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アバター接客が、社会問題を解決するコミュニケーションとなる?「AvaTalk」の開発秘話をインタビュー。(後編)

こんにちは!本日のデジタル&フィジカルデザインのテーマは「アバター接客」についてです。近年、非対面・非接触を叶える画期的な技術として、企業が導入・検討し始めています。アバター接客の中でもひときわ群を抜いて突出しているのが、HEROES株式会社の提供している「AvaTalk(アバトーク)」。

各業界から導入希望のラブコールが止まない「Ava Talk」を提供されている、HEROES代表の高崎さんにお話を伺いました。今回は後編として、以下の内容をお聞きしていきます!

[ インタビューサマリー ]
・アバターのデザインはどうあるべき?(後編)
・アバター接客のニーズが高まる業界やサービスとは(後編)
・HEROES、今後のビジョン(後編)

前編はこちらからご覧いただけます。

HEROES株式会社 高崎さんプロフィール

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(おさらい)アバター接客とは、どのようなものか?

アバターに扮した人が、お客さんと遠隔で会話をするというのがアバター接客の基本的なサービスです。コロナ渦において非対面・非接触が求められたり、雇用創出の点でも、ここ1〜2年で急速に認知と拡大が始まっている画期的な技術。リアルな人がアバターに扮して会話をするため、AIでは対応しにくい「リアルタイムで円滑なコミュニケーション」を行うことができます。

アバターのデザインはどうあるべきか?を徹底的に突き詰めた。

Q: Ava talkを様々な企業やサービスに導入し始めているという前回のお話がありましたが、導入する上でのこだわりや大切にしていることを教えてください。

高崎さん:私たちがこだわっているのは、アバターをいかに現実的に受け入れられやすくするかです。ソーシャルゲームの可愛らしさを求めたアバターではなく、より人間に近い形で提供することを踏まえたバーチャルとフィジカルが融合できるデザインや設計を心がけています。

Q: アバターを人間らしくする、ということですね。

高崎さん:はい。アバターを日本人の7:3等身・平均に合わせた状態に近づけました。顔のパーツ配置も黄金比率を意識し、より人間らしさを追求しています。ただし精度を高め過ぎない。アバターの中身はリアルな人間なので、いかにスムーズにコミュニケーションを取れるかを重要視したデザインです。思想として「人と人とがコミュニケーションをとりやすい状態を作る」という芯の部分からブレないように作成していますね。

近年、デジタルとフィジカル(リアル)の一貫した体験が求められるようになりました。その一方でバーチャルとフィジカルにおいての行き来においても「人らしさ」は大事だと捉えています。そのため、現時点では人の動きに合わせてアバターが連動するような仕掛けですが、逆に今後はアバターが自動的に動きを読み取って、おじぎをしたり、笑顔を作るなどのジェスチャーが実装することも想定しています。

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人には「変身願望」がある?ユーザーの心理を捉えたアバターデザイン。

Q: 私たちも別のプロジェクト(※1)でアバター接客の実験を行いましたが、その時に「人ではなく、動物などを使って接客ができないか」という意見がありました。

高崎さん:今までの経験を通じて得られた示唆ですが、人間は変身願望があるはずなんです。裏付ける事例として、自分の年齢よりも若いアバターに扮したご高齢の方がそのアバターになりきって演じようとしていたというケースがあります。ご本人がネガティブに感じている部分をうまく隠しながらポジティブに変換できる要素になるうるのではないでしょうか。動物なども面白いなと感じる一方、よりリアルなコミュニケーションをとるためには「人間らしさ」は必要ですよね。見た目や細かい動きは、より本音が伝わるための必要不可欠な要素だと捉えています。

(※1)NTTD・ネットイヤーグループが関わった東急ハンズ様での実証実験

アバター接客のニーズが高まる業界やサービスについて。

Q: こだわり抜かれたデザインやマインドは非常に重要ですね。現在は約20ほどのプロジェクトが進行中とのことですが、どのようなサービスや企業で導入が始まってるのでしょうか?

高崎さん:内閣府のムーンショット目標(※2) のように、身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会という位置付けで自治体や行政から、依頼が届き始めています。
最近ですと、栃木県佐野市では「スマートセーフシティー」をテーマに行政サービスや限界集落のサポート体制を作るためにAva talkを用いたプラットフォームを作る取り組みが始まりました。限界集落の話し相手を作るという取り組みにおいては、一人暮らしの方を中心にAva talkを使って情報交換やコミュニティが作れるような流れを検討しています。Ava talkの強みとして、アバターだからご高齢の方でも話しやすい雰囲気を作れるんです。

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(※2)内閣府のムーンショット目標
Q: まさに、高崎さんが思い描いていた「社会問題」を解決するためのアプローチとして導入が始まったケースなんですね。

高崎さん:はい。これも実証実験中ですが、愛知県豊川市内のJAひまわりグリーンセンター音羽様にて、アバター店員による弁当や惣菜の販売を始めています。引きこもりの方や人と気軽に話せない人を対象として対面ではないコミュニケーションを続けていく中で対話ができる状態へ導けないか?というのが大きな目的です。進めていく中での課題もありましたが、結果を元に人材業界と協業しながら、社会復帰を目指すためのサポートが始められるように準備をしています。若い方から高齢者まで、社会的孤独の解消と総活躍社会の醸成を目指しております。

