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NAIST情報科学領域合格体験記(2022年度春入学第1回)

どうも、ハトです。このたび、NAIST情報科学領域に合格したので、試験対策を中心に合格までの体験を綴ろうと思います(といいつつも受験生へのアドバイス的なものも書いています)。なお、私の受けた2022年度春入学第1回試験はオンラインで行われたため、前泊などに関する記述はありません。

筆者について

書類審査と英語の点数に関連する情報として自分の経歴などに触れておきます。高専を経由していること以外はいたって普通(?)の情報系大学生です。自然言語処理(NLP)に興味があって現在は豊橋技科大でNLPの研究をしています。NAISTの志望研究室もNLP系です。

学歴1:大阪府立大学工業高等専門学校メカトロニクスコース卒業
学歴2:豊橋技術科学大学工学部情報知能工学科3年次編入学(2022年3月卒業見込)

学部相当の年次における成績:
高専4,5年:学科(40人くらい)で1位
学部3年:学科(100人くらい)で3位以内、GPA3.88(最大値は4.00)
TOEIC:760点(願書提出時)

NAISTを志望するまで

高専に通っていたこともあって、NAISTのことは6年前くらいから知っていました(NAISTには高専専攻科修了者の推薦枠があります)。高専4年のころに、NAISTでレベルの高いNLPの研究が行われていることを風のうわさで耳にしてから、NAISTを目指そうと決めました。専攻科からNAISTへ進む道も考えましたが、私の通っていた高専ではNLPの研究ができなかったため、豊橋技科大へ進学してからNAISTを受験する道を選択しました。
第一志望はNAISTでしたが、落ちたら豊橋技科大の院を受験するつもりだったので、一応併願です(出願時期が異なるのでもしかしたら併願とは言わないのかも?)。

志望研究室調査

NAISTの情報領域にはNLP関連の研究室がいくつかあるのですが、そのなかでも自分の興味に最もマッチしそうな研究室を1つ選んで、2020年9月に「いつでも見学会」という制度を使って研究室にアポイントメントをとりました。志望研究室のボスとZoomで面談させてもらい、現地で助教(当時)の方に研究室設備を案内してもらいました。研究室で行っている研究内容などについて聞き、自分の興味のある研究ができるかどうかをすり合わせることができました。ただ、コロナ禍かつ夏休みであったというのもあって現地に学生がおらず、先輩方の話を聞くことができなかったため、ボスにお願いをして研究室のSlackにゲストとして招待してもらいました。その後、Slack上で先輩方に研究のことや院試対策のことを聞き、先輩方の小論文やアドバイスをもらいました。
また、2021年5月にオンラインで開催されたオープンキャンパスでもう一度志望研究室のボスと面談し、小論文(後述)の添削をしてもらいました。
志望研究室のボスと面談するというのはかなり有意義な機会だと感じたので、受験前にいつでも見学会やオープンキャンパスで研究室を訪問することを強くお勧めします。

院試対策0:書類審査

書類審査では基本的に学部相当年次の成績を見られているはずなので、院試対策としては「大学の勉強を頑張る」しかないと思います。
私は高専→大学編入の道をたどったので高専の成績と大学3年の成績を提出しました。成績については前述しましたが、まあまあ頑張ったほうだと思います。
私はしてませんが、情報技術者などの資格や受賞経験も勘案されるらしいと風のうわさで聞いたこともあるので、そういう方向で努力をするのもアリかもしれません。

院試対策1:TOEIC

NAIST院試の英語の点数はTOEICなどの検定のスコアによって決まります。私はTOEICスコアを提出しました。TOEICスコアの上げ方についてはこのブログで言及するまでもないほど様々な文献がネット上などにあふれていると思うので、それらを参考にしてください。私は金のフレーズや公式問題集を使ったオーソドックスな勉強法で760点をとりました。日本語受験の合格者平均が670点ほどらしいので、670点以上を目指すといいんじゃないかと思います。

