見出し画像

山形 「森の家」甚五右エ門芋(じんごえもんいも)のマフィン4種

9月下旬、小雨の降るなか山形・真室川町の伝承野菜農家「森の家」の佐藤春樹さんを訪ねました。ここで育てられているのは、伝承野菜「甚五右エ門芋」(じんごえもんいも)。

芋を見る私たち。右が佐藤春樹さん

収穫された芋をその場で調理し、オーブンをお借りして4種のマフィンを焼きました。

まずは甚五右エ門芋の紹介を。見た目はいかめしい名前そのもののようにごつごつとした大きな塊。けれど中身は驚くほどとろりとやわらかい芋です。

部類でいうなら「里芋」。中心に大きな親芋、その先に子芋、孫芋と順に小さな芋がつながり、ひとつの塊をなしています。

これが子芋・孫芋

親、子、孫とそれぞれに味も食感も違うそう。まずはそれぞれを主食しました。茹でること15分。

左の白い芋は皮を剥いた親芋。右の皮がついたままのものが子・孫芋

親芋はホクホクとした食感で、私はじつはこれがとても気に入ったのですが、その話はこちらで。

対して子芋と孫芋は、手でつるりと皮がむけるほど柔らかく、口に入れると、じっくり時間をかけて煮込んだようなやわらかくて繊細な食感。

このとろりとした食感が、甚五右衛門芋の唯一無二のもの。春樹さんの家で先祖代々、自家消費用に細々と育ててきたこの芋を、勤めていた会社を辞めて家業を継いだ春樹さんが見出し、伝承野菜として大切に種を継ぎ、今日まで残してきたそうです。

そんな甚五右エ門芋は佐藤さんの畑でしか育たない固有種で、毎年、種芋を植え付けることで翌年につないでいます。

そんな茹でたての芋を食べて、浮かんだ味の組み合わせをマフィンにしました。まずは孫芋と子芋を使って。

孫芋 ディルサワークリーム  ベーコン

孫芋のとろりとした食感が、なめらかなサワークリームと一体になったら美味しいだろうなと思い、歯がいらなくても食べられるようなとろけるマフィンにしたくて、孫芋を混ぜた生地にディルとにんにくを混ぜたサワークリームを合わせました。食感のあるブロックベーコンを所々に入れて。

子芋 クミン はちみつ チーズ

森の家に行く途中、同じく佐藤さんが営んでいる「リンゴリらっぱ」を訪ね、リンゴの花からとれたハチミツを分けて頂いていました。そのはちみつの甘みが、里芋の風味に合う気がしたので使うことに。塩気のあるチーズとクミンを合わせて、最後に食感のある親芋をのせました。

孫芋 ディルサワークリーム ベーコン
子芋 はちみつ クミン チーズ

続いて、しっかりした食感のある親芋を生かして焼いた2種。

親芋 酒粕あん ゆずの皮

甚五右衛門芋を甘い方向に持っていきたいと考えて作ったマフィン。酒粕を混ぜたあんこが里芋に合う気がしていて、今回の旅に合わせて仕込んで持っていきました。そこに合わせたかったのがゆず。この組み合わせ、絶品でした。またお店でも再現します。

親芋 豆豉みそ 黒ごま

こちらも里芋と合わせてみたかった、豆豉(トウチ)。しょうゆと味噌を合わせた自家製豆豉みそを持っていき、黒ごまを練り込んだ生地に親芋と共に包みました。豆豉の香ばしさと黒ごまが、ホクホクした親芋によく合いました。

収穫した野菜で、その場で作るという初めての体験。
甚五右衛門芋を食べること自体が初めてだったので、里芋に近い味をイメージしながら事前にどんな具材を合わせるか、大体の見当をつけて材料を持っていきました。

アドリブで作るマフィンの楽しさ。
そしてそれがおいしくはまった時の楽しさ。
ふだん店で作る以上に、臨場感のあるマフィン作りでした。

そして何より嬉しかったのは、佐藤さんご夫妻が、とても喜んで食べてくださったこと。その場で焼き立てを食べて頂いて、頬張る顔を見ることの嬉しさといったら。

農家さんで出張マフィンを焼くこと。心に残る体験になりました。doyoubiのライフワークとして続けていきたいと思います。

【写真】志鎌康平さん


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?