きものを着たくなった訳と習う時期

「和の習い事をなさってるんですか?」
と着付けの先生に尋ねられ
「いえ、祖母のきものを見たら着たくなったんです、それだけ」
と答えた。
「それでいいんです」
と先生はまたにっこりした。
先生と呉服屋さんに出会えたこと、着てみたいと思うようなきものを持っていた祖母がいたのが、ラッキーなことだった。

着付けを習い始めた時期もラッキーだった。
よく「きものは暑くて寒くて」という。
確かに暑いし寒い。
慣れないうちは不必要に力が入るので暑いばかり。
習い始めるのが春だと、すぐ暑くなって、単どころか夏きものでも着たくないし、暦は秋になっても、残暑厳しいうちは袷を着たくない。
また、「お正月にきものを着て風邪をひいた」とよく聞く。
これは実際その通りで、ふだんきものを着ていないのにお正月になって初めて着て、あまつさえ寒い元旦に初詣なんか行ったら、寒くて体をぎゅうぎゅう締めて、それは風邪をひくのも当然だ。
胴体に幾重にも布を巻きつけるきものは、お腹まわりは真冬でも暑いくらい暖かい。
しかし、頸(くび)、手首から肘、足首から膝くらいまでは、素肌を外気に晒すので、これは確かに慣れないと寒い。
だから、初心者がきものを着て出かけ始めるのは寒さを感じる11月になったくらいからがちょうどいい、というのが私の経験的考えだ。
私が習い始めたのは年明けだったのだが、ウンセウンセと無駄な力が入って汗をかいてもちょうどいい室温だし、なんとか外に着ていけるようになるのが2月後半だったから、それもよかった。
しかしもちろんそう簡単にはいかなかった。


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