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本の紹介・読書の記録

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2022年12月の記事一覧

「ANTHRO VISION」人類学的思考法を身に付けるともっと強くなれる

大いに学ぶものがあった.新しいモノの見方を与えてくれる素晴らしい本だ.社会人類学で学位を取り,Financial Times誌の米国編集委員会委員長を務める著者が,人類学を通して身に付けた観察方法や思考方法,物事へのアプローチの仕方が,ビジネスの世界でいかに役立つかを,豊富な興味深い事例と共に解説している. 日本での事例も紹介されている.キットカットだ.世界中で食べられているキットカットだが,以前,日本では売上げが伸び悩んでいた.ネスレのグローバル本社の偉い人達にはその理由

「スコットランド 旅の物語」を読んで歴史や文化や料理を知る

スコッチ研究家である土屋守氏がスコットランドを旅したときの物語なので,もちろんスコッチウイスキーがその基盤にあるのだが,ただの蒸溜所紹介でも旅行記でもなく,スコットランドで暮らすスコットランド人を形作っている歴史や文化,そして料理を紹介している.そしてその意図は, という著者の言葉に現れている.本書「スコットランド 旅の物語」は土屋氏のスコットランド愛に溢れてもいる. ある方に勧められて,村上春樹の「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」を読んだと書いたところ,別の方

人間と共生する,ちょうどいい「コンヴィヴィアル・テクノロジー」とは何か

Industry 4.0とかSociety 5.0とか何でもN.0と名付けてしまう軽薄さは気になるが,技術が段階的に発展してきたことを踏まえて,何とかN.0という言い方がされる.人間は自ら技術を発展させて,その技術を使ってきたわけだが,高度化した技術からはむしろ人間は疎外され,あるいは人間は技術に隷属してしまっているのではないか.そのような問題意識から,あるべき人間とテクノロジーの関係を模索するために,本書で取り上げられているのが「コンヴィヴィアリティ (Conviviali

「ウイスキー検定公式テキスト」で受験勉強

2021年度末に大学院を修了する学生たちからウイスキー(バランタイン17年)をプレゼントしてもらった.それまでウイスキーを飲んでいなかったのだが,そのウイスキーがとても美味しく,それからウイスキーを嗜むようになった. ウイスキー遍歴については別にまとめるつもりだが,さらにウイスキーを楽しむために,ウイスキー検定を受けてみようと思い立った.そこで購入したのが本書「新版ウイスキー検定公式テキスト」だ. これまで,ただウイスキーを飲むだけだったので,とても勉強になった.ただ,誌

「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」を読んでアイラ島に思いを馳せる

村上春樹のスコットランド・アイラ島とアイルランドの旅行記/エッセイ.ウイスキーの聖地巡礼.アイラ島に行って,何日か滞在して,ウイスキーを飲みつつボーッとしたい. アイラ島のボウモア蒸溜所を訪問した村上春樹が,ボウモア蒸溜所マネジャーのジム・マッキュエンに生牡蠣の食べ方を教わったという. うぬぬ,これは試さねばならない. そのアイラ島について,村上春樹はこう締めくくっている. このエッセイの初出誌は1997年の「サントリークォータリー」. © 2022 Manabu