Q: 実験を通じて得られた結果を元に、どのように導入していくべきか?を見据えられているのが印象的です。

高崎さん:ありがとうございます。他にも健康保険組合を運営している企業様で実験が始まりました。生活習慣予防の管理栄養士による指導をアバターを使って行う、という取り組みです。在宅勤務において、特に女性はメイクをしたり、プライベートな空間を見られるのが苦手という声を聞く中で、自宅にいながら気軽に業務ができるというニーズでお声がかかりました。指導を受ける人はアプリを通じて、アバター接客による管理指導を受けられるようになります。

Q: とても興味深いです。弊社で関わっていた別のアバター接客でも、「雇用機会での新しい選択肢」というニーズがありました。色々な事情で働けなくなるような人をサポートする機会にもなりますね。

高崎さん:自宅から対応しやすくなり、属人化しすぎないのがメリットでもあるため「時短で仕事をできる人を時間単位でつなげていく」といったような柔軟な働き方を実現できます。アバターは1つでも、その1つを複数人で連携して対応していくというようなことができるので、雇用の機会も創出していくことができると期待されています。例えば、アバター接客を使うことができれば、コールセンターなどでも自宅で派遣などもできますよね。

アバター接客で、モノを売ろうとしないことが大切かもしれない。

Q: お話を聞いていると、企業側のサービスを売るための仕組みで使われている感じはしませんでした。ただ、導入を検討されている企業の中には「モノを売るために導入したい」という声もあるかと思います。この辺りはどのようにご提案されているのでしょうか?

高崎さん:個人的な見解ですが、「モノを売るためのツール」として全面的に押し出すべきではないと考えています。ここで大切になるのは、「必要な無駄話・潜在ニーズを引き出すための会話づくり」です。最終的に購買してもらうことが目的だとしても、そこに至るまでの道筋をカスタマージャーニーマップなどで可視化しながら最適なタイミングでプッシュするのが非常に重要だと捉えています。

そのため、私たちHEROESではただ単純にアバター接客を導入しましょう、という話をするのではなく、人々の購買行動の中でどう機能していくか?を考えたコミュニケーションデザインをご提案しています。ワコールのパルレでは、お客様のカルテを作るためにAva talkを導入しています。あの場所では「下着に関する悩み」を解決するための場づくりを通して、最終的には他店舗やオンラインなどのオムニチャネルで購入いただく流れのほうが自然だと考えているからです。

Q: なるほど。考え方に納得する反面、企業の提案においてはハードルが高くなりますね。

高崎さん:おっしゃる通り、モノを売るために検討したいとお考えの企業においては導入ハードルが高くなりますよね。最終的に売る、としても「検討」フェーズにおいてのサポートとして導入ができれば、購買に繋がるケースもあるんです。例えば高い健康食品をいきなり買わせるのではなく、気軽な健康相談という形でききながら、最適にデータをためて商品をレコメンドするなどのやり方です。ただモノを売るだけならば、アバター接客である必要はないと考えています。

導入にあたって現場の人に使ってもらおうとするケースもありますが、育休中や現在はリタイアされている方で「柔軟に働いて欲しい」という人に使ってもらうのはどうか?というような提案などもしています。このような形で、企業が導入する上での課題や視点を見据えた提案も行っています。

社会問題を解決するための手段を創出したい、という想い。

Q: 今回、色々な角度からお話をお伺いしましたが、高崎さんの中で思い描いている「社会問題を解決するためのコミュニケーション」という点が強く印象に残りました。今後の展望について、教えてください。

高崎さん:現在のプロジェクトなども踏まえ、今後も様々な企業や業界と連携していきたいと考えています。冒頭にお話した通り、HEROESでは人間的に踏み込んだ「バリアフリーなコミュニケーションを提供する場所」を作っていきたいと考えています。今はまだ少し遠回りしているのかもしれませんが、実現に向けて確実に近づいています。これからもヘルスケアの領域や、社会問題を解決するための手段としてAva talkを活用してもらえたらと思います。
特にコロナ渦においては、非接触・リモートではなくて、人と人とのつながりだったのではないでしょうか。話したい・会いたいという根本的な人間としての欲求とオーラルコミュニケーションの重要性です。Ava talkを通じてデジタル上で対話しやすくなることを考えていけたら、ニューノーマルな生活の中にも溶け込みやすくなると信じています。現在はアバターという形で模索していますが、人と人が正しいコミュニケーションをとるための手段であれば、必ずしもアバターでなくてもいいと思います。人と人とのコミュニケーション、本音が語れるプラットフォームをつくることを大切にしながら、今後もビジョンを持ち続けて、多くの人々が笑顔で人生と未来を楽しめる社会をデザインしていきます。

Q: 何を大切にするか?のビジョンがブレないからこそ、様々なシーンにおいての活用が進んでいるのだなということを全体のお話を通じて感じました。貴重なお話をありがとうございました!

まとめ:「何を解決するための技術なのか」を考え抜くことの重要性と、新しいコミュニケーションの場づくりの可能性。

今回、HEROES様の高崎さんのお話を伺う中で強く感じたことは「ブレないビジョン」の重要性でした。課題に対しての技術が生まれたときに、プロジェクトが進行していくと目先のことに囚われがちです。ただ、「何のために解決するものなのか」が常にブレない状態で突き進めることで、サービスを使うユーザーも、ビジネスを成功させる企業も、それぞれにとってのメリットがあることを改めて実感させられました。

また、これからの未来を見据えた社会問題になりうることに対しての「コミュニケーションをフォローするための場づくり」を常に意識されている姿が印象的でした。私たちもサービスを提供する上で、「何を大切にするべきなのか」立ち返りながら関わっていけたらと思います。HEROES様の今後のサービス展開にご期待ください!

HEROES株式会社



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