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18 - ジョーク、お金、スポーツの話

だけど私はまだ立止まっています。何かもう一つ解せないものがあるのです。何かまだ不穏なものを感じるのです。その不穏なものの輝きだけが見えるのです。(『超芸術トマソン』)

18(*17はこちら

10の断章 その1

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): 最初のメモ。「フラットアースジョークをひとつ」。

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): あぁ~。ジョーク聞けるの。くくくくく。

C: 元旦に眼鏡が壊れてね。

JC: うん。

C: 片方のブリッジが折れてしまった。正月どこも混むから我慢していたけど、気持ち悪くてこれはたまらんとなって、3日に買いに行ったのよ。

JC: うん。

C: 前から丸い眼鏡が欲しい気分だった……もう10年同じ眼鏡だったから。

JC: うん。

C: 丸眼鏡って結構ずっと流行ってる。

JC: 長いね。

C: 選んでかけてみてわかった。上下左右にレンズが広いから、歪みの幅が広がる。

JC: だよね。

C: それって多分……球体派の陰謀。

JC: ははははは! 陰謀で流行らしてるの。

C: ははははは。

JC: ジョン・レノンから罪を遡らないと。

C: いや、ジョンの丸眼鏡は小さいでしょう。近年のやつはもっと大きい。歪みの部分がどんどん外に行くことが重要。

JC: 外に行けば行くほど球体よね。はははは。

C: 消失点のカーブが増える気がする。あと目も疲れるね、かけてみた実感。

JC: そういうことか。

C: それで流行らせてる。

JC: 韓国発でしょう。韓国から、フラットアースに抑止力が働いて……。

C: いや、これ掘らなくていい。

JC: ははははは。

C: ははは。これ導入だから。

JC: ここまでジョークで成立してる。

C: ははははは。以上。これは完結してる。次からは真面目に……。

JC: ふふふふ。

10の断章 その2

C: 二枚目のメモ。イリイチの文章から。「私たちはみな私たちの時代の子として成長してきたし、それゆえ、脱産業主義的でしかも人間的なタイプの”仕事”を思い描くのはきわめてむずかしい。」(『コンヴィヴィアリティのための道具』イヴァン・イリイチ、1973年)

JC: うん。

C: 「私たちはみな私たちの時代の子」これ大事なことだなと思って。

JC: 大事だね。

C: さあ話してみよう。

JC: 人間的・創造的な生活をする、ということが、貨幣経済から離脱することと完全に一致してしまうのね。

C: そうだね。

JC: それくらい貨幣経済ありきで実生活がある。例えば、凄く独創的なアイデアがあっても、それが使えるためにはある種のポピュラリティや計算が必要になってくる。その「計算」を全て担ってあげますよ、という組織が今の社会をコントロールしている。

C: うん。

JC: 意識する・しないに関わらず、誰もがそこを通らないとそれをお金に変える事が出来ない仕組みになっている。

C: 関所があるよね。

JC: そう。そこを「仕事」とは呼ぶよね。みんなね。

C: 創造性となんの関係もない部分を。

JC: そう。

C: 同意するよ。続きも読んでみよう。「時間はお金のようなものになった。――昼飯までに二、三時間ある(can have)、どうやって時間をつぶそう(spend)か……時間が足りない(short of)ので、委員会にそんなに時間をかける(afford to spend)わけにはいかない、時間をかけるねうち(worth)はないんだ……そんなことしたって時間のむだ(waste)だよ、それよりは一時間節約(save)したほうがいいね……といったふうに。」(渡辺京二・渡辺梨左 訳)

JC: うんうん。まさにそうだね。有益な時間という概念自体が時間の発生とともに生まれているわけでしょう。「時間=賃金」で発生してきている。

C: これ……メモ用意してるとインタビューっぽくなるね。

JC: なる。

C: わたし完結してる気がした。はははは。でも整理されて分かりやすい話。

JC: 掃除もしたし。

C: 準備万端です。

10の断章 その3

C: おやつもどうぞ。今日はくるみとカシューナッツのミックス。

JC: カシューナッツ大好きなのよ。一番優秀と思い込んでる。

C: よかった。

JC: 快適、素敵な空間。丁寧な生活だね。

C: ははは。生活大事だから。ほとんどどこにも行かない。

JC: うちも行かないなぁ。(モグモグ)美味しい。

C: (モグモグ)では続きを。「スポーツの話(初めて見た外国人のShow!)」3つめのメモ。

JC: 外国人のショー。ははは! それね!

