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ものをもらうという事

訪問診療をやっていると、帰り間際に患者さんやご家族から「コレもって帰って下さい」といった感じでものをもらったりする事がある。飴やらチョコやらドリンクなど。中には「梨剥いたから食べていって」とか「コーヒー(熱々)淹れたから飲んでいって」もあります。

色々理解した上で、語弊を恐れずに言うと、正直迷惑なんですよね。
「ものをもらっておいて迷惑とは何事だ」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、僕は「ものをあげる事が親切であり、もらった側が絶対喜ぶだろう」という考え方が迷惑だと言いたいんです。

今回の記事は、少し前にウクライナに千羽鶴を送る事が物議を醸しておりましたが、あの内容に近いです。不愉快に感じる方もいらしゃる事は分かっておりますが、吠えさせて下さい。

相手の事を考えていない

冒頭で述べた梨とかコーヒーをくれる方というのは、こちらの状況を理解してくれていない方だと思います。
訪問診療というのは決められた時間で患者さんの居宅をまわって診察します。つまり、その居宅での診察が終わったら次の患者さんの居宅へ行かなきゃいけない事がほとんどなんです。
梨を食べたり、コーヒーが冷めるまで待つという事はその流れを足止めする事になり、次の患者さんを待たせてしまいます。そういったこちらの状況を理解していただけない事に憤りを感じてしまいます。

食べ物を粗末にしたくない

僕は飴やチョコなど個包装されたお菓子やジュースなどをいただいたときは、その場では受け取りますが、後でほしい人を探していればあげるし、いなければ捨てます。何故なら僕は甘い物が好きじゃないからです。
好きでもないものでお腹を満たして、好きな物が食べられなくなってしまう事はしたくはないし、食べたくないからといって食べ物を捨てる事もしたくないんです。
好きかどうかも分からないものをあげるという事は、いらないものを欲しがる人を探したり、捨てさせたりする事を強いている可能性があるという事なんです。

ものがない時代に生まれたから

今ではものをいただく事になった時には諦めてもらう事にしています。
それは以前「なぜ僕にものをくれるのですか?」と伺ったときに「私たちはものがない時代に生まれたからね」とおっしゃった方がいたので諦めがついてしまったんです。つまり、この世代の方にとってはものをあげるという行為は絶対的正義なのだと感じたからです。
当然、そのような考え方を持たないご高齢の方もいる事は理解していますが、「食べものをもらって困る人はいない」という考え方をお持ちの方が一定数いると知った時に、断る事を諦めてしまいました。

人にものをあげるときには一度立ち止まって下さい。
それをあげる時の相手の状況はどうですか?
あげた後に相手に何か強いてませんか?
あげる事であなたが満足していませんか?

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