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正月はなぜめでたいか―暮らしの中の民俗学

1985年出版の古い本だが,生活の中で何気なく使っているものや,当たり前にしているイベントであっても,知らないことばかりだと痛感した.チコちゃんに叱られるの民俗学版だ.

岩井宏實,「正月はなぜめでたいか―暮らしの中の民俗学」,大月書店,1985

例えば,桃太郎に退治される鬼.あるいは,鬼滅の刃であらゆる年齢層の日本人に身近になったであろう鬼.とにかく鬼は悪者扱いされているけれども,実際に節分では「鬼は外!」と悪霊の象徴として扱われているけれども,元々日本では祖霊が鬼の姿になって悪霊や厄災を払ってくれると信じられてきたそうだ.その立場が反転したのは平安時代で,唐の様式を取り入れたからだそうだ.

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例えば,雛人形のお内裏様とお雛様.イラストみたいに向かって右にお雛様を飾るが,左大臣が右大臣よりも高位であることが示す通り,彼らから見て左側が高位なので,お代理様が向かって右側にあるのが本来の姿だという.元々は正しく(今とは左右反対に)飾っていたらしい.ではなぜ反対になったのか.大正天皇皇后が洋装で写真撮影された際に西洋に習って左右逆にされたことが始まりらしい.

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それから,十干(じっかん).鬼殺隊最終選抜の最後に,産屋敷輝利哉と産屋敷かなたが鬼殺隊の階級を,甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)と列挙するが,ここに登場する「甲」と「乙」は契約書でお馴染みの記号だ.これを十干といい,さらに十二支と合わせて干支(かんし/えと)という.十干は十二支と同様,古代中国で考え出され,日本に伝えられたとされる.

本当に日常生活で当然と思っていることの起源やそうする理由を知らずにボーッと生きてることを痛感できる.

岩井宏實,「正月はなぜめでたいか―暮らしの中の民俗学」,大月書店,1985

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