていないのか,具体的に何を答えればいいのかが,質問された方はわかりません.

それに,「この問題わからないんですけど」という質問は,自分で何も考えていなさそうで,とても頭が悪そうに聞こえます.質問するときには注意しましょう.

質問するなら,下記3点を明確にしましょう.
・どこまでが理解できていて,どこからが理解できていないのか.
・理解できていない部分について,自分ではどのように考えているのか.
・わからない事柄について,どこまで調べてきたのか.
勉強に利用した文献や資料も必要に応じて伝えるといいでしょう.「あ,その資料はダメ!」とか,「じゃあ,この論文はどう?」とか,アドバイスしてもらえるかもしれません.

大学論─いかに教え、いかに学ぶか」(大塚英志,講談社,2010)に,千葉徳爾が柳田國男との関係を語った文章が引用されています.その中に,質問の仕方について書かれた箇所があります.柳田國男にこれはどういう意味ですかと尋ねても,○○という本を読みたまえとしか返ってこない.そこから,自力で調べることを学び,△△と□□を調べましたが,ここがどうしてもわかりませんと相談するようになる.千葉徳爾がそのように相談すると,柳田國男は示唆に富む返事をする.とまあ,こんな感じです.

このような勉強の仕方,質問の仕方についても,研究室では口うるさく指導がはいります.「これがわかりませ〜ん」なんて質問をすると,ボコボコにされるわけです.「これだけの文献を読んで,自分はこのように考えたのだけれど,ここがどうしても理解できません」という質問をしてもらえると教員としては感涙ものです.

自分が何を理解していて,何を理解していないのかを,自分で把握することは大切です.それができるようになりましょう.中途半端な勉強しかしていない人は,そういう能力が身に付いていません.良い質問ができるようになりましょう.

© 2020 Manabu KANO.

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