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17 - 皿の旅、コード、アプリオリ

皿は旅をする 時を軽く超える(『孤憤』)

17(*16はこちら

(ダーチャ・ダブルスに到着)

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): ようこそ。こんなところ。

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): 絵もいい感じで飾ってくれてる。

C: ここと……(二階へ)あとここにもね。今日はこの部屋で話そう。生活の中に絵があるっていいよ。

JC: 意外と飾られるために描いてるから……一番の褒め言葉ですよ。(ガサガサ)この絵は○ちゃんに。いつもの差し入れのお礼。

C: ありがとう! きっと喜ぶよ。物々交換の実践ね。

JC: 絵でそれが出来たら嬉しい限りです。あと、これはお香。

C: ありがとう。

JC: 安心と信頼のチベット産。ノンケミカル。気分転換にどうぞ。で、本はクリスマス……じゃなくて誕生日のプレゼント。

C: そうなの。嬉しいなぁ、ありがとう。

JC: 入れてきたバッグもいる? だいぶ前の手描きのやつ。

C: 一式でいただきます。

JC: これは是非読んで欲しい。

C: どっち?

JC: フライデー。トゥルニエの方。『フライデーあるいは太平洋の冥界』というのは、なんて言ったら……もう名著。歴史的小説と自分は思っている。

C: オッケー。

JC: 『ロビンソン・クルーソー』が元の話になってるんだけど、ロビンソンが島に一人でいて、自分の生活……生きていくためにはまず何が必要かみたいな、どうやったら生き延びられるかというのを、現代の生活のいわゆる「コード」化された生活から探し始めるわけだね。反復させる可能性とか。それが段々と脱コードへと向かっていくという……ドゥルーズとかポストモダンの人たちが考えていたような事が見事に小説になっている。

C: 読ませていただきます。

JC: 是非。ドゥルーズ読むよりこっち読んだらと思うくらい重要。ドゥルーズの後期の本にもよく出てくる作品。これは池澤夏樹さんのシリーズ。この人のお陰でこの値段で手に入るようになったね。

C: そっちも持ってるんだ。

JC: うん。二冊あるから読む用に買った方をどうぞ。

C: やったね、ありがとう。ブルーハーブのボスも言ってた。「皿は旅をする」って。本も循環する。どっか行って、ひょっとしたらまた帰って来るかもしれないね。

JC: それを本当はやりたいよなぁと思う。絵も同じ。

C: 起こり得る事だよ。自分が買ったとして……まず20倍の値段で手放す。

JC: はははは! それじゃあ昔と一緒。

C: ははははは。ビットコインで。

JC: 脱身体、練習用コイン。ではなく、もう少しちゃんとした……。

C: まだそういうのはないね。

JC: 月額で絵を貸し出すみたいな……あんなのを個人でやりたいなとも思う。

C: やろう。すぐ出来るよ。コーヒーどうぞ。

JC: ありがとうございます。

C: 「次はメモ用意してやってみようか」というJCからの提案を受けて、わたしは10個用意しておいたけど……。

JC: ゼロ。

C: ははは。なんかそんな気はしてた。

JC: メモ……一応絵を描く所の横に置いてて、さっき見てきたけど……「夢枕と腹膜」とか書いてたね。

C: いい!

JC: メモすぎて置いてきた。ははは。まあ10個全部やろうよ。

C: オッケー。その前に、両手ぶらりんで話す理由と、今回はメモを採用した理由をJCから。

JC: はい。まず<アプリオリ>ね。アプリオリというのは、要は「前もって考える」ことだよね。「現代的」ということでしょう。で、それをやめよう、と。

C: うん。

JC: よく言う……よく聞くでしょう。「今を生きよう」みたいな。ざっくり言うとそういうことかな。

C: じゃあ、メモが許されるとしたら。

JC: うん。ポエム・詩を書いたりするみたいにメモが存在して、メモを読み返した時からもう一度時間が「始まる」。ちゃんと今からのスタートになっていけば、メモは成立する。思い出すために存在するんじゃなくて、再生のためにあるのであればアリなんじゃない? という。

C: うん。

JC: メモ一つ取ってもこういうことを考えようよ、ということだよね。

C: 今始めるために。

JC: そうね。効率化のためにメモが存在していると駄目ですよ。

C: わたしは基本的にメモ魔寄りなのよね。

JC: うんうん。

C: なんでもメモする。

JC: 自分も書くね。

C: 卵、ビニール手袋買う、とか。効率化にも使う。JCにメモでやろうと言われて、この録音用のメモを用意し始めたら、

JC: うん。

C: いつもの延長で全然違和感なくやったけど……「たぶんあの人やってこないだろうな」と心のどこかでは思っていた。

JC: ふふふふふ。はははは!

C: ははは。だからキリよく10個。ちょっとやってみる?

JC: うん。10の断章。

C: その1。

JC: はい。

つづく


2022年2月25日 dacha doublesにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)

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