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早紀13

2月に入った。寒い…。寒さのせいではない。インフルエンザなのかコロナなのかよく分からない。職場には熱っぽいので休ませて欲しいとだけ伝えて休む。詩月からの連絡では、あれから早紀は部屋探しをしてるふりだけして、まだ居ついているとの事。例え元気だとしても早紀の神々しいまでのオーラを目の当たりにして、一対一でぶつかる勇気が私には無かった。了と二人ならとも考えたが、早紀の話以前に詩月の話をする事さえ嫌がり始めていた。「面倒」だからではない。早紀のプレッシャーに疲れてしまうからだろう。

喉が少し楽になった瞬間に詩月に電話をする。あの時の寝入った早紀の不自然なまでに美しい寝顔に猛烈な違和感を感じていた事と、見間違いでなければあの瞼の一瞬の緩みに嫌な予感を感じていたからだ。「早紀さん、あれからまだそこに居ついてるのはいいとして、私達のオンカジについて何か聞いてきたりしてない?」ウーンと可愛らしい唸り声をした後「全くそんな事は聞いては来ないけど、今度お姉ちゃんのスマホのGoogle履歴覗いてみますね」喉の調子が長電話に耐えられない。風邪に気をつけるよう注意だけして電話を切った。

数日後、詩月からLINEがあり、私の仕事が終わり次第、私の最寄駅で会いたいとの事。コロナやインフルエンザが大流行している昨今、夜にサングラスまでするのはコンビニ強盗くらいだろう。水商売の女がプライベートで着けそうな大きめのサングラスで声が無ければ詩月と分からなかった。「美樹さん、呼び出してすみません。ちょっとドジっちゃいました」とサングラスを外した素顔は左眼側が真っ青になっていた。男にバットで殴られた様にも見えるその痣は早紀の右ストレート一撃によるものだそうだ。個室居酒屋に入り話を聞く。

「Google履歴観たのがバレてしまって…」確かにそれがバレれば早紀が怒るのも分かる。とはいえここまでやるとは…。父親でも手を焼く程の家庭内暴力とは聞いていたが、まさかここまでやるとは私の想像を遥かに超えていた。了やマダラを使って強制的に出て行かせるのは逆効果だ。詩月への報復が予見できる。傷害で身内を警察に突き出すわけにもいかない。かといって殺すわけにもいかない。説得に簡単に応じるとも思えない。どうするべきか…。「詩月、多分今から言う私の案が一番の最善策だと思うんだけど…。あの部屋は早紀さんに譲って、詩月が出て行くしかないわ」詩月があからさまに「えーっ!」と言いたそうな顔を見せたが対案が出て来ない。「他に何か策ある?」と言っても詩月からは何も出てこない。「私にもう一部屋借りれって事ですか?」と言ってきた。かなりの負担になるだろう…。「暫く私の部屋においでよ。いつまでもいていいから」詩月の目から大粒の涙が流れ落ちた。

この日はそのまま私の部屋に泊まり、翌日の仕事は休ませ、早紀が仕事に出てる間に夜逃げの様にパソコンと服だけまとめて私の部屋に引っ越した。事情はどうあれ気の合う女同士、楽しい生活が始まった。私の帰宅時間はまちまちだ。早番と遅番に別れており、早番だと18時に退社。遅番だと22時といった具合だ。早番の時は私がご飯を作り、遅番の時は詩月にご飯を作らせる。その他の家事も分担とした。了にこれができるだろうかと考えてみたが、了ならまず心配いらない。了の部屋に遊びに行った時、なかなか整理されている部屋で驚いた。了曰く「いつでも連れ込み旅館にできるように、常に綺麗にしてあるのよ!」との事だった。その時が来れば家事の分担には快く応じてくれるだろう。

詩月が私の部屋にやってきて1ヶ月が過ぎようとしていた。私は夜のニュースを観ながら爪を磨いていた。その間、詩月は何気なくスロットを回していた。3ドルベットだ。資金1000ドルで3ドルベット。動画配信者でないんだから無理しなくても…。どうせ溶かして「ドラえも〜ん」と泣きついて来るのが詩月のお決まり…。そう思っていた。当たり前にそう思っていた。奇声!歓喜!「美樹さん!美樹さん!早く!!」マネートレインで12525倍のエピックだ。こんな数字は都市伝説と思っていた。37575ドル…。とうとうやってのけた!画像のスクショを撮る。詩月の涙と鼻水が止まらないのを見て私も涙が出る程笑い、そして泣き喜びを共有した。Twitterにスクショを載せるとそのリツイートがリツイートを呼びとんでもない数のイイネがついた。私だけでなく、その夜はオンカジ界隈の皆共々が詩月を祝福した!

☆毎回投稿して数時間は誤字脱字多いかと思います。よくチェックしないですぐ投稿しちゃうから。でも、待ってくれてる人に早く読んでもらいたくて…。間違ってる所は後で直すから大目に見て下さい。


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