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太陽光パネル、乗せますか?乗せませんか? - エネルギーの話

今どき、太陽光発電を付けないなんて……
時代遅れなんじゃ?遅れているどころか逆行しているんじゃ?エネルギー問題に無関心すぎるんじゃ?利便性が著しく下がるんじゃ?住み心地の悪い家になるんじゃ?お金をドブに捨てるようなもんなんじゃ?
とお思いの方に、太陽光発電を付けない選択を後悔なくしていただくためのエントリです。
付けるか付けないかは個人の自由ですし、このエントリで「付けるなよ!」と言いたいわけではありません。僕個人の意見では、付けたければ付ければいいし、付けたくなければ付けなければいいよ、というニュートラルなポジションです。


なんでこんなエントリを?

相談されたからです。
「家建てるんだけどね、太陽光発電、悩んでるんだよね」
と、家を建てたい友人が言うので、相談に乗ったわけです。
僕自身は、冒頭で言った通りで付けるかどうかは個人の判断、というポジションなんですけど、友人はとても悩んでどっちにも決めかねている様子。相談している相手がニュートラルポジションなので、その相談先が間違ってるよという話なのですが、その友人の相談内容から、なるほどそういうこともあるなと思ってこのエントリに起こそうと思った次第です。

そもそもなぜ太陽光発電を採用するのか

ほとんどの人は「電気代(ガス代の場合も)が安くなる」ということが最も大きな動機になると思います。

太陽光発電システムの設置理由は(複数回答)、「光熱費が節約できる」が設置者の71.0%、「売電できる」が60.5%、「自然エネルギーを活用できる」が44.2%、「環境によい」「停電、災害時など非常時に電力が確保できる」が各3割強で上位となっています。

節約できる、と、売電できる、がそれぞれ7割6割あり、3位の自然エネルギーを活用の4割強を引き離しています。
やっぱり、経済的な面での導入という意識が強いようですね。
3位に自然エネルギーの活用という動機があり、さらにその次に環境や災害時の電源確保ということになっています。
さてこのエントリでは、太陽光発電を採用しないと決定する人の背中を押すことを目的としているため、これらの動機について検証することで、最後まで読んでいただいて「採用してもいいだろうけど、しないこともひとつの正解なんだな」と納得していただければ大成功です。ではよろしくお願いいたします。

太陽光発電は大局的に見ると経済的ではない(いまのところ)

結論から言えば、経済的ではありません。石油を燃やすほうが経済的です。と言うとびっくりされるかもしれませんが、マクロで見ると現在、太陽光発電は非常にコスパが悪いと言えるでしょう。

経済産業省資源エネルギー庁が公式に言ってるので間違いなく、現在の最エネのコストは高いです。再エネはFIT(固定買い取り価格)を維持するために国民に不足分を負担させることで成り立っていますので、つまり、石油や石炭、天然ガスを燃やして発電するよりも高くつくものなのです。
では、なんでそうまでして再エネを増やしていきたいかと言えば、地球環境の保護のためです。
極論を言えば、地球環境の保護のため高くつく太陽光発電を各家庭に装備してくださいと言っても、高くつくのだからやらないよ、となってしまうために「お得なんですよ」とするのがFIT制度です。すなわち、マクロで見れば経済的ではないのです。また、経済的ではないが環境には良い、という面がありますが、それも100%良いというわけではありません。太陽光発電は発電時に化石燃料を燃やしませんが、ライフサイクルで言えばけっこう化石燃料を燃やします。レアメタルもたくさん使います。その点で環境への負荷があることも見逃せません。
BEV(バッテリー式電気自動車)が環境に与えるインパクトについて、こちらの記事を貼っておきます。

記事の結論にこうあります。
「つまりEVやグリーンエネルギーは「気候変動」という問題を解決する一方で、「水質汚染」のように新たな環境問題を引き起こしている。言わば「ある問題を別の問題へと置き換えたに過ぎない」と見ることもできるのだ」
今後、技術革新によって太陽光の発電性能が大きく向上し、レアメタルをさほど使わず、製造コストが大きく下がるようであれば、コスパは当然改善しまして、安くつくようになります。それがいつになるかという話ですが。

