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心の奥の取材ノート

最後の零戦パイロット 原田要さんのこと


交わした言葉、ちょっとした仕草、振る舞い――
今もありあり思い出す、取材で出会った人たちのこと。
編集部

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 原田さんのことを知ったのは、原田さんの著書『戦争の嘆き』を読者が送ってくださったことからでした。
 軍人に憧れた少年時代、入隊して飛行機乗りとなり、戦場に赴く。命からがら生き延びるも、終戦後待っていたのは公職追放という試練、そして「人を殺した」という消えない負い目。しかしその苦しい思いに真正面から向き合い、「人を殺したことを反省し、人を育てる手伝いをしよう」と幼稚園を設立――。

 戦場での出来事を読み進むうちに、その頃公開されていた映画『永遠の0(ゼロ)』が重なりました。原田さんは「あとがき」に、まさしく「あの『永遠の0』の登場人物は私自身ではないか」と書いておられました。

 戦争を描く映画、小説、ドキュメンタリーと、学ぼうとすれば様々な記録・媒体がありますが、やはり戦争経験のない私たちには、それは遠いところでの出来事です。経験者に直接お話を伺いたい、という思いが募り、本を送ってくださった読者の協力を得て、原田さんに取材を申し込みました。原田さんはその時すでに97歳。出掛けることは困難なので、ご自宅に伺うことを条件に取材を受けくださいました。

 2月の長野県。こたつにあたらせていただきながら聞くお話は、戦争のむごさ、悲惨さ、そして今を生きる人々への「戦争に向かってはならない」という原田さんの心からの願いでした。ハリのあるお声と、なんとも親しみやすい笑顔が、強く印象に残っています。

 原田さんのインタビュー記事掲載(180号2014春)から程なく、読者の皆様から強い要望を受け、原田さんの講演会が長野で実現しました。講演は着席でしていただく準備をしましたが、原田さんは終始立ち通しで、予定の3時間を超える講演の間ほとんど座られることはありませんでした。

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2014年7月27日 長野市にて


 「伝えたい想い」を強く持つ人は、ご自分のことをあまり考えません。『道』でいろいろな方に取材してきて感じることです。その「想い」に応えられているだろうか。ことあるごとに自分に問いかけます。


―― 季刊『道』 №197(2018夏号)より ――

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