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全くの初学者でもわかる、保険点数の算定方法

この記事では保険点数の算定について、説明します。


勤務医も先生だと、日々の臨床に追われて、保険点数のことなんてわかりませんよね。私も勉強する前は同じでした。一人でも多くの方に複雑な保険点数算定を知って頂き、ご自身の診療行為が一体いくらになるのかを把握し、今後の開業などへの一翼を担えたらと思っています。


しかし医療行為は無数にあります。それぞれの保険点数について説明するなんてきりがありません。なので、今回は臨床医の基礎とも言える内科クリニックの日常業務を、保険点数に因数分解していこうと思います。


1 初診料と再診療
2 初診料と再診療に加えれる外来管理加算
3 薬に関する点数
4 症例問題①


1 初診料と再診療

さっそく症例を提示しますが
☆花粉症の患者が来て、院外処方で薬を出した。
この症例はどのような点数が加算されるのでしょうか。
答えは、初診料+処方箋料
です。

次の症例です。
☆以前に上気道炎で受診し、今回は2回目の受診。抗生剤を院外処方で出した。
この時の保険点数は
再診料+外来管理加算+処方箋料
です。


つまり、
初回の受診→初診料
2回目の受診→再診料
を加算するイメージで、原則良いです。

ここからは、原則外の話です。(細かい話なので、skipしても良いです。)
・ある診療科で1つの傷病を診療継続中に、他疾患について当該診療科で初診を行っても、初診料を算定することが出来ない。
つまり5/1に上気道炎で内科受診し、それが診療継続中、つまり終診となっていないとします。その中で、5/10に別疾患である胃潰瘍で同診療科を受診しても、初診料を算定は出来ず、再診料を算定します。
一方、5/1に感冒で内科受診し、5/8に終診となり、5/10に胃潰瘍で同診療科を受診する場合は、初診料を算定出来ます。

算定方法はわかりました。
では、これいくらになるのか?
答えは、初診料288点、再診料73点です。
言うまでもないですが、保険点数は原則1点=10円です。(自賠責保険などではこの限りではありません。)


この初診料と再診料には、加算がつきます。
初診料の加算は、以下です。
乳幼児加算:6歳未満を診察した時(75点。しかし時間による加算がある場合は算定不可)
深夜加算:午後10時〜午前6時に診療を行った時(6歳未満695点、6歳以上480点)
休日加算:休日を休診日とする医療機関が、当該日程に診療をした時(6歳未満365点、6歳以上250点)
時間外加算:診療時間外で、深夜と休日を除く時間帯に診療をした時(6歳未満200点、6歳以上85点)

例えば、月〜金で9時〜18時に営業しているクリニックで
☆火曜日24時に救急外来などで6歳以上の患者を診察をした。
→初診料に、深夜加算(480点)を算定出来ます。
☆日曜日が休診日の病院で、日曜20時に救急外来などで診察した。
→初診料に、休日加算(250点)を算定することが出来ます。

また再診の時も、加算条件は同じです。しかし初診の加算と点数が異なります。
乳幼児加算:38点。しかし時間による加算がある場合は算定不可。
深夜加算:6歳未満590点、6歳以上420点
休日加算:6歳未満260点、6歳以上190点
時間外加算:6歳未満135点、6歳以上65点

例えば、月〜金で9時〜18時に営業しているクリニックで
☆6歳以上の患者で、月曜の日中に上気道炎で受診し、火曜の23時に腹痛で受診した。
→再診料に、深夜加算(420点)を算定出来ます。


2 初診料と再診療に加えれる外来管理加算

外来管理加算(52点)
→200床未満の医療機関で再診を行った際に、以下の処置をしなかった時に算定可。
慢性疼痛管理、リハビリ、処置、手術、麻酔、放射線療法、超音波検査、脳波検査、耳鼻咽喉学的検査、眼科学的検査、内視鏡検査、負荷試験etc

例えば、

☆上気道炎の再診で、採血とレントゲン撮影をした場合
→再診料+外来管理加算(52点)+採血に関する点数+レントゲンに関する点数
となります。


3 薬に関する点数

まず院外処方の場合、処方箋料(68点)を算定します。
やや細かいことを言うと、3種類以上の抗不安薬、睡眠薬の処方をしてる場合は、これが28点。
7種類以上の内服薬を処方してる場合は、これが40点となります。

