ウジ虫の優雅な休日はドブ川の底で

親愛なる読者諸兄姉、ご機嫌はいかがだろうか。
筆者は今すこぶる機嫌が良い。
何故って?今日が休日だからだ!
休日!おお、休日!
日本語の語彙数多しといえど、これ程までに甘美な調べが他にあるだろうか!
好きな時間に目覚め、好きな時間に好きな場所へ出掛けられる。身支度にどれほど時間がかかっても良い。望むなら身支度などせず日が暮れるまで家に籠っていても良い。自由!自由だ!なんて素晴らしい響き!法的に土日と平日の割合逆転してほしい!!それがダメならせめてハッピーマンデー法を土曜日にも適用してほしい!!ビバ祝日!ビバ週末!T.G.I.F T.G.I.F!イエーイ!!

しかし、完全無欠な休日にも一つだけ致命的な欠点がある。
それは、休み日数×「24時間」というリミットがあるということだ。

読者諸君にも覚えがあるはずだ。休日には「何でもできる」キャパシティと同じ重みの「何もせずに終わる」リスクが伴うのだ。うっかり日曜の13時くらいに起きてしまうとほぼなにもしない内に「終わる」ことだってある。これは辛すぎる…

そんなとき、筆者が喪失感を埋めるためにやっているちょっとしたレクリエーションを備忘録として書き残しておくので、どれか皆様の琴線に触れるものがあれば試してみていただきたい。まあ、今日に限っては6時に起きることができたから別に良いんだけどさ…(tips: 小さなことでも良い。自画は積極的に自賛しよう。他者から得られるのは賞賛でなく、否定と私に対する失望の意の表明だけだ。こんな情けない自分、月曜日の朝と共に日曜日の夕焼けで跡形もなく燃やし尽くしてしまえたらどんなに良いか…)


①放浪
「散歩」ではない。「放浪」だ。
ふと気付けば時計が無慈悲にも昼下がりの時刻を指している。そんな時、筆者は西へ沈み行く夕日に追いすがるようにして最寄り駅から3~5駅分歩く。

余談だが、夕焼けとは何故あんなにもセンチメンタリズムに訴えかけてくるのだろうか。暮れ行く一日への惜別の念だろうか。成程、言われてみれば人の一生を一日に例えるならば老年期は夕暮れの時間帯に相当しそうな気がする。スフィンクスの受け売りだろうか?

そんなノスタルジーに浸りつつ、運が良ければ思わぬ所に抜け道や好みの店を見つけることができる。カメラでも持っていればなお楽しめるかもしれない。知らない住宅街や商店街の空気に思いを巡らせるのも良いだろう。あまり入り組んだ道に入っていくと私道や私有地手前に行き着いてしまったり、普通に道に迷うこともあるので注意されたし。疲れて引き返す気力が失せてきた時の保険に、最寄り駅のある路線沿いに歩くのがミソである。普段降りない駅であえて降りて周辺を散策するのもまた乙なものだ。無論それなりに体力を消費するため日曜や連休最終日であれば距離はもう少し控えめにしておくべきだろう。筆者はよく月曜日に足の裏の痺れを残したまま出社している。

②ピクニック
①と少々似ているが、前者は歩くことを主な目的としている一方、こちらは「食」をメインイベントに据えているという違いがある。
皆様のご自宅の近くに河川敷はあるだろうか。また、公園はあるだろうか。できればベンチがあるところを探すと良い。そこに屋根がついていれば尚のこと良い。
コンビニでホットスナックなどを購入するのも良いが、自炊が苦にならないなら弁当を自宅で用意して持っていくのはいかがだろうか。
筆者の一押しはサンドイッチだ。バゲットをオリーブオイルを引いたフライパンできつね色になるまで熱し(トースターがあるならそれを使う方が良い。我が家にはトースターがない為わざわざフライパンを使って焼いているが、洗い物は出さないに越したことはない。)、サニーレタスとクリームチーズとスモークサーモンを挟んでラップに巻く。そうして焼き上がった完成品が丁度「丁寧な暮らし」の形をしているので、貴方は少し笑ってしまうだろう。これを外で食べる。休日のちょっとした贅沢に丁度良い。
藤棚の下で弁当を咀嚼し、公園で元気に遊ぶ子供たちを見ていると、私にもあのような無邪気な時代があったのだなと、あまりにも空虚な年の取り方をしてしまった自分の半生に対して何か物悲しいような思いが沸いてくる。願わくばこの子たちには週末は午後に目が覚め、迫る月曜日の影に怯えるような人生を送ってほしくない。
まあ、かくいう私は義務教育の時分から日曜日の18時以降を心底から憎みながら生きていたが。
以上を実践する際はお手拭きとティッシュ、そしてごみ袋をお忘れなく!

③入浴
そもそも外出したくない気分の日もある。平日は簡素に済ませてしまいがちな入浴も、オプションに拘れば立派なアミューズメントである。
筆者は防水のBluetoothスピーカーで好きなクリエイターのラジオを聞いたり、入浴剤を入れたり、本を読んだりして楽しんでいる。
ここから更に罪を重ねたい堕落した貴方にお薦めするのがアイス等の持ち込みだ。
湯船にゆったり浸かりながら嗜好品を楽しめるのは自宅の風呂ならではである。湯気で少し蕩けたサーティワンの期間限定フレーバーをスプーンで掬っているときの万能感は皆様にも是非味わっていただきたい。
酒飲みの筆者は湯船に浸かりながら一献…というのもよくやるが、これは恐らく身体に良くないので真似しなくて良いです。むしろしないでください。特に心臓の弱い方、持病をお持ちの方は断固ご遠慮ください。当方では責任が取れかねます。
…本当にダメだからね?筆者は止めたよ?
え?あぁ、筆者はいいんです。仮にこれが死因になったとて、どうせそれはサザエさん症候群を拗らせて死ぬか血管が破裂して死ぬかの違いでしかないのだから。

それでは皆様、筆者は一足お先に逝って参ります。待ち合わせ場所は満開の彼岸花咲き誇る地獄の三丁目にいたしましょう。針の山でトレッキング、足がズタズタに疲れたら血の池に浸かりながらレディーボーデンでも嗜みましょう。
その時を楽しみに、今しばしご機嫌よう。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?