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92 - 美しさが奪われる

彼は朝から何も食べず、不自由な足で何マイルも歩き、着ているものはぐしょぬれで、餓死まであと半ペニーだったのである。それなのに、剃刀がなくなったのを笑っていられるのだ。感嘆する他はなかった。(『パリ・ロンドン放浪記』)

92(*91はこちら

Chantrapas(シャントラパ/以下”C”): まあこの機会に一年分読み直してみてよかったよ。「合ってるじゃん」っていうことが多々あった。

Johnny Cash(ジョニー・キャッシュ/以下”JC”): そう。

C: 希望的に語っていることもあるからね。この先もあるでしょう。

JC: そうね、一回は現実を突きつけられるとしても。

C: その先にあるものは!

JC: そうじゃないとマズいよね。

C: では次のメモ。もう一つ「言葉の問題」。

メモ:言葉の問題②

JC: うん。

C: 副題がある。「3年経ってその程度」。

JC: ふん。

C: 仕事でね、まあアホみたいな話だけど、濃厚接触がどうとか。

JC: ほん。

C: 隔離になってちょっと遅れます、みたいな。それで「感染者増えてますので気を付けてくださいね」的なことを言われたのさ。

JC: おん。

C: もう……3年経ってその程度かい、と。いい加減そんな話やめてもらわないと仕事したくないなと思って、「気を付けると悪い方とシンクロするから、気を付けない方がいいですよ」と。心理学っぽく、冗談ぽくね?

JC: まあまあ。周波数的な。

C: そう。「休めると思ってゆっくりしてくださいね」と。

JC: いい言葉だね。

C: で、「落ち込みかけてたのでほっとします」みたいな。伝わってよかったよかった、と思ってたら……。一週間後くらいの明けのメッセージに「感染が増えてますので気を付けてください。」どひゃー!

JC: ははははは。

C: うぅん。「新しい・美しい日本語の挨拶」みたいになっちゃってる。一言寄せずにはいられない……。

JC: あぁん、定型。

C: 「秋風が……」みたいな。筆のノリで書いちゃう。

JC: うん。

C: だから最初「3年経ってその程度の理解かい」って思ったんだけど、正確には「3年経ってすっかり定着」。

JC: はははは……。ははは。

C: まだチャレンジしてる!

JC: ははは。そうなんだろうな、仕方ないのかな……。そういう意味でも奪われてるよね、言語を。

C: がっつり。

JC: ね。なんの美しさもない。美しさが奪われるということでしょう、定型文の中でさえ……。深刻だよ。

C: そこで〇ちゃんが「アーティストがそれじゃ駄目」って。

JC: そういうことですよ。

C: 良いこと言う。JCみたいな事言うなぁと。

JC: くくく。

C: 「3年経って定着しちゃった」説ですよ。

JC: してるんだろうな。予測変換で出ちゃうんじゃない? 一文字入れただけで……。みんなにそれで送ってるもんだからどうしようもない。他に送るメッセージがいくらでもあるけどね。

C: これも生活系。「堂々とノーマスク、堂々とヅラ」。

JC: はははは! どっちが正しいのよ。

メモ:堂々とノーマスク、堂々とヅラ

C: 道でばったり。素顔のおじさんと。

JC: おん。

C: 堂々とヅラ……人間の可笑しさが際立つね。ストリートの小ネタです。それ以上深いあれはない。

JC: マスクしてないならいいんじゃない?

C: そうね。単純にそれ。

JC: 不思議だね。

C: 人間の可笑しさが際立つ、なんだかファニーな出来事。街の風景。

JC: うん。

C: そんな世の中になってるなって。

JC: なってるし、それに一回フォーカスが行くとおかしくて歩いてらんない。はははは。一回ヤバいってなるとずっと笑ってなきゃいけない。奇天烈だからね、本当に。

C: そうなの。面白くて楽しい。道歩くだけでもね。

JC: 結局、人ほど面白いものはないからね。余裕をもって人を見た方がいいんだよね、実はね。

つづく


2022年11月25日 doubles studioにて録音

ダブルス・ストゥディオ
Johnny Cash (thinker/artist) & Chantrapas (designer/curator)
#doubles_studio_talk でトーク部分を一覧表示できます。

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