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住宅の最新の設備、仕様、流行と陳腐化の罠

ファッションに流行があるように住宅にも流行があります。
車の性能がどんどん上がるように住宅の性能もどんどん上がります。
スマホでいろんなことができるようになったように住宅も多機能化しています。
最新、最高のものを詰め込んだハイエンド(?)の住宅が最も良い、と言えるでしょうか。


陳腐化の罠

先に結論を書いておきますが、ものごとはすべていつか陳腐化します。サイクルが短いものほど、早く陳腐化します。陳腐化は避けられない大きな問題なのですが、住宅をつくるときに意外と考えられない問題でもあります。
陳腐化とは小学館の辞典「ニッポニカ」によれば次のように定義されています。

新たに市場に登場した商品等に比較して古臭くなった、はやらなくなった、旧式になった、使い勝手が悪くなったといった状況をいう

さて、あなたが建てる住宅も必ず、その後に誰かが建てた住宅と比較して古臭くなったり、はやらなくなったり、使い勝手が悪くなったりするのです。
建てる時には意外と考えられてないところですが、後々になってから思うわけです。ああ、ここはこうしとけば、あれをああしとけば、良かったなあ、と。

コンセントにUSBの口

毎日何かしら差し込むUSBの口ですが、ほとんどの場合、充電、給電じゃないでしょうか。コンセントにUSB充電器を差して、そこにUSBケーブルを刺します。これを利用しない日は無いでしょう。
そこで、壁にUSBの口が付いてればいいじゃないか、という商品が出ています。建築関係の方のnoteで紹介されていました。こちらです。

我が家の場合、USB-Cに移行しつつあるんですよ。新しく買うガジェットはだいたいCですので、そっちに統一していきたい、と思っています。で、コンセントがこれだったら……使えないわけです。
技術は日々進化していますし、それに応じて規格も新しくなっていきます。いまアナログテレビの同軸ケーブルが刺せるコンセントが各部屋に、なんて今時はあり得ないように、今後USBのAの口しかないコンセントが各部屋にあるなんてあり得ない、って時代が来ると思うんです(それもけっこう早い段階で)。
じゃあCならいいのかっていうとそうでもなくて、もっといい規格が今後出ないとも限らないわけです。こちらの建築家さんはこのようにおっしゃってます。
「もし、ご導入を検討されているのであれば、今後のUSB-Cが出るのを待った方が良いように感じますし、でもUSB-Cもいずれは別の規格に代わっていくことを考えれば通常のコンセントのままの方が良いようにも感じます」

100Vの普通のコンセントはこの先ずーっと廃れないものです。これが廃れるときは電気がワイヤレスで自由自在に飛ばせるようになる時でしょう(原理的にどうなの)。それでも、そんな時代が来ても、あらゆる古い家電の寿命が尽きる頃までは、100Vのコンセントは生き残るはずです。枯れた技術で今もバリバリ現役で使われているものは、この先もかなり長生きするだろうという予想がつきます。
だから、コンセントに充電器を刺してそこにケーブルを刺すというのが、最も賢明なソリューションなのです。

スマートホーム化

したいですよね、スマートホーム化。我が家ではechoとswitchbotが大活躍しています。
2023年冬現在、スマートホーム化は過渡期にあります。先ほどのUSBの口があるコンセントと同じで、規格が変わることが容易に想像がつきます。だから、組み込みのものはやめたほうがいいです。

スマートドアはやめておいて、普通のサムターン式のロックが付いたドアに、後付けでswitchbotなりのロックを付けるほうがいいです。もっといいのが出たら、switchbotを取り換えるだけで済みます。もっといいロックが付いたドアが発売されたからといって、ドアを取り換えるのは大変ですよ。
照明のスマート化には苦労されている方が多いようで、こちらとか

こちらとか

大変ですね。
組み込みにして、DAIKOさんやPanasonicさんが「廃番です。サポもしません」てなったらどうするんでしょうか。
そこでswitchbotの「指」です。物理的に押してもらいましょう。後付けなので、メーカーの仕様変更や、もっといいソリューションが出たときのリプレースも簡単です。

我が家でも、あえてこちらを使っているスイッチがあります。組み込みスマート化よりも、後付けスマート化のほうが何かとメリットが多いです。
組み込みのものは、サービス終了となったら詰みますよ。後付けのものですが、スマートロック市場でサービス終了として騒然となったメーカーがありました。もしこれが組み込みだったらと思うと怖いですね。


ガルバリウム

最近建つ家の多くが採用するガルバリウム鋼板。日本で見るようになって20年くらいでしょうか? よく見るようになったのはこの10年という感じがします。
すごく長寿命なんだそうですが、そもそもこのガルバリウム鋼板が製品化されたのは1972年だそうです。約50年前ですね。どうして「高耐久長寿命」という宣伝文句が使われているのかわかりません。もしかして10年か20年保てば高耐久で長寿命なのでしょうか。
今は猫も杓子もというような勢いでガルバリウム鋼板を壁に屋根にと使っていますが、これもまた、より良い建材が出たら取り換えるというわけにいかないので、採用には慎重になったほうがいいかなと思います。
なお、屋根で言えば瓦というものは、高耐久長寿命ですし、日本では平安京の時代から使われているそうで、実績も豊富です。安心して使えます。

