コロナシフト〜リアルなアメリカの現在〜②「アメリカで必要不可欠なアプリやサービス」
こんにちは!私たちデジタル&フィジカルデザイン編集部では、「リアルなアメリカの現在(今)」を全3回のシリーズ連載として立ち上げました。アメリカ在住の方からのリアルな声に耳を傾け、コロナ渦におけるアメリカの課題やデジタルシフトによってもたらされた消費行動の変化、大統領選挙のゆくえを紐解いていきます。
第二回目のテーマは、「アメリカで必要不可欠なアプリとサービス」。今回もMike Uesugiさん(以後Mikeさん)にお話を伺いました。(※このシリーズは個人の見解も含まれるため、ひとつの考察として捉えて頂ければ幸いです)
第一回目の記事はこちらから↓
コロナ渦で急速に加速した、アメリカでの生活に欠かせないアプリとサービスとは。
前回のインタビュー時に「ショッピングモールのオムニチャネル化の促進」「カーブサイド・ピックアップなど非接触で受け取れるサービス」の需要が高まっているというお話がありました。今回は詳しく、具体的なサービスの話を伺います。
Q: コロナ渦になってから、急速に需要が高まったサービスなどはありますか?
Mikeさん:はい、コロナ渦になってからは「インスタカート」というようなサービスの需要が高まってきました。インスタカートはスーパーマーケットの商品がアプリ上で購入できるサービスです。Uberと同じような形式で、アプリから注文が入ると配達員に通知が届きます。アプリ上で全ての指示(スーパーの中で購入してほしいもの)が表示されるため、それらをピックアップして代理購入し、配達するというような形態です。インスタカートを筆頭に、「ドアダッシュ」「ポストメイト」「ウーバーイーツ」などの非対面で必要な商品を代わりに購入・配達してくれるサービス需要が高まっていますね。
■インスタカート
https://www.instacart.com/
■ドアダッシュ
https://www.doordash.com/en-US/
■ポストメイト
https://postmates.com/
■ウーバーイーツ(日本でもおなじみ)
https://www.ubereats.com/jp
Q: 日本ではウーバーイーツが普及し始めていますが、アメリカの方がデリバリー系のサービスが多そうですね。前回の中で、アメリカではアプリがないと生きていけないぐらい普及しているとのことでしたが、上記のようなサービスアプリと公式サービスアプリ(例:スターバックスの公式アプリ)では、どちらの方が使われているのでしょうか?
Mikeさん:(予想にはなりますが)ユーザーはシーンによって使い分けているようですね。例えば、配達してほしいときはインスタカート・ドアダッシュを使うけれど、自分でピックアップするときはスターバックスのアプリを使う。どちらを使ってもポイントがつくので、うまく使い分けしながら利用しているようです。
Q:私も時々ウーバーイーツを利用しています。利用するたびに手数料が高いイメージを受けますが、アメリカではどの年代でも使われているのでしょうか?
Mikeさん:どの年代にも、と言われると全体的に普及している訳ではないかもしれません。ただ、現在の情勢的にもニーズが高まっています。どのサービスもプロモーションが上手いので、5ドル、10ドルなどの手数料をクーポン適用で割引きさせて実質手数料ゼロとし「まずはサービスを使ってもらう」ようにしています。キャンペーンで割引ながら慣れさせつつ、便利だ!と感じてもらうのが目的ですが、元々アメリカはチップ文化があるので、何かをしてくれた人に対して何かを支払うということに違和感があまりありません。おそらく今後も定着していくのではないかと思います。
Q:なるほど。確かにチップ文化の普及しているアメリカでは、手数料というよりも運んでくれた人へのサービス料と捉えていそうですね。
Mikeさん:はい。実際に使ってみるとかなり便利なので、生活の一部として活用されていくのではないでしょうか。(余談ですが)私の息子もドアダッシュでアルバイトをしているんですよ。
Q: 配達側もスキマ時間を有効活用できるので、利用者側と共にお互いに良い面がありますね。ウーバーイーツの普及によって、日本ではデリバリーに力を入れている店舗が増えてきました。アメリカではゴーストキッチン(※1)が動き始めたと知りましたが、実際はどうですか?
Mikeさん:人々が密集しているニューヨークなどは増えてきている印象を受けます。Uberの元CEOがゴーストキッチンをクラウド化するということで立ち上がったそうですよ。
(※1)ゴーストキッチンとは、店舗を持たないデリバリー専門レストランが複数入居する形態のこと。テナント料や人件費を抑えるなどの観点と、一件ずつレストランを回ってピックアップすることが手間となっているフードデリバリー両方にとって効率のよいサービス形態であるといえます。ウーバー・テクノロジーズの元CEOであるトラヴィス・カラニック氏は、2019年にゴーストキッチン事業者のクラウドキッチンズに多額の投資を行ったそうです。クラウドキッチンズはデリバリー専門の個人経営のレストラン、フードトラックのオーナーなどを顧客としていて、月額制で設備を貸し出し、データ分析を請負ったりしているそうです。(参考文献:フードテック革命)
Q:時代に合わせて、レストランの形も変わってきているんですね。ちなみに11月下旬のサンクスギビンクデーからクリスマスまでの1ヶ月間はホリデーシーズンとして「消費行動」が活発になる時期でもありますが、今年はどうでしょうか?