C: JCとのメッセージのやり取りで出た話題から採用。JCは中学生の時、レニクラの城ホール。

JC: うん。なんかカッコいいみたいになってる。

C: わたしは……あれ小学生だったのかな。「マジック・ジョンソン・オールスターズ」だね。

JC: なんなのそれ。なにかもわからない。

C: MJ。エイズで引退したとされてるバスケット選手。

JC: それは知ってるけど……。

C: が、引退後に、レジェンド興行みたいな。

JC: ほーん。

C: 世界中を周って……勝負があんまりない、技と顔を見せるのがメインのショーを世界中でやってた……んじゃないかな? わたしも小さかったしよくは知らないけど。

JC: だろうね。

C: 当時バスケットやってたから、みんなで行ったのかなぁ。集団でチケット買わされたのかもしれない。事情はわからないけど、現場のわたしはドッチラケだったことだけ覚えてる。

JC: んふふふふ。

C: これ見よがしにMJからのアシストでダンクとかするわけよ。長身の白人選手とかが。

JC: うん。

C: 結構みんな「おぉ!」とか言うんだけど。わたしにはスローモーションのように見えた。

JC: ふふふふ。

C: それ思い出して、小さい頃からそういうものに興味がないんだなと改めて認識したね。「権威」的な……有名人見られるだけで嬉しいわけじゃない?

JC: そうじゃないと成立しないショー。

C: でしょう。子供の時から本当にそういうのに興味がない……。一貫してるなと思った。同時期に毛利衛さんの講演も行ったね。あいつ!

JC: 気になる。

C: どんどんずれていく。ははは。誰でも楽しく読める……爽やかなスポーツの話ない?

JC: 人の打ったボールの目線の先にUFOが飛んでたことはあったね。

C: ははははは。

JC: はははははは! 「UFOだ~」って。

C: 斬新な球児。

JC: スポーツねぇ。野球と言えば阪神が傍にあるくらいで。

C: なにせフィラデルフィア・フィリーズの帽子被った子だものね。

JC: そう。チームにファンとかなかった。好きな選手という見方しかなかった。

C: パチョレックとか?

JC: はははは! ピッチャーが多かったな。ピッチャーだったし。

C: 左投げ……遠山? 大野豊?

JC: 投げ方が……でも、投げ方はどうでも良いことを教えてくれるピッチャーはカッコいいよね。そうだな……「ブレーブスこども会」っていうのがあって、小さい時入ってたのね。それでスタジアムに行ってたけど、誰もいない、客ガラガラ。

C: あぁ、パ・リーグそういう時代。

JC: 想像を超えると思う。本当に数えるほどしかいないの。凄いよ……あんなのよくやってた。20人くらいじゃないかな。私設応援団の人が野次ったりするとみんなに聞こえる。選手にも……。普通に怒鳴り合いの喧嘩になるよね。面白かった。

C: 地域的に野球選手や家族の遭遇率は高かったけど……やっぱりその時代の人は強烈ね。

JC: 特殊。

C: 昭和のスターも奥さまも……。でも平成の選手・家族は普通。時代だよ。

JC: うん。プロ野球は80年代にまさに3S政策の本丸で使われていたわけで。スキャンダルにしても、お金の事にしても、あることないことでしょう。「プロ野球は黒い世界だ」みたいな事があっても乗っかっていかないと……野球やってるのかヤクザになったのかわからん、みたいな世界になってた。で、日本経済的にそういう風潮が疲れていって、プロ野球も普通のスポーツになり始めてきた。ただそうなってきたらもう「野球自体どうよ?」ということだよね。

