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27 - クールとチルド/街の風景

「よければ常雇いにしてもいいが」と彼は言った。「給仕長が、英国人を怒鳴りつけるのもおもしろいだろうと言ってね。一ヶ月契約しないか」(『パリ・ロンドン放浪記』)

27(*26はこちら

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): 思慮深くあれ、と。

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): うん。

C: このメモいってみようかな。

メモ5:クールとチルド

C: 「クールとチルド」。

JC: おん。

C: お世話になってる人に焼き菓子を送りましょうかと。要冷蔵。ゆうパックで。

JC: うん。

C: 買ったお店から発送してもいいけど、出来れば一旦持って帰ってメッセージなんか添えたりしてね。他に何か入れたりもしてから出すでしょう。

JC: うんうん。

C: 準備が出来たら郵便局の窓口に持って行って……ここから寸劇ね。

JC: ふふふ。

C: 「冷蔵でお願いします。」「チルドですね?」

JC: おおん。

C: サービスの正確な名称ね。オッケーですよ。「はい、チルドで。」次は……ゆうパックの決まり事がある。

JC: うん。

C: 同じ送り先の前の伝票があると何十円か安くなるのね。「一年以内の同じ送り先の伝票は」「ないです。」「、お持ちでしょうか?」

JC: おぉん。

C: 最後まで言えなかったのが気持ち悪かったんだと思う。機械化してるから……。「ありません。」もう一度言う。焦りすぎたなとちょっと反省。合わせますよ。

JC: うん。

C: 「950円です。」とくるよね。それで千円札をキャッシュトレーに置くと……「現金でよろしいでしょうか?」

JC: あー。

C: ゆうパックって余ってる切手とかでも送れる。それは確かにコロナの最初のとき流行ったライフハックだけど……。ここで?

JC: うん。

C: いや、もう千円置いてる……足りてるでしょう。けっこう気味が悪いんだけど、早く終わらせたいから。

JC: あぁ。

C: 「はい。」と答えて、お釣りとレシート貰うよね。いつも言うよ、「お願いします。」って。プイって帰らない。全然感じ悪くしてない。

JC: うん。

C: そしたら「クールでお預かりします。」って。

JC: おぉぉん。くくく。

C: 「ちょっと、わざわざチルドに言い直させたんじゃないの???」これは脳内で。

JC: ははははは!

C: はははははははは。全部がズレちゃった。

JC: すごいなぁ。いくつくらいの人?

C: 40代に見えたかなぁ。

JC: フォグ?

C: ブレインフォグ案件でしょう。さすがに馬鹿馬鹿しいよね。怒ったりしても仕方ないからその場では何も言ってないけど……。

JC: そうだね。

C: もう一度「お願いします。」と言って帰ったけど……車の中でうなだれたよね。

JC: はははははっは! フォグ案件。

C: でしょう?

JC: この間……スーパーに行った時に、

C: うんうん。

JC: レジ袋有料でしょう。「袋要りますか?」と言われて、「持ってます」と。でもカゴに袋を入れてたのよ。

C: ほお。

JC: 「いいですよ袋あるんで!」「いいのいいの!」

C: サービス? ははははは。それフォグじゃないじゃん。優しいじゃん。

JC: はははは!

C: 持ってなさそうな人に見えたんじゃないの。

JC: あるし。

C: Tシャツまくって裾に入れそうに見えたんじゃないの。

JC: はははは。隠し事みたいに。

C: ありがちな近めのコミュニケーション。

JC: 面白いよね。

C: いい人だったんじゃないの。ふふふ。

JC: 魚屋の人もね。一般家庭用に週に三回刺身盛りを販売するのね。

C: 前にいただきました。美味しかった。

JC: 「すいませんね週に三回だけで!」って。週三回も! これもフォグ案件。

C: ははははは。それサービス精神なんじゃないの。いい人なんじゃない。

JC: ローソンの定員さんも、

C: いい人なんじゃないの?

JC: ははは! 過剰なのよね。サービスが。いつも挨拶とかもすごい丁寧。店長じゃないけど、夜はたぶんその人が任されてる。

C: うん。

JC: レジに二人並んでて……自分は三人目。なぜか自分を呼ぶわけよ、二人目じゃなくて。

C: なんで!

JC: 横のレジに。「どうぞどうぞ!」みたいな。なんでか分からない。「すみませんお待たせして!」

C: はははは!

JC: フォグ。

C: いい人なんじゃないの。

JC: ふふふふ。

C: 街のいい人三人紹介しただけ。

JC: あの……今度は画材屋に。

C: 豊富。

JC: いっつもパステル買う。いっつも同じ店員さん。だいたいオイルクレヨンで、他のもの買わないからね。いきなり「オイルですけどよろしいですか?」

C: ははははは。

JC: フォグ。

C: 確認確認。返品が多いから。それ……たぶん同じ人に最近当たったなぁ。パステルの辺りにいたら。

JC: うん。

C: 万引きが多いんだろうね。めちゃくちゃ近づいて「いらっしゃいませ」と言われた。

JC: 眼鏡の人?

C: そう。

JC: あぁ。多いんかな。

C: そう感じた。

JC: ボールペン売り場だったらわかる。

C: 伝説の、ぺんてるの!

JC: はははは。駄目よね。画材はやっぱり食うに困ってでも買うもの。伝説では。

C: そうだね。盗んだりはしてはいけない。物々交換するとか。

JC: ロックンローラーがレコード盗んだりとかはあっても。

C: レオス・カラックスの映画みたいな。

JC: うん。

C: 画材はね。ピロスマニみたいに……。

JC: そうそうそう。

C: 寝床や食事と絵を交換してでも、描ければいい。

JC: そうね。そういうところじゃないと駄目と思う。

C: 次のメモいいかな。最後JCがまとめてやる方が良さそう。

JC: オッケー。

C: 次はこれ。

つづく

 

2022年3月14日 doubles studioにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)

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