マガジンのカバー画像

物語

29
小説集。
運営しているクリエイター

#練習帳

「水平線上の邂逅」

「水平線上の邂逅」

 Zuooooo!!!!!
 巨大な、巨大と形容するにはあまりにも巨大な水柱が、嵐の中の海上に打ち立てられる。
 DoWoooo!!!!!
 暴風の音は幾千もの楽器に風を吹きこんだ音色。水上の竜巻がうねり、くねり、幾重にも重なり合って混ざり合って打ち立てられ、かつて開闢した天壤を再び繋ぐ。
 Ghooooo!!!!!
 轟音と爆炎。放たれるタングステンの砲弾。放ったのは多数の海上砲撃艦隊。空母の如

もっとみる
プリズナーズ

プリズナーズ

「死ねやおらぁ!」
 わたしことミキはゆっくんに殴りかかった。
 ゆっくんは悲鳴を上げながらも実に楽しそうに逃げ回る。それにわたしが追随し駆け回るため、わたし達ひまわり組の部屋は凄惨な有様だ。こうきくんが半年かけて組み上げたレゴの城を蹴飛ばし、ゆかりちゃんが大事に折った折り紙を踏み潰し、最後は結婚、妊娠が決まってまもなく産休をとる石原先生のお腹に激突した。
 どれもこれもゆっくんが悪いのだ。ゆっく

もっとみる
Memory of the ghost.

Memory of the ghost.

 幼い頃、幽霊が怖かった。
 夜八時に入るベッドの下はいつも暗闇で、そこに何か恐ろしいものが潜んでいて、何か恐ろしいことをぼくにしようとしているのだとずっと思っていた。寝る前のひとときは常に恐怖と共にあった。
 ぼくがそれを克服できたのは兄の助言によるものだ。怖がるぼくに兄はこう言った。怖がることはない。ベッドの下には何もいない。お前が恐れているのはただの幻想で、そこを覗き込んでみれば恐怖は消えて

もっとみる