太陽光発電はミクロ(個人の家計)では経済的か

多くの場合、個人の家計では経済的になるように、制度設計されています。なぜなら、前述の通り再エネを増やしたいというのが国の方針ですから、補助金を出してお得になるように制度を作り、個人の皆さんに採用してもらいたいからです。
ただ、多くの場合、というのはすくなくとも2分の1より多いということで、絶対に全員がというわけではないことは理解しないといけません。
なぜ2分の1以上かというと、得になるかならないかがサイコロで偶数の目が出るかどうか程度の話であれば、たいていの人はやらないからです。少なくとも過半数の人が得になるように設計しないと、誰もその制度を使おうとしないでしょう。
また全員でないというのは、もし全員が必ず得をする制度にしようと思ったら、あらゆるリスクに対して対応をしなければいけなくなり、例えばあらゆる部品のメーカー保証が切れたら国が保証しますというようなことになるので、現実的ではありません。
ですが、多くの場合は得になるというのは、シミュレーションすると(電力会社やパネルの会社などいろんなところがシミュレーターを公開していますので試してみてください)わかると思います。普通に使うなら、多くの人にとって、現在はともてお得です。

ここでいったん、このエントリの注意事項をおさらい

というわけで、お待ちかね、太陽光パネルを屋根に乗せないという選択をしてもいいんじゃない?という話をさせていただきます。と、その前に。
この話は、あまり気乗りがしないけどなんか風潮的に太陽光パネルを屋根に乗せてオール電化にするという流れに流されて太陽光パネルを屋根に乗せてしまいそうになってるという友人がなんとなく乗せたくない気もするんだよなという相談をしてきたので僕が積極的に乗せたいということではないなら乗せない選択もあるんじゃないの?と相談に乗った回答を整理して書いたものです。太陽光パネルを屋根に乗せることを反対する立場ではありませんし、ニュートラルな立場から、デメリットについて説明したという内容です。僕個人としては太陽光パネルを屋根に乗せるかどうかは個人の判断にお任せしたいと思っていますし、その判断の材料としてこのエントリを書いています。また、多くの人はおそらく、乗せる選択のほうが幸せになれると思います。なぜなら国の政策でやっていることなので、あからさまに多くの人が損するような制度設計はしないはずだからです。

太陽光パネルを乗せない理由ー将来の不透明さ

産業革命以降、私たちは「分業制にして同じものをたくさん作るほうが効率的である」と邁進してきたわけですが、発電において家内制手工業のようなシステムに戻るのはいささか抵抗があります。資本集約型の産業であった電力が、ある面で労働集約型のような形になるのが、個人宅への太陽光パネル設置です。100軒の家で太陽光パネルを乗せるよりも、100軒分の太陽光パネルをどこかに設置するほうが効率的です。それを産業革命以降学んできたはずなのですが、いま過渡期ということで各家庭でパネルを乗せてくださいねということも推奨されいている、という感じでしょうか。
まず、これは効率的でない面がある、ということを考えると、このままの形ではいずれ淘汰されていく公算が大きいとなるのが自然です。いずれというのが100年後なら良いのですが、20年、いや10年かもしれません。もっといいシステムができて、もっと効率を上げられるようになれば、現在の形とは違う形で太陽光発電が可能になってくるかもしれないのです。そうすると、いま設置した設備が耐用年数を終える前に負債となる可能性も出てきます。
また、自己所有(リースの場合もあるそうですがそれは置いておいて)の発電システムですから、運用、メンテナンスから廃棄まで、自己負担となります。不測の事態が発生してよぶんにお金が飛んでいくこともあるかもしれません。システムの中のどれかが製品寿命を迎えてもほかのものがまだ使えるので、寿命になったものだけ新品に入れ替えて、次にダメになったところはまたそこだけ取り換えて、とやっていけばずーっと使えるかもしれませんが、それは逆に考えればシステムの終了時期に常に無駄が発生するということになります。ぜんぶ一斉に30年で寿命を迎えてくれればいいんですが、そうもいきませんね。部品を替えつつメンテをしつつ、いつまで使い続けるのがいいのか難しい判断になりそうです。

以下、どうでもいいような理由ですが結構大事な理由

持ち家のリスクなんて、雨漏りやシロアリや排水の詰まりくらいではなかったのでしょうか。そこに、太陽光発電の高額な機器というものの経済的、心理的なリスクが加わると考えると、気が休まりません。
また、せっかくの持ち家、なんか気に入らないなあというようなポイントを増やすのは気持ちよくありません。