軒ゼロ

建築士、工務店の方に話を聞くと、たいていやめとけと言われるのがこれです。ハウスメーカーはデザインが良いので採用したがりますが、建築士はよほど上手く工事をしないと雨漏りのリスクが高いから設計したくない、工務店はよほど上手く水仕舞いしないと雨漏りのリスクが高いから工事したくない、ということです。
軒ゼロのリスクはほとんど雨漏りに尽きます。採光(日射)という面もあるのですが、それはなんとかなります。建物内に水が進入する可能性がある、それを心配しながら(台風の日なんかはヒヤヒヤしながら)生活しなきゃいけない、それが軒ゼロのデメリットです。
屋根を軽く見せるとかっこいいっていうのはあるのですが、リスクを十分に知って、採用したほうがいいですね。
なお、軒ゼロというのはわりと最近の流行りなので、水漏れが多発すれば廃れると思いますし、そうでなくても住宅の外観には流行がありますので、問題なくても廃れるかもしれません。
なお下に建築士の軒ゼロに対する思いを書いた記事を載せておきます。

黒い屋根と黒い外壁

もうそのブログを二度と見つけるのは難しいと思うのですが、以前読んだブログで「近所に真っ黒の家ができた、雰囲気のいい並びだったのに、その家のせいで雰囲気がぶち壊しだ」という内容の記事がありました。
真っ黒の家というのも、やはり最近の流行りでしょうか。よく見かけるようになりました。ただ、よく見かけると言っても20軒や30軒に1軒くらいなもので、そう多くはありません。
(余談ですが、街で見かける真っ黒の家には、黒のくるまが停まってることが多いです。よほど黒が好きなんでしょうね)
ちょっと前に、住宅がツートンで塗分けするのが流行ったことがありましたよね。白とベージュとか、ベージュと茶とか、白とチャコールとか。あーあの頃に建った家かー、などと見かけると思っちゃいますが、真っ黒な家も、あーあの頃に建てたのねー、となりそうな気がします。

玄関に手洗いボウル

これは本当にやめたほうがいいと思います。
例えば冬に買い物から帰ってきたシーンを想像します。
玄関を開けて、買ってきたものが入っているエコバッグを床に置き、トイレットペーパーも置きます。靴を脱ぎ、手を洗うのに邪魔なのでコートも脱ぎ、手を洗います。そしてコートと荷物を室内に入れ……荷物を触ったらまた手を洗うようではないでしょうか?
例えば男の子が小学校から帰宅したシーンを想像します。
ランドセルを置き、靴を脱いで手を洗います。そして部屋に入っていき、ランドセルの中からいろいろ出して、学校から持ち帰った袋からまたいろいろ出して……そしたらまた手を洗わないといけないのではないでしょうか。
手を洗うというのは、その後何かするから手を洗うのであって、家に着いて、汚れたものを片づけてから手を洗ったほうがいいでしょう。お菓子を食べる前に手を洗う、これはとても良いことです。生活の中で、いろいろなシーンで手を洗うと思うと思うのですが、玄関で手を洗うというシーンがそう多いとは思えません(仮に、昔から玄関で手を洗うシーンがとても多かったとしたら、現在までに玄関に手洗いボウルというのが普及していると思うんです)。
やはりコロナの一過性の流行だと思います。なんか使わないね、とあとで思ったとしても、もう撤去するなんてできないんです。
逆に、後付けでそこに手の消毒液を置く、とかウェットティッシュを置いておく、とかなら、必要に応じて設置できるし、やっぱりいらないなと思ったら撤去すればいいだけです。

枯れた技術と流行に左右されないデザインと基本性能

家を建てるときに、今現在実現できる最先端で最高のものをあれもこれもと考えてしまうと、その時は良くても長く住むと陳腐化の激しい家になってしまいます。かと言って、昔ながらの江戸時代の頃の作りでは、現代では住みにくいのは当たり前です。その両方から、良いもので実績があり陳腐化の波に飲みこまれにくいものを選んで、採用していくといいと思います。
まずは住みよい基本性能をしっかりと満たす家であること、長く飽きずに愛せるような、数十年後の自分が本当に良いと思えるような意匠であること、そして長く住み続けるためにメンテナンスや仕様変更が容易な技術で組み立てること。飛び道具や未来先取りは、ナシです。
つまり、現代で取り得る最良(最高、つまり高価でハイエンドではないです。最良、つまり最も質が良いものということです)のスタンダードなセットアップで、なおかついかに自分にフィットさせるかが、ながーく満足して住むためのキモなんです。

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