院内処方の場合は
投薬料=薬剤料+調剤料+処方料+調剤技術基本料
となります。

この投薬量を構成する4つを、それぞれ説明していきますね。

・薬剤料

薬には薬価があります。ロキソプロフェン 9.8円/錠、みたいなやつです。これを保険点数に直す必要があります。

内服薬は、1日の合計薬価を、頓服は1回の合計薬価を基礎に考えます。

つまり、ロキソニン3錠3×で飲んでる場合は、9.8×3=29.4円

ロキソニン頓用の場合は、9.8円、ということです。

薬剤料の求め方は

①合計薬価が15円以下なら、1点

②合計薬価が16円以上なら、合計薬価/10で求めた値を五捨五超入

することで、求められます。

先程の例だと、

・ロキソニン3錠3×で飲んでる場合は、

9.8×3=29.4円 29.4≥16なので

29.4/10=2.94 五捨五超入し3点

この処方で、7日間分処方している場合は、3点×7=21点となります。

・ロキソニン頓用の場合は

9.8≤15なので、1点

となります。

・調剤料

調剤料は、薬剤調合に対する点数です。

内服薬、頓服薬処方時には、11点が加算出来ます。

・処方料

基本的に42点を算定出来ます。

しかし、3種類以上の抗うつ薬や向精神病薬を処方している場合はこれが18点、7種類以上の内服薬を処方した場合はこれが29点となります。

・調剤技術基本料

薬剤師が常勤する医療機関で算定することが出来ます。

月1回、14点を算定することが出来ます。


もう一度確認すると

投薬料=薬剤料+調剤料+処方料+調剤技術基本料、です。

では、例題で確認しましょう。

☆薬剤師が常勤でいる医療機関で、咳が止まらない患者に、メジコン錠15mg3錠3×を7日分処方した。この時の投薬料は? 

・薬剤料

メジコン錠15mgの薬価は、5.7円/錠なので、

5.7×3=17.1≥16

17.1/10=1.71 五捨五超入で2点

7日間の処方なので、2点×7=14点

・調剤料

内服薬なので、11点を加算します。

・処方料

3種類以上の抗不安薬や向精神病薬、及び7種類以上の内服薬を処方していないので、42点を算定します。

・調剤技術基本料

常勤の薬剤師がいり医療機関なので、14点を算定します。


まとめると、薬剤料(14点)+調剤料(11点)+処方料(42点)+調剤技術基本料(14点)の、合計81点となります。


4 症例問題①

前提条件:A医院は20床以下(常勤薬剤師はいない)で、営業時間は月〜金の9〜18時とする。

☆ 太郎さん(30歳)は、腹痛で火曜の午前2時にA医院を受診した。胃腸炎と診断されて、ランソプラゾール15mg3錠3×を6日分を院内処方された。


解き方

まず初診料(288点)と深夜加算(480点)が算定出来ます。

ランソプラゾール15mgは薬価16.4円なので、薬剤料

16.4×3=49.2≥16より、

49.2/10=4.92 五捨五超入をして、5点。

7日処方なので、5×6=30点。

調剤料は、内服薬なので11点。

処方料は、3種類以上の抗不安薬や向精神病薬、及び7種類以上の内服薬を処方していないので、42点を算定します。

調剤技術基本料は、A医院は常勤薬剤師がいないので、算定出来ません。

以上より、初診料(288点)+深夜加算(480点)+投薬量(83点){薬剤料(30点)+調剤料(11点)+処方料(42点)}=851点

となります。

もう1問いきましょう。
☆ 6/7に花子さん(5歳)は、発熱でA医院を母親と受診した。急性上気道炎と診断されて、内服薬処方されて帰宅した。6/10に11時に再診し、カロナール200mgを発熱時に頓用で10回分を院外処方された。6/10の保険点数は何点か。

解き方
まず再診料(73点)を算定します。そして200床未満の医療機関での再診なので、外来管理加算(52点)の算定を検討します。
外来管理加算の算定は、算定条件があります。外来で、慢性疼痛管理、リハビリ、処置、手術、麻酔、放射線療法、超音波検査、脳波検査、耳鼻咽喉学的検査、眼科学的検査、内視鏡検査、負荷試験をしなかった時に算定出来るのでしたね。
本症例はいずれも行っていないので、算定可能です。

次に薬に関する点数です。

院外処方で、3種類以上の抗不安薬と睡眠薬の処方ではなく、7種類以上の内服薬の処方でもないので、処方箋料(68点)を算定します。

以上より、再診料(73点)+外来管理加算(52点)+処方箋料(68点)=193点
となります。


5 おわりに

いかがでしたでしょうか。
この記事の内容が、保険点数算定の基礎中の基礎だと思います。
一読では理解出来ない内容かもしれません。
この記事を読んで保険点数算定に少しでも関心を持ってくれたら、私はとても嬉しいです。

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