ー 景観

せっかく素晴らしいデザインの家が出来上がったのに屋根に太陽光パネル、残念な外観になってしまいます。
また、太陽光パネルは南向き仰角30度で取り付けるといいのですが、必然的に屋根の角度が30度になります。面積を確保するために片流れ。思い描いたマイホームの屋根がもともとソレだった場合にはいいでしょうが、そうでない場合にはデザイン上の制約が生まれてしまいます。

ー 一喜一憂

多くの人が電気代に一喜一憂していると思いますが、初期投資と売電というものが加わることで、差し引きどのくらいかという一喜一憂をする羽目になります。大変面倒くさいです。
使ったら使ったぶんだけ費用を支払うという単純なものから、長期のローンと買い取り価格と使用した電力と、さらにメンテナンス費用が定期的にかかるのでそれをならして……いろいろ考えなければ得なのか損なのかよくわからないのですから、手間というか自分のコストを考えると、不必要なものを抱えることになります。

ー 電化意識高い系

電気が現代の生活でかなり大きなエネルギー源であることは間違いありません。昔、電気が無かったころは明かりも暖房も、何かを燃やしていました。いまは家の中で何かを燃やすということが減りました(場合によっては何も燃やすものが無い家もありますね。オール電化です)。しかし、何も燃やさない生活は、自分の生活を窮屈にしてまでやるものでしょうか。
たとえばBEV(バッテリー電気自動車)に買い換え、乾太くんをあきらめるなど、電気ありきの選択になっていないでしょうか。

ー リスク多め

台風、ひょう、竜巻など自然災害により破損するかもしれません。鳥が巣を作ったりして業者に駆除をお願いしないといけないかもしれません。機器トラブルで漏電など発生するかもしれません。思わぬ反射で近隣の家からクレームが来るかもしれません。そのほかにも想定外のリスクが潜んでいるかもしれません。
当然ながらリスクがゼロというわけではないので、それらリスクとともに生活することになります。

とは言っても、太陽光発電はやっぱりメリットが多いです(ここでちゃぶ台返し)

わりと精細に費用計算している人の記事がこちら

東京大学の先生が将来の展望も含め解説した記事がこちら

いまのところ、ちゃんと補助金などを計画的に活用して、しっかりした計画のもと施工してくれる業者を選び、自分の生活をある程度フィットさせるようにすれば、たぶん多くの人がお得になるというシステムを国が作っています。

脱炭素、エネルギー問題についてどういうスタンスで生活するか

いきなり難しい動画ですが、エネルギー問題にどう対応していこうか、という話です。
エネルギー問題、地球温暖化防止や脱炭素など、根は同じところにあって、石油に代表される化石燃料をじゃんじゃん燃やして人類が発展したせいで地球環境が悪くなりつつあって、このままだと相当ヤバイぞという段階まで来ている、だからここらあたりでみんなでがんばって方向転換しなきゃいけないぞ、ということなのです。
例えば車通勤していた人が在宅ワークになればガソリンの消費が抑えられます。カフェでコーヒーをテイクアウトするときにマイボトルを使えば石油でできたプラスチックのカップの消費が抑えられます。しかしごはんを毎日食べなければいけませんがお米農家だって化石燃料を使わずに生産することなどできません。
日常のさまざまなところで脱炭素はできますし、反対に日常のさまざまなところで化石燃料を燃やす選択を余儀なくされるのです。
太陽光発電について我々が考えなければいけないことは、単に太陽光パネルを乗せるかどうかではなく、なぜ太陽光パネルを屋根に乗せさせるような制度を国が設定しているのか、太陽光以外にも脱炭素の方法があるのではないか、生活の中でどのように化石燃料の消費を下げ、相対的に再エネの比率を上げていくかということです。
実は、相談された少し前にタイムリーにこの動画を見たのでした。なので、相談とこの動画を抱き合わせて記事をひとつ書こうと思った次第です。
電気を使わずに生きていくことはできませんし、人類が必要とする電気の総量は増え続けるでしょう。私たち個人の生活においても、電気への依存度は高まる方向でしかありません。
そこで、私たちができることをひとつひとつ積み上げていくことで、脱炭素に向けて着実に近づくことを目指さないといけません。そのための方法のひとつが太陽光パネルであり、それ以外の方法もたくさんあって、それら全体をうまく組み合わせて、私たちの生活による地球へのインパクトを減らしつつも私たちの生活を豊かにしていけるといいと思います。

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