心霊写真

 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」などという句があるが、全くその通りで、幽霊なんていうのは、我々の心が作り出した妄想ということが多いわけだ。
 例えば、心霊写真。本か何かで、幽霊が写っているという写真の特集をする時があるが、あれを見ると人間の想像力というものは実に豊かなものなのだと感心する。
 確かに、人の姿らしきものが写っているように見える時もある。
が、たいていのものは岩の影や木の葉の重なりを人の顔と見たり、カメラについた水滴を人魂としたりしている。
 もう、どうしても幽霊を見たということにしたいものだから、変わった石を見て幽霊、川の流れを見て幽霊、雲の流れを見て幽霊などと言っている。

 もっとも、この心霊写真ってヤツは、最近はちょっとやりにくくなってきたようだ。理由としてはデジタルカメラとパソコンが普及したということで、これさえあれば、画像合成なんてお手のもの、簡単に心霊写真が作れてしまう。
 その出来上がりは、普通の心霊写真と全く変わりがない、というかそれ以上の仕上がりだ。ある雑誌の企画で心霊写真をパソコンで作って、有名な霊能力者のところに持っていったところ、全ての霊能力者がこれは本物の心霊写真だと言ったとか。
 まぁ、その雑誌そのものも眉唾くさいところだから、それほど話題には上らないようだったが。

 私は霊という考え方には、否定的でも肯定的でもなく、「いてもいいんじゃない」という立場である。心霊写真集を見ても、「苦しいなぁ、この解釈」などと思っても、「こんな嘘っぱちの本はよくない!」と言って憤慨したりすることはない。別に私に危害が及ぶわけでもないし。

 ただ、一つだけ納得できないことがある。一般に考えられている、霊というのは、精神というかオーラというか、そういうものだという話。
 肉体は仮の宿で、霊魂が中身で、それを霊感が強い人が見たり、心霊写真に写ったものが幽霊だという話。
 霊がいたって、別に構わない。構わないのだが肉体が仮の宿で、霊が中身だというなら、出てくる霊のほとんどが服を着ているというのが、どうにも納得できない。
 肉体が仮の宿だというなら、服なんて言うものは、虚飾そのもののはずだ。なのに、なぜ幽霊は服を着ているのだ?まさか、服にまで霊魂が宿っているなどは言わないだろう。

 と、すると「本当の幽霊は裸」というのが結論から出てくる。いや、あくまでも肉体を「仮の宿」とするという考えからなのだが。それにしては裸の幽霊の話というのが少なすぎはしないか。少なくとも私は心霊写真などで見たことがない
 「幽霊は死んだとき、そのままの格好で現れるんだよ、落ち武者の格好をした幽霊とかいるだろう」などという人もいるが、コトの最中に死んだとかの理由で、裸で死んだ人も多いと思うのだ。
 「いや幽霊は精神的存在だから自分がしたいと思った格好が、そのまま自分の格好になるのだ」などと言うなら、わざわざ破れたボロボロの服で出てくる幽霊がいるのははどうしてなのだ?
 自分がしたいと思った格好ならば露出狂的幽霊がいてもおかしくはないではないか!

  理解した。おそらく隠している。ヌードの心霊写真。
「いや、コレはさすがにまずいだろ」という感じのモロ見え写真。そんな心霊写真が数多く、どこかの倉庫に眠っているのだ。
 隠し事はよくない。そういうものは万人に公開されるべきだ。怖い幽霊ばかりでなくセクシーな幽霊も広く世に知らしめるべきだ。

 ということで、これからは心霊写真特集でもヌード特集をするよう、関係者の方に切にお願いする。
 服を着ている幽霊だったら、セーラー服とかナース服の幽霊などもいるはずなので、その辺りもよろしく。

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