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本の紹介・読書の記録

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#プラトン

プラトンの「ゴルギアス」

人はどう生きるべきなのか,どのような人が幸せで,どのような人が不幸せなのか.これらの重要な問いに明確な回答を与えるのが,この対話編である. ゴルギアス プラトン (著),加来彰俊 (訳),岩波書店,1967 ソクラテスに対して,政治家であるカルリクレスは,優れた者の生き方を次のようなものであると述べる. つまり,正しく生きようとする者は,自分自身の欲望を抑えるようなことはしないで,欲望はできるだけ大きくなるままに放置しておくべきだ.そして,できるだけ大きくなっているそれ

ソクラテスの弁明・クリトン

あまりに有名な,プラントンによる「ソクラテスの弁明」.本書は,プラトン「ソクラテスの弁明」,プラトン「クリトン」,クセノポン「ソクラテスの弁明」の3作からなる. ソクラテスの弁明・クリトン プラトン (著),三嶋輝夫 (訳),田中享英 (訳),講談社,1998 プラトン「ソクラテスの弁明」国家の信じない神々を導入し,また青少年を堕落させたという罪で告発されたソクラテスが,その裁判で行った弁明を,プラトンがまとめたもの.この裁判において,投票が2度行われた.ソクラテスの最初

【読書】国家(下)(プラトン)

「国家」の後半では様々な国家制度と人間が吟味される.理想国家が堕落する過程で現れる民主制国家の欠点がズバリと指摘されており,興味深い.内容を見ていこう. 哲人統治(哲学者による統治)を実現するためには,何が必要であるか.まず,統治者に相応しい哲学者を育成しなければならない.そのために不可欠な教育とはどのようなものであるか.プラトンはソクラテスの口を借りて,次のように主張する. <善>の実相(イデア)こそは学ぶべき最大のものである あらゆるものに対して存在するイデアの中で

【読書】国家(上)(プラトン)

プラトンが著した数多くの対話編の中にあって,その最高峰とも評されるのが「国家」だ.本書では,人間の善し悪しのみならず,国家の在り方が論じられている.国家とはどのように在るべきかという問いに対して,プラトンはソクラテスの口を借りて「哲学者による統治が最善である」と答える.これが,哲人統治だ.しかし,この哲人統治思想は古代ギリシアにおける政治体制の現実とは大きく乖離しており,また現代に至るまでの世界史の中でもほとんど実現されたことはない.数少ない例の1つが,「自省録」で知られるマ