見出し画像

デバイスを使った新しい頭痛治療「レリビオン」とは?

こんばんは、ひふみです。
2023年12月、沢井製薬が厚生労働大臣より、非侵襲型ニューロモデュレーションである「レリビオン」の製造販売承認を取得したとのニュースがありました。
欧米に比べ、日本では頭痛に対するニューロモデュレーションは導入が進んでいないのが現状で、発売されれば家庭で使用できるデバイスとして国内初のケースとなります。

「ニューロモデュレーション?」「レリビオン?」聞きなれない言葉が多くて困惑される方も多いと思います。
順に解説していきます。


頭痛へのニューロモデュレーション治療とは?

ニューロモデュレーションとは機械を用いて電気や磁気の刺激で神経を調整する治療のことです。
そう聞くと胡散臭い感じもしますが、うつ病に対するrTMSというニューロモデュレーション治療が2019年に保険承認されるなど、精神・神経疾患の一部には新しい治療として開始されてきています。
頭痛に対するニューロモデュレーションは、欧米ではすでに認可されており、その治療効果が証明されてきています。
日本の頭痛ガイドライン2021でも
「非侵襲的ニューロモデュレーションは比較的安全性が高く、片頭痛に有効であることにより、片頭痛の重要な治療選択肢になり得る」
と明記されており、今後の発展が期待されていました。

そんな中で今回、日本で製造販売が承認されたのが「レリビオン」です。

新しいニューロモデュレーション「レリビオン」

レリビオンとはどのような装置か?

レリビオンはハチマキ型のデバイスで頭痛の際に取り付けて治療します

引用元:https://link.springer.com/article/10.1007/s40122-022-00394-w

デバイスには三叉神経や後頭神経という頭部の感覚神経を刺激するため、左右3つずつ計6つの電極が取り付けてあります。
片頭痛時にデバイスを使用することで頭痛の軽減が期待されます。
他の鎮痛薬とも併用することも可能です。
使用したデータはアプリで記録して主治医とも共有することができます。

なぜ電気刺激が頭痛に効くの?

三叉神経と後頭神経を刺激することでなぜ頭痛が改善するのでしょうか。
これは電気で大きな感覚神経を刺激することで、頭痛を引き起こしている比較的小さい神経線維からの刺激を二次的に抑制すると考えられています。
分かりにくいですね、、

例えると「痛いの痛いの飛んでけ」に似た感じでしょうか。
僕たちが怪我した時や体が痛い時、痛いところをさすりますよね。
これも、無意識に大きな感覚神経をさすって刺激してあげることでことで、痛みの信号を紛らわせている訳ですね。
厳密な話はさておき、頭痛に対する三叉神経・後頭神経刺激は似たような仕組みだと思ってください。

過去に片頭痛に対する後頭神経刺激や三叉神経刺激はそれぞれ治療効果が認められていました。
そのような背景の中で、両方それぞれ効果あるのならば両方いっぺんに刺激しようと開発されたデバイスがレリビオンといえます。

レリビオンの治療効果に関する論文

レリビオンの効果を検証した論文を紹介します。

引用元:
External Concurrent Occipital and Trigeminal Neurostimulation Relieves Migraine Headache: A Prospective, Randomized, Double-Blind, Sham-Controlled Trial
Oved Daniel, et al. 04 June 2022 Pain and Therapy

これは2022年に報告されたレリビオンvs偽デバイスの比較試験です。
患者さんは片頭痛が起こった約45分以内にレリビオンを開始し、1時間程度神経を刺激します。
これによると、レリビオンを使用した患者さんは使用1時間後、2時間後、24時間後いずれも有意な頭痛の軽快を認めました。
また発症時に中等度以上の頭痛であったにも関わらず、2時間後に無痛になった割合が43%(対照群は10.5%)と高い効果が得られました。
また安全性も非常に高く、ほとんどの患者さんが治療を問題なく終了しました。電気刺激が痛すぎてということもなさそうです。
装着部位の痒みなどは報告があるものの、すべて自然軽快し、重大な副作用は認められませんでした。
この治療は患者が在宅で行うことができ、非常に期待のできる治療と結論づけられています。
また今回の頭痛軽減率は過去のトリプタンの研究と比較し、同等以上の結果でした。

新しい治療「レリビオン」に何を期待するか

効果が結構強力で副作用も少ない。

まずニューロモデュレーションによる頭痛軽減効果は、研究結果を見る限り僕が想定していたより強力であり、今使用されているトリプタンや他の解熱鎮痛薬に匹敵する可能性が示唆されています。
また、副作用も非常に少ないです。
鎮痛薬やトリプタンでは胃腸障害・めまいなどにより内服が困難な方にとって、強力なお守りになるかもしれません。

薬剤使用過多による頭痛(MOH)を改善できる可能性がある。

ニューロモデュレーションの活用により、頭痛時の鎮痛薬の使用頻度を減らすことが期待できます。
また、現状デバイスの使用過多では頭痛は考えにくいです。
よって今までは鎮痛薬を頻用していた慢性頭痛の患者さんも、代わりにレリビオンを使用していくことで、MOHを改善できるかもしれません。
そんなMOH治療のゲームチェンジャーになるか期待したいです。

主治医が治療効果をしっかりとしたデータで管理できる。

レリビオンの使用データを主治医も共有することで、頭痛ダイアリーのように活用することができます。
また、使用状況と頭痛の改善度を検討し、デバイスの強度や使用時間など綿密な調整をすることも期待できます。
これは、内服薬ではなかなかできない微調整であり、主治医も信頼性の高いデータを得ることができます。

以上まだまだ論文も少なく、効果も未知数な部分が多いレリビオンですが、販売後の動向に期待したいですね!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?