モラルジレンマ

今日は、一読総合法以外の道徳の道徳科の授業第二弾ということで、モラルジレンマについてお話します。

前回の価値の明確化は相対主義で善悪の判断を考慮に入れることが出来なかったために、児童、生徒に対して積極的な介入がしにくい。という弱点がありました。

しかし、伝統的な道徳教育の方法では押しつけがましい感じが出てしまいます。押しつけになることなく、しかも、積極的に望ましい価値観を身につけることはできないか。そこで、コールバーグにより開発されたのが、モラルジレンマという教育方法です。

コールバーグは子どもへの調査から道徳性には発達段階があることに気が付きます。そして、その発達には以下のような特徴がありました。

・前段階の思考を抱合したものである。

・前の段階に戻ることはない。

・一つ上の思考に触れることで段階が上がっていく。

・認知的不均衡を是正していく中で発達していく。

・役割取得(自分以外の他者の立場から物事を考えられるか。)がされることで発達の条件が整う。

そのような道徳性をどうやって育てていくかと考えられたのがモラルジレンマディスカッションです。

二つ以上の価値観が対立し、かつ、どちらか一方を取ればもう一方はあきらめなければならない状況(ジレンマ)を提示し、その主人公はどうすべきであるかを議論することで道徳性の理由付けを深めていくことが出来ます。

授業の流れはこのような感じです。(2時間扱いでする場合)

①ジレンマ状況を確認する。

②一回目の自分の判断と理由を書く。

③教諭は児童の書いた理由付けから、発達段階ごとに分けて把握しておく。

④自分の判断した立場から一回目のディスカッションをする。

⑤教師は役割取得や認知的不均衡に誘う問い返しをする。

⑥二回目のディスカッションをする。

⑦改めて判断とその理由を書く。

ジレンマディスカッションにおける教師の役割は主に議論の整理と方向付けです。直接何かを教えるということはしません。

特徴的なのは、答えをどちらか一方に絞るのではなく、より良い理由を議論を通して探っていくという点です。子どもは自分の考えを途中で変えてもかまいません。よくよく考えて出した結論であればどれも正解という考え方です。

また、ジレンマ状況というのは議論を呼びやすく、意見が活発に交流されやすく、他者の考えを聴くことで自分の考えが深まっていくということも実感しやすいです。

もちろん、モラルジレンマにも限界があります。

・そもそも議論を誘導するのが難しい。(ある程度の技量が必要)

・良質なジレンマ教材が少ない。

・ジレンマを解決するような方法が提案された場合、切り捨てることになってしまう。

・道徳的実践に結び付きにくい。(問題行動を起こした子どもの道徳性の発達段階が高いという例が生じた。)

・日本の学習指導要領に準拠しようとすると内容項目がどれになるかがわかりにくい。

それでも、人気があり、教科書にも採用されています。一度、実践してみてはいかがでしょうか。

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