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【30】売れないロックンローラーたち

先日、お茶×着物×日本酒に携わる3者で異業種交流会をしました。今回はその時の内容をまとめました。


それぞれの業態の現状と課題

はじめに、自己紹介がてら、それぞれの業態の現状と日々感じる課題について語ってもらいました。

ー日本酒

二極化する飲酒の消費量
日本酒の消費量は、年々低迷していてピーク時の1/3になっています。特に若い世代の飲酒が減っていて。

だけど蓋を開けてみると酎ハイとかの低アルコールは増えているんですよ。

それで低アルコールは増えて、どうして日本酒は飲んでくれないのか、調査したことがあって。スーパーの酒売り場を見て気づいたんです。

酎ハイはパッケージを見ただけで、どんな味か想像できるデザインなんですよ。フルーツのラベルとか、スッキリとか。

で、ビールは大体、味の想像できるじゃないですか。その中で糖質ゼロとか低アルコールとか、健康志向なのとかターゲットがパッと見てわかるデザインなんです。

あと、だいたい缶なんで軽くて捨てやすい。とりあえず冷やしとけば美味しいっていう共通認識がある、

だけど日本酒のラベルって純米吟醸とか生酛とか専門用語か、会社の名前が商品名なんで、日本酒を知っている人しかわからないパッケージなんですよね。

それと、ほとんどが720mlの瓶だから重いし、捨てるのだるいし、一回開けたら早く飲み切らないといけないっていうプレッシャーあるし、、、

ワンパックとかあるけど、THE 日本酒って感じで、若者向けのラベルじゃないんですよね。

身近にある日本酒は”質より量”
若い人たちが飲みに行く居酒屋って飲み放題の安い居酒屋で、そういうところにある日本酒って、得体のしれない、粗悪な日本酒が多いじゃないですか。なんで、若い人たちが手に取りやすいところにある日本酒って薄利多売に重きを置いているものなんです。

だから私たち中小の酒蔵のお酒に出会うきっかけて、なかなかないのが課題だなって思ってます。



ー着物

オンラインだけでは伝えきれない
 私はこれまで久留米絣に特化してやってました。
会社を立ち上げて二年目になるんですけど、自分が最近地元(静岡)に戻って活動していると、リアルがないとすごく難しいなと思っていて。

やっぱり生地を触りたいというか、地域でなにかしら動いていると、問い合わせもらえるけど私がいる場所は自宅しかない感じで。これ今日決まったことなんですけど、お店構えることになって。

めっちゃ小さなスペースのお店なんですけど、そこで着付けやってみようかなと。実店舗を構えながらオンラインも継続的にやっていきたいなと思っています。

STEP BY STEP
やっててよかったなと思うのは、みなさん何かしら興味があるけどハードルが高い。どこから手をつければ良いのかわからない。わからないから手をつけられない。

階段じゃないけど。浴衣→久留米絣(お手頃)→絹の着物っていう階段を作って、知識をお伝えして、おすすめしていくことが大事かなと思っていて、今それが少しずつできているので良い点かなと思っています。


ーお茶

時代とともに変わる流通
父親の代からお茶の販売をしているんですけど、父親の代のころっていうのは、並べていれば勝手に売れる状態でした。当時の主な取引先は地場のスーパーでした。

次第に地場のスーパーは大手に買い取られてしまって。お茶は元々入っていた大手メーカーしか入れない。買い取られた方は立場がすごく弱くて縮小している。今じゃ、ピークじの何分の1なんだろうかという売上高になっています。

それに追い討ちをかけるように、ペットボトルとか飲料が出てきて。若い人たちは家に急須がない。そういう状況になっている。


今はどこが伸びているかというとアメリカ、ヨーロッパの輸出が伸びている。日本の若い人たちは飲まない。

可能性を感じるお茶のポテンシャル
うちでティースタンドというテイクアウトでお茶を提供しているんですけど、抹茶のアイスとかドリンクとか提供している中で見えてくるのは、女子大生とか若い女性とかそんな人たちが来るんですよね。

やっていて日本茶の可能性というのは、まだ探っていけばどこかにあるのかなと思っていて、店舗を改装してお茶を使ったスイーツとかそういうところから、とっかかりをつけてやってみようかなと思って、今取り組んでいるところです。


フリートーク

ここからは上記の話や実体験を踏まえてフリートークをしました。

三者に共通しているのは『敷居が高い』。
手に入れる場所は、現代の人たちが普段訪れる場所にないのかなと思いました。

「酒に関しては、この前買ったのよ。人んち行くときにお酒買っとこと思って。売り場を見てもあんまおもしろくないなと思った。結局、知っているお酒に手がのびるなと思ったな。」


