マガジンのカバー画像

140.0

12
要約、概要、短縮、抄録、省略
運営しているクリエイター

#140字小説

君の右手首に貼りついた、バーコードを読み取ったらたったの108円で、でも生活必需品なんだねって笑う、そういう夏が来ないまま、袖を伸ばして、背も、髪も伸びて、細く長く、綿飴の繊維より静謐な命の、ぷつんと途切れた痕跡に漂う、少し焦げたような甘い香り、起きてください、折り返しですので。

野原
2年前
3

人はみな、蝶だった。ひらひら陽気に舞って、花の蜜を味わう。今よりずっと自由で、可憐で、かつ絢爛で豪奢で、そういった生き方をしていた。いつしか人が地を駆け回った。蝶を捕まえて、ピン留めしたり、鱗粉を剥ぎ取って遊び始めた。みんな大慌てで、次から次へ、人になった。残ったものは蛾だった。

野原
3年前
4

「どきどきするね」殆ど摩擦音の、話し声。胃が、脳が、心臓が、君のものになる。「吸いながら燃やすんだってさ」細く白い陶器の指が、煙草の先端に火をつけ、けほけほと、笑いながら咽せて、貴方の番ねと差し出す。君は躊躇う僕に、意気地なし、と言いながら、唇をじっと見る。なんだよ、意気地なし。

野原
3年前
1