Mikeさん:これもアメリカは二極化していて、これまで通り家族や仲間と楽しもうとする人と今年は控える人でかなり分かれると予想されます。ホリデーシーズンにかけて、コロナ感染者が増えるという危機的状況もささやかれているので、おそらくですが保守的な人は控えるでしょう。その一方で帰省したり、人に会うという人もいます。プレゼントはコロナ前から、Amazonでギフトカードやプレゼントを贈るのが主流になってきてはいます。昔はデパートで贈り物を買うということが当たり前でしたが、全てオンラインショッピングで完結してしまう流れですね。私自身がコロナ渦になってからの消費行動で面白いなと感じたのが、「基本モバイルで物が買えるが、
スーパーでもセルフチェックアウト、完全非対面で購入できるようになっている」ということです。
Q:具体的にどのような流れなのかを教えていただけますか?
Mikeさん:例えばウォールマートなどは店舗空間が空港のように改装されたんです(※2)。中に入ると掲示板が表示されて、掲示板から店舗空間のどの場所に何があるか?が表示されています。ユーザーは専用のアプリを見ながら、お店で必要なものを素早く買える仕組みが提供されているんです。例えば、日本のドン・キホーテやカルディなどは新しい商品に出会ってもらうためにあえて雑多に商品を置いて「宝探し」のように店内を探し回るような設計ですが、ウォールマートは自分がほしいものをすぐに買えるような体験を提供しています。まさしく、コロナでできるだけ滞在時間を短くしたいというニーズに答えようとしている、面白い流れだなと感じています。
(※2)ウォルマート本社近くにあるスーパーセンターは、すでに一部の店舗が取り入れている新デザインは、空港ターミナルが採用しているウェイファインディングシステム(Wayfinding System)を売り場に応用したものとのこと。ウェイファインディングシステムは店舗などにおいては部門の名称を記したサイネージやPOPなどを売り場にある什器等を通じて人を目的地に誘導する技術。環境心理学でいえば、初めて訪れる空港ターミナルなど不慣れな場所において人が目的地を探しやすくできるそうです。最も特筆すべき特徴はウォルマート・ストアアプリの利用を促進するようにしていることだ。視覚的なPOPを使い、売り場検索などストアアプリの利用を促している。
参考:http://blog.livedoor.jp/usretail/archives/cat_50023872.html
Q:店舗でアプリを利用する、まさにデジタルとフィジカルが見事に融合している事例ですね!お話を聞いていると、アメリカはかなり先を進んでいる印象を受けます。日本でも、Amazon go(※3)などの情報が入ってきていますが、実際流行っているのでしょうか?
Mikeさん:全面的にという印象はないですが、シアトルなどの一部の地域でやっているようです。決済が非常にスムーズなので、とても面白いですね。
(※3)Amazon goはいわゆる「レジなしのコンビニ・スーパー」のこと。Amazon Goのスマホアプリを入場ゲートで読み取り、入店したら自分のマイバックか店内のカゴに商品を入れ、退店ゲートにあるQRコードをアプリで読み込ませるだけで買い物が完了するというもの。レジがないため、完全「非対面」で商品購入ができるサービス。
Q:今後は、非対面・非接触で受けられるサービスがさらに増えそうですね。例えば、ドローンなどで配送を行うなどの動きはあるのでしょうか?
Mikeさん:テスト段階であるものの、徐々に取り入れられ始めていると感じています。その筆頭にあるのが、テスラモーターズ。彼らはAIでロボットタクシー(※4)をやろうとしています。まだ走り始めていないですが、セルフドライビングのテスト精度が高くて驚いていますよ。今後本採用されれば、タクシー業務に参入していくことも見込まれます。本格導入されたらUberのように人が運ぶような人的サービスは仕事が減っていくかもしれません。タクシーだけではなく、トラックまで範囲が広がるとロジスティクスに大きな影響を与えるでしょう。アメリカでは長距離を走行するドライバーになる人が少ないという課題があるので、これらを解決できるかもしれません。
(※4)ロボタクシー事業を始めようとしているテスラモーターズ。専用のモバイルアプリからまるでUberのようにテスラ車を呼び出して利用できるようになる計画。テスラのイーロン・マスク(CEO)は100万台のロボットタクシー(自動運転タクシー)を2020年に公道デビューさせる計画を明らかにしています。
■テスラモーターズ
https://www.tesla.com/
Q:AIを使った自動運転はGoogleなどもやっているようですね。
Mikeさん:やっているようですが、個人的な所感ではテスラがかなり先を進んでいる印象を受けます。テスラは自動車の会社ではなく、エネルギーの会社と捉えた方が良いのかもしれません。
Q: Mikeさんご自身が、コロナ渦において変わった消費行動はありましたか?
Mikeさん:僕自身、ウォールマート(スーパー)に本当に行かなくなりましたね。ウォールマートプラスというサービスがあって、35ドル以上購入すれば翌日に配達してくれるなどのサービスも出てきたんです。Amazonプライムも人気ですが、フィジカルな店舗を持つ強みもあります。例えば、家に帰る途中で急遽商品を購入したいと思った時にすぐに買いにいけますからね。店舗に入らずに購入してしまうことも含めて、デジタルを活用しながらフィジカルな場で効率的に消費していく、という行動になりつつあります。そういう意味では、やはりアプリは私たちの生活にとって必要不可欠なデジタルツールになっているのかもしれません。
Q:お話いただき、ありがとうございました!日本はDX(デジタルトランスフォーメーション)」のシフトが中々進まないという課題がありますので、第三回目では「企業に求められる本質的なDXとイノベーション」についてお伺いできればと思います。
第二回のまとめ
今回は具体的に流行っているサービスやアプリについてお伺いができ、リアルなアメリカを感じとることができました。非対面・非接触で受けられるサービスの普及により、フィジカルな店舗の形態や、人々の行動が大きく変わったこと、ユーザーのニーズをいち早く吸収し現場に取り入れる動きの速さを感じました。
次回の第三回目も是非ご覧いただければと思います!
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