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(ネタバレ)著しく人倫を廃した映画 その1

『英雄の条件』を観た。
原題は「交戦規定」。個人的にはこっちのがストーリーに合ってていいと思う。
なんせ登場人物が目を真円に見開いた狂気的な面構えで交戦規定を破ったという話なのだから。
冒頭のイエメンの戦闘でガンガン現地人を殺し始めた時点で「なんて人倫を逸脱した映画なんだ」と少し笑ってしまった。俺は、もちろん登場人物に共感できる話も好きだが、それ以上に狂人とでも形容すべき奴が倫理も道徳も持たない行動をするのが大好きだ。
そういう意味で冒頭のあのシーンはすごく興奮したし、同時にその前に描かれたベトナムでの捕虜射殺シーンと照らし合わせて、サミュエル・L・ジャクソンがやばい奴であることを示しているのでなかなかすごいと思う。
ふんでその後の裁判で擦った揉んだがあるのだが、緊張感があって意外に退屈しない。多分俺は裁判シーンが好きなのだろう。よく自分が殺人犯として起訴され、出廷する妄想をしているからかもしれない。
そんでもって最後いい感じに無罪になってからのあの敬礼。
あれを観た時、俺はちょっと唖然としてしまった。「俺は同じ軍人としてお前のことわかるぜ」って描写だと思うのだが、目の前で同胞を殺された登場人物にあそこまでやらせちまうのはなかなかチャレンジングである。道徳的日本人としては理解不能な心理である。
そんなわけで、この映画は生活様式に殺人と戦闘を織り込んでしまった狂人の物語ってところだろうか。
観る前にアメ公の虐殺肯定映画と聞いて気になっていたが、そう言われてもしゃーないとは思う。こんな映画作っちゃダメでしょ(面白いとは思うけど)。

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