【病院で働くということ】・・・Vol.17:経営に興味のない臨床医・現場を知らない経営者
「臨床医は目の前の患者の治療に全力を尽くす。」
では医師は患者の治療のことだけ考えていればいいのでしょうか?
特に病院で働いている医師は、自分が行っている診療でどれだけ病院が診療報酬を得ているか、またどのくらいコストがかかっているかを実はあまり意識していません。意識しなくても仕事が出来るから、というのが本音かもしれませんが。
現在ではほぼすべての主要な疾患に治療ガイドラインが存在し、それ準じた標準的治療から逸脱しないということは、日本国内で保険診療を行う上で大前提となっています。
ただすべての治療をガイドライン通りに行うと、時に病院の利益を損ねるような状況が起こりえます。使用頻度の少ない薬剤をすべてそろえる、必要以上にコストのかかる医療器材を頻用する、入院包括医療制度で持ち出しとなる検査を繰り返す、などです。
もちろん最低限の治療だけで全ての治療がうまくいくわけではないし、時には経営的には赤字でもコストをかけなければいけない状況は存在します。
臨床医の視点
臨床医は自分が今行っている診療にどれだけお金がかかり、どれだけ売上を上げているかを意識することが「ある程度」求められます。
「ある程度」というのはお金のために仕事をする(患者さんや病気をお金に換算する)ことを臨床医は極端に嫌う傾向にあるためです。
それでもおなじ診療をするなら、なるべくコスト削減を意識し、1ヶ月単位で出てくる診療売上実績は振り返っておくべきでしょう。
これによって「あの一ヶ月は頑張ったからこれだけ数字が出たんだな。」と感覚的につかむことが出来るようになります。
経営陣の視点
一方で経営側から見ると、多少のコストがかかっても全体の診療報酬が高くなる方が病院の運営上はうまくいっているとの錯覚を来しがちです。
診療の質を評価せず、外来・入院患者数、手術件数、検査件数が増えればその分診療報酬が増えるシステムではそのような見方に偏るのは致し方ありませんが、人件費や材料費など、トータルでプラスになっているかどうかの判断をすることは病院経営上必須な要素です。実は病院経営においてこの点が一般の企業に比べてかなりいい加減に行われてきたことは事実だと思います(以前からきっちりやっている病院もあり、最近はこのあたりをきちんと評価する施設は増えているとおもいます)。
経営陣は、診療科や医師あたりの売上実績だけで評価することはせず、病院内において医療機材の適正な購入が出来ているか(コスト管理が出来ているか)、その診療に投入されている人的リソースが適正であるかを見極める必要があります。
売上ベースではどうしても診療科間の格差が生じますから、そこだけに目を向けることなく、病院内の各診療科がきちんと連携し診療継続できていることも(出来ていない場合にはどこが原因か)見ていく必要があります。
大切なことはその病院が、その地域で、どのような医療の需要があるかを十分に精査し、それに見合った医療体制の供給を行えているかを臨床医・経営陣ともに検討し、改善を続けていくことです。
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