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曼殊沙華

 ロストテクノロジーなどと言うと、すぐにピラミッドだ、デリーの鉄柱だとオーパーツの方に話がいく。
 割合、ましな話でもダマスカス鋼の話になり、その切れ味について神聖化されていたりする話になりがちだ。

 しかし、ロストテクノロジ―は、古代文明が、今よりも高度な技術を持っていたことを意味するものでない。
 それらは、大抵が必要なく捨てられた技術なのである。
 たとえば、代筆屋などというものが以前は普通にあったが、現在では普通にPCで、綺麗な文字をプリントすることが出来るという具合で、廃れていっている。
 もちろん、細々とは残っていくであろうが、中にはそうして完全に消えていった技術もある。

 曼殊沙華粉作りも、その一つであろう。
 曼殊沙華粉は、ヒガンバナの球根から採取する澱粉の一種である。

 知っているかもしれないが、ヒガンバナは非常に毒性が高い。
 が、キチンと毒抜きをすれば大量の澱粉を抽出することが可能である。
 わらびの根や、カタクリの根から澱粉を取っていた時代、ヒガンバナは極めて優秀な植物だったのだ。
 しかし、ジャガイモなどが身近になった現在、わざわざ毒抜きをする必要もないだろうと、曼殊沙華粉は作られなくなったのだ。
 片栗粉や、わらび粉のように名前も残らなかったのは、その毒性からであろう、おそらくは。

(ここまでで10分)

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