お茶の輸出が増えているということでしたが、現地ではどのような用途で使われていますか。

「結局、富裕層の人たちが楽しむ。お茶として飲む。一番多いのは抹茶。富裕層の人にしか買えない値段なんで」

「日本酒も一緒で。日本酒は過去最高の売上なんですよ。すごいじゃん!てなるけど。でも実際は、ある程度大きな酒蔵だけなんですよ。一部の酒蔵しか潤わない。」

「でもさーいいじゃないですか!着物から言わせてもらえれば、日本酒もお茶も輸出できて、めちゃくちゃ羨ましいって思いますけどね」

「でも。EUって農薬の基準がすごい厳しくて。うちみたいな小さなお茶屋じゃ、輸出できないんですよ。だから、一部の大きな大手のところしか輸出できないってのが現状です。」

着・酒「なるほどー」


日本文化を逆輸入

「海外で流行ると日本の人って見向きするじゃないですか。海外で流行って日本人みんな推すみたいな流れあるから。」

「そうですね。そういうイメージみたいなのを逆輸入」

「そう考えると、着物ってむずいですね。海外となると。」

「海外に向けてやってみようかなと思ってます。大量じゃなくてもいいし。そこにいる日本人経由でもいいから。」

「この前、オーストラリアの留学生がこっち来て着付けを覚えて帰国した子がいるんだけど。その子、オーストラリアで浴衣きて過ごしてて。」

「そういうところから、できないかなーと思ってて。海外からアピールしたら、みんな見るかなと思って。本当は、日本人が日本人の文化を知ってくれるのがいいんだけど。それが結構難しくて。それなら、海外からちょっと話題作って目を引く形でやろうかなと最近思い始めました。」


お茶って、味だけじゃなくて、お茶を淹れてゆっくり嗜む”時間”を楽しむプロセスこそが醍醐味だと思うんです。そういう店、あんまりないですよね。


「久留米にないんですよね。お茶を本格的に飲めるところって。
コーヒー屋さんは多いですけど。」

着・酒「たしかに。コーヒー屋さんあるけど、お茶屋さんない!」

「お茶屋さんの香りっていいですよね。お店の中入ると、脳みそ洗脳されるイメージが。あの香り嗅いだら買ってみようって思いますよね。」

「それでちょっと挑戦してみようかなと。30代40代の女性をメインターゲットとして、ゆっくりできるスペースを作りたいなって思ってます。」

「ただ着物を提供するだけじゃなくて、そういうゆっくりとした時間とか濃厚な時間とかちょっと違う時間の提供を大事にしたいです。」

「今、マーケティングの本読んでるんですけど、これからは、顧客が実際に使うところまでをフォローしないといけないそうです。商品の価値って売る側はつけることができないんですよ。購入した人が価値があるかは決めることで。だから、私たちは価値あるものとして認めてもらうように行動しないといけないらしいです。」

「そう思うとさ。私たちのって価値しかないですよね。楽しみな感じもするし。私、色んな人と今やりたいなと思うのは、着物着てでもいいし、着なくてもいいけど。自分のお客さんに着物以外の付加価値をお届けしたいなと思います。」

一番課題なのは若い世代ですか?若い世代に知って欲しいですか?


「若い世代ですね。年寄りはいずれ居なくなるので(笑)」

「うちの蔵の企画なんですけど。会員さんと田植えとか稲刈りを一緒に体験して、そのお米で作ったお酒をお届けする頒布会なんですけど。お茶とか着物でもできてないのかなと思って。お茶の栽培からとか。」

「そういうのができたら面白いよね」

「着物も絣だったら藍染め体験とかなんとか、学生さんを取り込んでやってみたら面白そう。」



最後に

今回のメンバーに共通しているのは、自分の好きなものを生業としていて、「こんなにいいものなのに、どうして伝わらないのだろう・・・」と日々、やるせない、もどかしさを感じているところです。

「これ、いい曲なのに、誰にも届かないよ、嘘だろ。岡崎さん、誰に届くんだよ。俺たち全部やったよ。やりたいことやって、楽しかったけど、ここまでだった。届けよ。誰かに」
伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』

これは、私の好きな小説のひとつ『フィッシュストーリー』の中で出てくる、売れないバンドマンの最後のレコーディングの間奏でボーカルが嘆いたセリフです。

【売れないロックンローラーたち】は、ここから私が命名しました。






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