ケガとターンアウトの関係性について

ケガとターンアウトの関係性について

はじめに

初回のテーマは,ケガとバレエの基本であるターンアウト(アンデオール)についてです.
やはり,ケガはダンサーにつきものです.また詳細については別に記事を書こうと思いますが,プロのダンサーで90%,生徒で63%が少なくとも1回は受傷していると言われています.

そして,バレエをしている人なら,ターンアウトが1番の基本であることをよくわかっていると思います.
バレエの先生にも,股関節から正しいターンアウトをしなさいと
(口うるさく)言われていることでしょう(笑)

さて,ここで質問です.ターンアウトは体のどの部分でしますか?
股関節?膝?足首?
諸説ありますが,片脚の外旋角度は90°を理想とすると,
股関節70°,膝5°,足首15°と言われています.
数値から見ても明らかなように一番大事なのはやはり股関節です.

なぜ先生に口うるさく言われるのか,読んでいけばきっとわかります.
ターンアウト,しっかり習得しましょう.

研究の紹介

海外の研究チームが,ダンサーの股関節が受動的に動く範囲と,
ダンサーが実際に行っているターンアウトの角度の違いに着目して,
バレエに関連するケガをしたことがあるダンサー(ケガなし群14名)と,
ケガをしたことがないダンサー(ケガあり群;16名)の
2つのグループを比較する調査を行いました
(ダンサーは大学でバレエを専攻している人).

2つの群で受動的に両股関節を外旋できる角度に確かな差は
ありませんでした「ケガなし群;94.0°,ケガあり群;95.6°」.
しかし,自分で行っている両脚のターンアウト角度は「ケガなし群;100.3°,ケガあり群;119.4°」と差があり,
それら2つ角度の差が,「ケガなし群;4.7°,ケガあり群;25.4°」と大きな差がありました.

つまり,自分の股関節の可動域を超えて無理矢理ターンアウトすると
ケガするリスクが高まるかもしれないという可能性がわかります.
確かに,20°の差は大きいですよね…片脚10°の差です.

ちなみに,この調査に協力したダンサーの中で,ケガの最も多かった部位は膝だそうです.おそらく解剖学的にあまり外旋することのできない膝を使って,ターンアウトしまってたことが原因だと考えられます.
そうして,プリエ等バレエの動きを繰り返すうちに,身体的に望ましくない力が働いて,受傷してしまったと考えられます.
または,受傷したせいで膝でアンデオールしやすくなったとも考えられますが,それはまた別の研究を行わないとわからないので難しいところです.

昔のデータなので,今やればまた違った結果が出てくるかもしれませんが,このような1例もありますよ,という紹介でした.

研究から

もちろん,ターンアウトをして踊ることはバレエの美しさに繋がるので,大切です.ですが,自分の限界を超えて行うのは,ちょっと間違っているかもしれないですね.
ケガを防ぐために,無理矢理ターンアウトを行うのではなく,
自分の力でターンアウトした角度を保てるようにトレーニングしましょう.
そのために,外旋筋のトレーニングはとても重要です.
今回は内容が多すぎになってしまうので,
トレーニング方法は記載しませんがこのようなトレーニング記事も
少しずつアップできたらと考えています.

<参考文献>
Ryan AJ, Stephens RE. Dance Medicine A Comprehen- sive Guide. Chicago, IL: Pluribus Press, Inc.; 1987
Thomasen E. Diseases and Injuries of Ballet Dancers. Arhus, Denmark: Universitetsforlaget I Arhus; 1982.
Ballet dancer’s turnout and its relationship to self reported injury; Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 2002

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