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番犬〈とち〉 の話

もう40年以上前の話、僕にとって家族といえる犬といえば柴犬の〈とち〉だけ。兼業農家の父が岡山市内から毎週末コメ作りのために里帰りする、祖父母の家にいた番犬です。幼稚園から小学校卒業くらいまで頻繁についていったのは、〈とち〉が「また来てね!」って言う?からでした。

孫の大好物だという祖母の思い込みで、夕食のメインはいつも骨付き鶏ももの煮込み。そのせいで帰省した日の〈とちメシ〉はほぼ、ほんわか暖かい残りごはんに味噌汁をかけ、鶏の骨が山盛りになった“ぶっかけごはん”確定です。家族がわざと雑に食べる〈とち〉の骨には肉と軟骨が程よく残っていて、それを集めて玄関先の犬小屋に持っていく担当が僕でした。

眺めるだけでドキドキ!惚れぼれする食べっぷりがいつも愉しみだったんです。みそ汁に浸ったお米はほんの一瞬、骨はバキバキ砕いてどんどん食べる。器はいつもピカピカになるまで舐め切ってしまう〈とち〉の食事。食べている途中に手を伸ばすとノールックで唸る、普段の愛くるしさからは想像できない野生を感じる瞬間でした。

理想は“みそ汁ぶっかけごはん”

18年間プロとして犬の自然食を開発してきた今でも、理想の愛犬食を聞かれると“みそ汁ぶっかけごはん”だと言います。犬にとって家族と同じモノを食べることは替えがたい幸せです。「みそ汁の塩分は?」「栄養バランスが」「鶏の骨はアブナイ!」という方に向けた僕の考え。具沢山の汁こそバランスのいい食べ物であり、だし汁に溶いたみその塩分は程よく薄まり、鶏骨の髄はもともと犬の大好物なのです。いろんな犬がいるので《ドットわん》で商品化するときも鶏骨は指でつぶせる位に加工しますが、少なくとも〈とち〉は器用に食べていました。

犬と骨

そういえば最近の犬が骨を食べていないことが気がかりです。犬にとって骨は貴重な栄養補給源で、ストレス解消にはうってつけの食材。昔はアニメでも土に穴を掘って隠してまで大切にしたものでした。あんなにも相性抜群の幸せな食べ物を「あぶない!」「手に入らない!」という理由で取り上げられているのが不憫(ふびん)でなりません。

ワンコの声を代弁して、飼い主さん“骨を取り上げないで!”(笑)。次回ドッグフード開発を始めるきっかけになったエピソードをお話しします。


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