道のりは険しい、浴衣によりみち

そういうわけで、この教室の目玉(いっぱいあるが)「全くの初心者でも6回で一人で着られるようになる」というレッスンを始めた。
初心者が6回で、というとどこか大手の着付け教室みたいだが、違う。
グループレッスンもあるが、人の目が気になる私は仕事帰りに、個人レッスンで通うことにした。

長じゅばんを着て、きものまでスルスルと着られたが、案の定、帯が難関だった。
先生と一緒に締めていると、魔法のようにうまくことが運ぶ。帰宅しておさらいするのも簡単だった。
が、翌日以降になるとすっかり忘れて、呆然となることばかりだった。
銀座結びも習ったがこちらも同様だった。
とにかく見かけだけはお太鼓風に作る、帯締めも締めるのだが、結果どうにもおかしいので、母や友人に手直ししてもらい、なんとか乗り切っていた。
そうこうしているうちに単の季節も終り、平成最後の苛烈な猛暑がやってきたので、きものを着る機会は激減した。
そうなるとどうなるか。浴衣です。

趣味でやっているフラワーアレンジメントの作品展に皆で浴衣を着て参加しましょう、という企画があった。習っているのに浴衣を持っていない、どうしよう…祖母の遺したものに藍の小花模様の浴衣の反物があったので、仕立ててもらおうと呉服屋さんに相談しに行った。
たまたま店頭で見せてもらった、仕立て上がりの浴衣の中で、自分では絶対手に取らない色柄の有松絞りを当ててみたら意外に似合うことが分かり(言ってろ莫迦)、ふらふらとサイズを直してもらい、その浴衣に合う博多織の半巾帯も見立ててもらって買ってしまった。

買ってしまった以上、絶対これを着られるようにならなければ! という意志の下、浴衣のレッスンに臨んだ。
「私でも絶対間違いようがない帯の結び方を教えてください…」
ニッコリ笑って先生が教えてくれたのが、カルタ結びという簡単かつ楽チンなもので、教わって以来そればかりしている。
もういいおばさんなので、貝の口とかあっさり締めてみたいが、本や動画を見ても思うような形にならない。
そして作品展に浴衣で行って以降、なんと図々しくも、仕事が終った後、会社のトイレでちゃちゃっと着替えて、浴衣で飲みに行ったりするようになった。(そういう日は袖なしのワンピースに下駄を履いて出社する。まさに浴衣感覚)
昨今の猛暑は夜になっても暑くて、大汗かいて帰宅してネット洗いで洗濯機にかけて、夜のうちに干しておけば翌朝乾いている。
このころから、いいなきもの、と思うようになった。遅いわ!

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