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「ママ、きらい!」と言われた今日は


待望の3人目の子供だった。しかも我が家にとって初めての男の子。四年前の今日、長男が産まれてきたときのことをまるで昨日のことのように覚えている。



今朝、いつものように登園拒否の長男の歯磨きをなんとか押さえつけながら終わらせたときのことだった。

「ママ、きらい!」

涙をいっぱい流して長男は私にそう言った。いつものことである。いつものことだけど、今日だけはその言葉を聞きたくなかった。長男の言葉が私の胸を容赦なく刺して、一気に悲しみの色が広がった。

もちろん、長男が本気でそう思っているわけじゃないことは理解している。昨日も「ママにぎゅーされて寝たい」と言っていた子だ。「ママのたまご焼き美味しい!」と喜んでくれていた子だ。これまでにもたくさんの優しさと温かさを私にくれた。知ってるんだ、そんな大切なことは。それなのに、なんで今日の私はムキになってしまったんだろう。

「いいよ、もう。そんなこと言う長男くんなんか知らない」

一度、口から出た言葉は消えてくれない。そのことは、じゅうぶんに分かっているはずなのに。ましてや、今日は長男の誕生日。そんな大切な日になんで私はこんなことを言ってしまったのだろう、とすぐに後悔の気持ちが押し寄せた。いや、誕生日だからか。誕生日だから、特別な気持ちで一日を過ごしたかったんだと思う。親である私にとって、子供達の誕生日は自分の誕生日よりも比べ物にならないぐらい特別な日だから。でも、幼稚園に行きたくないという気持ちでいっぱいいっぱいの長男にそんなことは通用するはずもないし、私が勝手に浮かれているだけなんだ。なんで、こんなにひどいことを言ってしまったのだろう。

今日も長男は幼稚園に行った。見送るとき、長男が乗る幼稚園バスに手を振りながらすごく胸が痛んだ。


帰ってきた長男に、私はすぐに目を合わせて「朝はごめんね」と言った。幼稚園から帰ってこれた長男はケロッとした様子で、「おやつ食べよう?」と私を見てニカッと微笑む。愛おしさで胸がいっぱいになってすかさず抱き締めると、まだ小さな手のひらが私の背中に添えられた。大きくなったなぁと思う。でもまだ、小さいなぁとも思う。いつまでこうやってぎゅとさせてくれるんだろう。抱き締めるたびに、温かさと愛おしさ、そして寂しさに包まれる。この優しさに甘えてはいけないと強く思った。でも、この誓いも何度目だろう。本当に、弱い自分が嫌になる。

幼稚園からもらえる誕生日メッセージには、写真が苦手な長男の精一杯の笑顔が写真が貼られていた。以前、担任の先生から「お誕生日のために撮った写真の長男くんの笑顔がすごく良かったので、楽しみにしていてくださいね!」と言われていたのを思い出した。

たくさんの人に支えられて、ここまで大きくなることが出来た。それがどれだけ幸せなことか。いつか、長男が気付いてくれたら嬉しいなと思う。どうか周りの人を大切に、そして大切にされるような人になりますように。


長男が生まれてきてくれて、私は幸せだ。

長男が「生まれてきて、幸せだ」と思えるような人生を送って欲しい。そのために、親として何が出来るだろう。願って祈って、抱き締めて、傷付け合って、目線を合わせて「ごめんね」をして、また願う。きっとこの繰り返し。それが、親が子供に出来る唯一のことなのかもしれない。長男の人生を歩むのは、誰でもない長男自身だから。私はただ、長男の命を繋げていく。



大好きな苺のケーキを頬張っていた君に幸あれ。



四歳のお誕生日、おめでとう。

たくさんの喜びと、涙と、思い出と、幸せをありがとうね。

これからも、健やかに。



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