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ボーダー・エマニエル

 現在40代の私が、10代だった頃というから、まだ20世紀の頃か。
 昭和から平成後期にかけて、夜は今より卑猥であった。

”11PM”や”トゥナイト”といった、深夜の大人のワイドショーでは、時にはお色気特集などがあり、子供たちはこっそりと寝たふりをしながら、のぞき見していた。

 あまつさえ、新潟地域限定ではあると思うのだが、夜になると”サウンド北越”のCMでは、脈絡なくトップレスの金髪女性が、海から登場していて、それを何とか見ようと、少年たちは必至だった。

 そんな、隠微な夜の象徴が”エマニエル夫人”だった。
 それは、必ず深夜に放送された。
 新聞の番組欄に、その文字が出ていると、少年たちは噂をしはじめる。
 あらすじなんか覚えていない。ただ、とんでもなくエロいということは知っていた。 
 その日の夜は、どうやって親の目をかいくぐって見ようかと思っていたものだ。

 今は、ネット環境も充実し、夜でなくても、いつでも自分の手元にエロが手に入る。

 そんな日が来るなんて、あの頃の少年たちは想像すらしていなかっただろう。
 多分、38度線以上の深い断絶が、深夜の「エマニエル夫人」にあるのだろうと思う。

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