院試対策2:数学

NAIST院試の数学の点数は解析学と線形代数学についての口頭試問によって決まります。募集要項に出題範囲の教科書が記載されていて、解析はS.ラングの『解析入門』(第3版)、線形代数はG.ストラングの『線形代数イントロダクション』(第4版)です。
私はこれらの教科書を通読し、いくつかの演習問題を解きました。他にも、理系院試勉強では定番のマセマの演習問題集(線形代数微分積分)を解きました(ただし、マセマのカバーしている範囲と指定教科書の範囲は結構違うので過信は禁物です)。正直、私は教科書を読むのが退屈だったのであまり教科書や演習書の演習問題には力を入れずに、専ら過去問とヨビノリの今週の積分をひたすら解いていました(とはいえ指定教科書は買って読んだ方がいいです)。過去問は諸先輩方がWeb上に公開しているものがいくつかあります(たとえばtubutubucorn氏のGitHub)(他にも、大抵のNAIST合格体験記/受験記には数学の出題内容の概要が載っています)。また、オープンキャンパスなどで先輩に尋ねたらWeb上に公開されていない過去問を入手することができたりしました。様々な過去問を見た印象としては、解析は積分・最大最小値・関数の概形・級数の収束判定が、線形代数は固有値/固有ベクトル・階数・逆行列・ケイリーハミルトンの定理が頻出のようです。
なお、これから受験する方は、過去問を見るときに当時の口頭試問の形式がどうであったかを確認しましょう。コロナ禍以前の対面試験は10分の問題下見時間が与えられて試験官の前では10分(あるいは12分の年度もある?)でホワイトボードに書きながら説明するという形式だったようですが、前年度と今年度のオンライン試験は下見時間がなく、10分でカメラの前でスケッチブックに書きながら説明するという形式でした。これからの試験形式がどうなるかはわかりませんが、過去問が出された当時との相違は確認しておきましょう。

院試対策3:小論文(&面接)

小論文と面接は、試験の合計点の45%を占める最も重要なファクターです。特に小論文は出願時(試験日の約1ヶ月前)に提出する必要があるので、早めの準備が肝要です。2022年度春入学第一回の募集要項によると、小論文の要件は (1) これまでの修学内容(卒業研究等)について (2) 奈良先端大において取り組みたい研究分野・テーマについてを白黒A4二枚(様式任意・図表可)で書くことでした。
私は4月頭から構想を練り始め、4月末に初稿完成、5月に添削を経て、6月頭に完成、という流れでした。どうせ書くならTeXでカッコイイ様式にしたかったので、ACL(NLPのトップカンファレンス)2012のスタイルファイルをもとに日本語小論文用の様式を作成しました。要件の(1)と(2)の配分は任意とのことですが、私は1:3で書きました。
全く1から小論文の構想を練るのは無理なので、前述のSlackで先輩方に過年度の小論文をもらい、一通り読んで「こういう風に書けばいいのか」というイメージをつかみました。いただいた小論文の(1)と(2)の配分は1:2や1:8、0:10など多様だったので本当に任意でいいんだと思います(ただ、研究室によって決まってる場合もあるかもしれないので要確認)。
まず構想についてですが、私は4月時点で自然言語処理に関連する研究室に所属して論文を読んだりしていたので、現研究室のボスと相談しながら興味のある分野の未開拓領域について調べて論文をいくつか読み、そのなかで思いついた新規手法について研究計画(もどき)を書きました(最終的には小論文中で9本の関連論文を引用しました。引用していないものも含めると大体15本くらいは目を通したと思います。ただ、熟読したのはそのうち4本くらいです。他はアブスト・イントロ・図表を読んだ程度です)。また、卒業研究のテーマも大方決まっていたのでこれまでの修学内容については卒研の背景や計画を書きました。
次に添削についてですが、私は同期の友達3人・現研究室のボス・希望研究室のM2の先輩3人・希望研究室のボスにレビューをもらいました(同期の友達は情報専攻ではありません。主に誤字脱字・文法誤りのチェックをしてもらいました)。レビューをうけて小論文がかなり精錬されました。
これから受験する方も以上のような方達に添削してもらうといいでしょう。特に希望研究室のボスは面接担当者でもあるので添削を引き受けてもらえる場合には是非添削してもらいましょう。
私の書いた小論文はここでは公開しませんが、受験の参考にしたいという方は私のTwitterアカウントにDMをいただければデータをお渡しできるかもしれません(それよりは希望研究室のHPから先輩方のメールアドレスを見て直接連絡するかオープンキャンパスなどで先輩方に相談したほうがいいとは思いますが…)。(2022/04/11 追記)ここで公開しました。
面接対策はひたすらイメージトレーニングです。過去の受験記に載っていた質問例や小論文添削時にM2の先輩から「こういう質問が来るかもね」と教えていただいた質問、希望研究室のボスとの面談で聞かれたこと(その場では答えられなかった)への回答、志望理由や進学後のキャリアなどを脳内で反復しました。以前は面接の冒頭に小論文を3分程度で説明する時間があったみたいですが、私の受験した回ではその時間はありませんでした。ただ、自分の小論文は面接に持ち込み不可なので、内容を脳内に焼き付けるためにも3分程度で説明する練習はしておいて損はないと思います。

