読書記録【「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。】~ランキングを気にしないで~


■本の紹介とおすすめポイント

100冊分の文章術のエッセンスをたった1冊にまとめてしまったお得本

あなたはこれまで「文章術」のジャンルの本をどれだけ読んだことがありますか。私は、これまで3~4冊は読んでおりますが、文章術の本をいくつか読むと書いてある内容に重なりがあることに気がつきます。

そうであれば、何冊か文章術の本を読んで、異なる著者がみんな同じことを文章技法として紹介していればそれはきっと大事に違いないと感じますよね。さらに、ある技法について何人の著者が、文章術の本の中に紹介しているのかを数えられれば、より大事な文章技法が明らかになるかもしれません。

紹介するこの本は、そのような仮説をもとに、100冊文章術本の内容の重なりを客観的に数えて、さらにそれらをランキング化してお見せするという、これまでにありそうでなかった新しい発想の本です。100冊分のエッセンスがたった1冊で網羅できるお得感半端ない本ですので是非おすすめです。これまで文章術の本を買ったことない方でも、この1冊だけは読んで損はないです。

■是非議論したい点(うるさくてすみません…)

具体的な上位の内容に関しては、他の記事でもたくさん書かれていますので割愛します。ここからはこの本を読み終えたあとの批判的吟味をさせていただきます。

こんなにも良い本ですが、どうしても気になることが2点あります。

・①: 機会的なランキング付けの結果に対する著者らの考察が乏しい

この本の良いところとして、100冊を選んだ基準やランキングの仕方がしっかりと明記されているところです。これは、日頃から客観的文章にこだわっていることの多い自分としては高評価でした。

しかし、「ランキングの付け方があまりに機械的であること」であることで著者の意見がみえにくい内容になっております。。。

確かに、ランキングにこだわった今回のコンセプトとしては客観性をもたせるためにこのような方法をとっているのは適切なのかもしれません(だからここまで売れているともいえますが)。

ですが、せっかく100冊も愚直に読み込んできたこの著者お二人だからこそ見えることもあると思います。そもそも、最初に書いたように、多くの本に書かれている程に重要な文章技法である、というのはまだ仮説の段階にすぎないのです。だから、この結果を著者らがどう捉えているのか、私は是非とも知りたい。

(一応加えておきますと、じつは「あとがき」にお二人の意見が数ページで書かれております。ですが、やはり物足りないです…。)

・②: 量だけではなく質もこだわってみてほしかった

例えば、普遍性を持ち合わせた本質的なものなのか、テクニック的な要素なのか(メールまたはSNSなどで特に使えるなど)で少し評価を分けるなどです。また、これは難しいかもしれませんが、100冊の本自体でもその売上数やプロの評論家などの意見をもとに本自体のレベルをに分けてみるなども面白いと思います。

実際、ランキング上位にもテクニック的なこと(または実務的文章に特化した内容)が多く含まれている印象を受けました。一方で、ランキング中位~下位でも、文章を書く上での本質を言い表していると感じさせる内容も少なくありませんでした。以下に、その中でも気になったものをピックアップしてみます。

第8位 思いつきはメモに、思考はノートにどんどん書く

自分の考えを紙の上に書き出すことの大切さというのは、文章術というより思考の整理の仕方を覚えるという点で非常に重要だと思います。この重要性に関しては、前田裕二さんのメモの魔力、赤羽雄二さんのゼロ秒思考でも強調されています。

第10位:「名文」を繰り返し読む + 第20位:名分を書き写す・真似る + 第32位:一番好きな文章をみつける

これらはみんな名著者の文章から学ぶという点が共通しております。3つに分けてしまったのでランキングが下がっていますが、全て合わせていればもっと上位に位置づけられていたに違いありません。

お手本から学ぶといった手法は基本中の基本であり、その効果は明らかです。しかし、言うは易く行うは難しで、なかなか継続して実行できることではありません。そもそもどれが名文なのかよくわからん、という問題もあります。名文の例は、この本でもいくつか紹介されておりますが、どれもレベルが高くて、容易には手が出せません。

そんななか、ふと、この本自体が名文なのではないかということに気づきました。もしかしたら、この本を繰り返し読んで、自分の血肉にすることができれば、文章力は向上するかもしれません。

第15位:とにかく書く、たくさん書く

こういってしまうと、元も子もないのであまり文章術の本には書かれていないのかもしれませんが、Top3にきてもおかしくない内容だと感じました。結局、文章術を磨くには書く機会を増やすことが必須です。これは、本書のあとがきに著者の1人である小川真理子さんが書かれていることでもあります。

■おわりに

いろいろ煩く書いてしまいましたが、全体的な評価としては星5つです。表面上のテクニックから、本質的なところまで網羅されていますので、まずはこの本を参考に自分の文章術を見直したいです。また、あまりランキングにこだわらないで見たほうがいいです。さらに深く学ぶ必要があれば、新たに別の文章術本をみるのがよいかと。自分は、つぎに接続詞に関する本(第7位 接続詞は正しく使う)でも読もうかなと思いました。

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