C: そうだね。

JC: 最近のそういうスポーツいらなくない? っていう。なくなると自分は思ってる。野球……来年には。

C: けっこう早いね。はははは。

JC: 来年にはないと思う。アメフトとかバスケ、野球はなくなる。

C: アメフトは永遠にルールが理解出来ないスポーツ。

JC: 分かると面白いんだろうけど、難しいよ。ルールが多いスポーツというのは基本的におかしいのよ。理解させて、のめり込ませて、出られなくする……というのが目的だから。

C: スポーツ嫌い……いや、好きなんだよ。そこが繊細な所で。

JC: うん。

C: 体育が嫌い。結局は教育の問題で、とことん体育で運動を嫌いにさせられたからね。

JC: うんうん。

C: それをこの何年かでどんどん取り戻していってる。

JC: ははははは! それ面白いね。字面だけ追ったら「どういうこと!?」と思うでしょう。「どんな状態?」って。

C: “Dog or Cat?” と一緒だよ。根本から。体育座りの身体から直さないといけない。

JC: もちろんそうだね。奴隷をああやって座らすと言うからね。

C: そう。自分を牢に入れるわけよ。すぐ動けない、とか……行進。

JC: うん。

C: ものすごい腿上げる。腿前で歩かせる。ブレーキの筋肉で。

JC: うんうん。

C: 学校で起こった全ての事が身体を縛っている。上履きとかもね。

JC: そうね。全部計算だからね。

C: そういうのを一個ずつ認識して一個ずつ解いていく。だから……身体に興味持ち出したのは最近くらいの感じ。

JC: はははは!

C: 溌溂と動ける時を知らない。これからどれくらい取り戻せるかですよ。

JC: 教育を見直さないとけないというのは、身体のことから考えていってもそうなるよね。みんな気付き始めてる。それ自体は凄く良い事。

C: うん。

JC: だけどみんなまだマスク着けさせられてる。なんにも変わってない。より酷い方向に。

C: 肝心な所がね。

JC: そうね。

C: 生への執着的な方向で考える人は必ず変な方向に行く。そうじゃないよね。自分の身体は自分のものというだけのこと。

JC: 結局、思考と身体が密接だから、身体がだるくてしんどくても脳が活発に動くということはあり得ない。まず身体に対する担保がないと頭は働かない。そして頭が働かないということは……実は凄い不快だということに気付かないといけない。「頭使わない方がいい」みたいなことが要は洗脳だったわけだから。

C: そうなんだよ。うん。JCが自分の身体を自分で動かそうと思ったのはいつ頃?

JC: はははは。

C: もしかして最初から思ってた?

JC: もちろん。ピッチャーやったりしてたけど、基本的には健康のためと思ってた。自分はスポーツ向いてないというのは分かりながらやっていたから、なおさら健康のためと思う何かがないと続かない。肘が痛くなる投げ方とかは意味がない。基礎体力みたいなものは付くのかなと思うけどね。スポーツしてると。

C: だろうね。

JC: これからも一人で成立するスポーツはいいと思うね。

C: Eスポーツ?

JC: はははは! 結局そっち押すんかい。月に飛んじゃう~。

C: ははは。

JC: そっちも行くよね……。今平気で子供に端末とか渡している親は分かってるのかね……。もう直結だからね、そのまま行けるよ。

C: スポーツの話の切りどころがわからない。

JC: はははは!

C: 結局誰なんだっけ。ファン。山田久志さん?

JC: ブーマー。

C: はははは。ブーマーの……これ爽やかなスポーツの話と言っていいと思うけど、門田博光さんの話。

JC: あぁ~。

C: 門田がホームランかっ飛ばして、ブーマーとハイタッチする時に脱臼する……動画で見たけど、悲惨な場面だよね。イタタタタ……。

JC: 見たことある。

C: トマソン知ってる?

JC: 知らない。

C: 赤瀬川原平知ってる?

JC: 知らない。

C: それ……。

JC: 損してる?

C: いや、これからの人生の……長尾謙一郎の作品を初めて読むくらいの煌めきが待ってる。

JC: 長尾さん……それだけでときめく。『三日月のドラゴン』も素晴らしかった。読んだ事ありそうなくらい「漫画」な内容なのに、凄く感動するなぁ……。

C: 『トマソン』今度プレゼントします。

つづく


2022年2月25日 dacha doublesにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)

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