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新宿との(心理的)距離

演劇エッセイ/10日目

どこか特定の街へ出かける頻度は、僕の場合、完全に劇場とリンクします。その劇場に活気があれば頻繁に通うことになるし、劇場が閉館したり、あるいは(個人的嗜好から見て)活気が沈み気味であれば、あまり通わなくなる。あの街をよく訪れる、街に詳しくなるということは、僕にとって「劇場で観劇する」とワンセットです。

新宿との心理的距離が、随分開いてしまったなぁと感じています。演劇の制作現場を手伝っていた頃も、演劇誌の編集者になった以降も、新宿にはよく通いました。最も思い出深いのはトップス(THEATER/TOPS)で、観劇や取材のため足繁く訪れました(※トップスの思い出はまた別の回に書こうと思います)。トップスから歌舞伎町方面へ行くとシアターアプルがあり、ここは制作時代の思い出が多く、かつ編集者時代もよく行きました。隣の新宿コマ劇場にも行ったけれど、僕はアプルの頻度が高かった。

歌舞伎町からJR方面へ戻り、新宿通り沿いの紀伊國屋ホール、JR新南口方面のサザンシアター(紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA)。バスタ新宿の上階にあるLUMINE 0。そこからJR西口方面へ進むとスペース・ゼロ(こくみん共済coopホール/スペース・ゼロ)、その先にはプーク人形劇場。これらの劇場は今も現役です(ただし2020年5月現在コロナ禍の影響で臨時休館中)。

新宿界隈には小劇場も多く、新宿パンプルムス、タイニイ・アリスなどは閉館してしまいましたが、シアターモリエールSPACE雑遊とSPACE梟門新宿ゴールデン街劇場THEATER BRATSなどは現役です。この他にも色々な小劇場がありました。個人的に、それぞれの劇場と近辺の街に沢山の思い出があります。

かつて新宿は、立地、客席数、上演演目など、多彩な劇場文化を誇る街という印象がありました。近年僕が新宿で最もよく訪れる劇場は新宿眼科画廊だと思います。JR新宿駅から地下道をひたすら進み、地上へ出たら徒歩1分という、あのダンジョン攻略感(僕だけ?)が好きです。雨にも濡れにくいし。近くにお得な居酒屋もあるし。

そこに劇場があればーー。その精神で十何年も仕事をしています。コロナ禍の昨今では、劇場を思い出し、街を思い出し、自宅近辺以外の全ての街が懐かしいです。近年の新宿とは少し心理的距離が開いてしまったけれど、新宿にも、新宿以外にも、劇場があるあの街へ、また訪れる日を待ちながら。


小田尚稔の演劇『凡人の言い訳』2016/3/26〜30◎新宿眼科画廊


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