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面白い作品を観た帰り道

演劇エッセイ/1日目

その日は新宿から京王線に乗り、明大前で井の頭線に乗り換えて、駒場東大前駅で降りました。こまばアゴラ劇場へ着いたのは、おそらく開演ギリギリだったと思います。仕事あがりのソワレ(夜公演)は、高確率で開演ギリに滑り込む感じです。比較的後方の、パイプ椅子の席に座りました。

終演後、劇場を出ます。アゴラは入口付近の天井が低いので、頭をぶつけないよう気をつけつつ……(でも年に1〜2度はぶつけている気が)。当時の僕は笹塚に住んでおり、この日はアゴラから歩いて帰りました。無性に歩いて帰りたくなったのです。多分1時間以上かかったと思います。帰り道、いま観た作品を仕事仲間や友人にどうしても観て欲しくて、歩きながらメールを打ち、電話をかけました。今ほどSNSが普及してなく、僕は紫色の折りたたみガラケーを使っていました。この日は金曜で、公演日程的に残り数回の上演を残すのみ。「絶対に観た方がいいから!」と伝えるには、なる早に限ります。そして、メールはともかく、電話はつい熱くなり、感想を語りすぎてしまいます。通話時間は長くなり、作品のネタバレも増えます。いま正に観劇を勧めている作品なのに。

結局、笹塚の自宅に着くまで、僕は連絡をし続けました。ついでに言うと、自宅に着いてからも連絡を続けました。後日、実際に観てくれた数人から「教えてくれてありがとう!!」というお礼メールが届きます。面白い作品を観た帰り道はこれまで何度も経験していますが、真っ先に思い出すのはこの日のことです。

※上記リンク内に舞台写真もアップされていました

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