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その15 自分の当たり前を他人に発信する

  地域には多くの食支援職種があります。医療職、介護職だけではなく、地域の町内会や民生委員の方も入るケースもありますし、各種メーカーの方が入ることもあります。私たち新宿食支援研究会にも20職種以上の方が参加しています。では、皆がそれぞれの仕事を正しく理解しているでしょうか。もしかしたらほとんど理解していないのかもしれません。

 私たちの活動の中で他職種と協働し、それなりの成果を上げることがあります。しかし、後になって、それこそ数年経って「そんなこともできるの!」と思うことがあります。その理由は明らかです。各職種、全員が「これくらいは当たり前だからみんな知っているでしょう」と思っていることがあり、その重要なことを外に発信していないからです。

 在宅医療を初めて20年以上経ちますが、理学療法士と作業療法士の違いはよく知りませんでした。大ざっぱに、歩くのを中心としたリハビリと手の動きを中心にしたリハビリの違いぐらいに考えていました。ところがある時、「理学療法士は学生時代に患者さんの体を実際に触ったりする実習はするが、作業療法士は体を触らないんです」と聞きました。その間何をしているかというと革細工をしたり、陶芸をしたり、機織りをしたりしているそうです。そう聞いて初めて両者の大きな違いに気づきました。

 また、ホームヘルパーの仕事はしっかり明文化されており、それに沿って活動しています。その中で食事介助もしっかり明文化されており、それを実践するプロフェッショナルだったのです(下参照)。

 栄養士が訪問をすると聞くと「塩分控えなさい」「カルシウム取りなさい」「糖分止めなさい」といった指導だけかと思われますが、実際はその環境における生活支援なのです(下参照)。

 私たち歯科もそうです。例えば総入れ歯がゆるくなって落ちてしまうという状況がよくあります。ケースによりますが、10分、20分で修理することができます。これも周囲からは「絶対作り直さないといけないと思った」と言われます。それ以前に、ご家族や他職種の方に「歯医者さんが訪問できるのって知らなかった!」と言われます。

 地域の中で他職種連携と言われますが、もっともっと自分の職種にできることを発信しなければならないでしょう。「誰でも知っているだろう」が「誰も知らない」ことは多くあるのですから。

 他職種連携というのであれば、自分の仕事をしっかりアピールしましょう。自分の当たり前は他人の当たり前ではないものです。


 

 

 

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