本番0:受付

試験は、WebexというWeb会議システムを用いて行われました。自分の試験時間になると(Web上の)ミーティングルームに入り、受付開始まで待機します。受付では受験番号や氏名の確認、研究室希望順位アンケート、試験のレギュレーションの説明が行われました。
受付は特に問題ないだろうとたかをくくっていたのですが、受付担当の先生が英語話者(日本語話者でない)という予期していなかった事態が起こりました。NAIST院試は日本語受験と英語受験が選択可能なのですが、自分が(ロクに英語喋れないのに)誤って英語受験を選んでしまったのかと思ってとても焦りました(実際は単に受付が英語だっただけで数学や面接は日本語でした)。たどたどしい英語で受付担当者とコミュニケーションを行い、テンパりつつ受付を終えました。これからNAISTを受験する方は受付が英語でも狼狽えないように対策していきましょう。

本番1:数学

受付から数分後、二人の試験官の前で数学の口頭試問が始まりました。
詳細は伏せますが、線形代数は正定値行列に関する問題(小問2個)、解析はガウス積分に関する問題(小問2個)が出ました。どちらも小問1つ目は完答したのですが、小問2つ目に関しては、線形代数は未解答、解析は導出過程を端折って答えを書くだけに留まりました。答えの正負を間違えたりすると、「そこあってる?」と指摘してもらえました。
問題は受験者(というより受験時間帯?)によって異なり、友達の受験者に聞いたところ、3次正方行列の階数に関する問題(線形代数)と3倍角の公式に関する問題(解析)が出たそうです。

本番2:面接

数学の口頭試問終了から数分後、希望研究室のボスを含む3人の面接官の前で面接が始まりました。
面接では、以下のような、小論文に関する質問を受けました(書き方は実際の聞かれ方とは異なります)。

・引用した論文について簡単に説明して
・提案手法は実応用ができそう?
・引用してある論文以外の論文も調査した?調査したならどういうもの?
・(提案手法がAという手法を前提としたものだったので)Aの精度は提案したシステムにどれくらい影響する?

過去のNAIST受験記を読む限り、志望理由や修了後のキャリアについて聞かれることもあるみたい(特にプログラミングどれくらいできる?は定番質問っぽい)ですが、少なくとも私は一切そのようなことは聞かれず、終始小論文に関する質疑応答でした。出身分野・面接担当教員ごとの違いや、院試前に希望研究室のボスと面談をしたかどうかなどで変わるのかなと推測しています。

合格発表

テスト期間の約2週間後にNAISTのHP上で合格発表が行われました。予定では午前10時に発表ということだったので私は10:00に当該Webページで待機していたのですが3分ほど焦らされ、10:03頃に合格者の受験番号一覧が記載されたpdfが公開されました。自分の受験番号が見つかり、一安心しました。
合格発表から1週間も経たないうちに合格通知が郵送されました。合格通知の封筒には奨学金のことや合格後に必要な手続きについての書類が入っており、成績優秀者(説明会では入試成績上位40%程度以内との説明がありました)には学生宿舎優先入居申請書が同封されています。私は優先権をゲットできたので来年度からは寮に住めるはずです。
オープンキャンパスなどで聞いた限り、例年の合格最低点は135点程度、寮の優先権のボーダーは160点程度らしいです。成績開示で自分の成績が分かったら追記します(2022/04/05 追記しました)。

研究室配属の内定(2021/08/05追記)

NAIST情報科学領域では最近(多分今年度から)研究室配属の内定通知というシステムができたようです。院試の受付の際に希望研究室のアンケートがとられ(第1希望から第5希望まで)、その希望順と試験の成績から研究室の内定通知が送られてきます。従来は配属される研究室は入学後に決定していたのに対して、入学意思確認の前に研究室配属の可否が(おおよそ)分かるようになったので、一受験者としてはありがたい制度です。
2021/08/04にNAISTの入試係から内定通知のメールが送信されました。自分は第一希望の研究室の内定をいただけたので一安心です。

入試成績の開示(2022/04/05追記)

入学後に入試成績を開示してもらったところ、200点満点中の179点でした(なお、今年度の合格最低点は139点でした)。割と高得点だと思いますが、これでもシェアタイプの寮の希望は通らなかったので、厳しいですね…(3日間住んでみた感じ、単身寮も悪くなさそうですが)。

さいごに

とにかく合格できてよかったです。小論文のレビューをしていただいた方々、応援してくれた方々、ひいては全人類に感謝。
#春からNAIST のみなさんやNAIST在学生/教職員のみなさん、来年度からよろしくおねがいします。

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