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早紀11

私が選んだゲームは、なんて事は無いサレンダー付きのソフト BJだった。資金500ドル。ドーンとハーフインするとしても250ドル。大きな金額だ。ただ、サレンダーできれば375ドル残る。ディーラーの手札が2〜7なら、こちらがクソカードでも勝負に出るつもりで挑みたい。これでサレンダーしたとしても資金375ドルなら150ドル賭け直して勝てば525ドルになる。これで負けても225ドルで残り約半分だ。そして150ドルにするもう一つの理由は、いざという時ダブルを選択する自由を残しておく事。これが大事だからだ。最悪のシナリオは初戦250ドルを賭けて負け、次にルーレットかバカラに移り250ドルオールインするか、それが嫌なら125ドル125ドルで2/3法をして375ドルまで戻すしかない。いずれにしてもオールインだ。

結果は丸裸。250ドルで勝負し負けると、焼けてそのままオールイン。私のカードは11のペア。ディーラーの6に無駄に喜び、刻んで21まで持っていかれて散った。なんやかんや考えてもこんなもんだ…。それが私の今の実力…。それなりに場が盛り上がって良しとするしかない。

最後に詩月の番。スロットだと思い込んでいたら選んだゲームはライトニングバカラ。資金は今日のためにデリヘルで稼いだ10万円。バンカーに5000円で賭け続けるという。勝ちと負けをバランスよく繰り返しながらも手数料20%と負け1回先行でマイナスが1万を超えて来た時に4倍と3倍のライトニングカード2枚でガツンと当たり、さらに5000円フラットベットを続け負けも込んだが、結果は更に2度のライトニング当たりでトータル+8万の快勝。負けが続いてもマーチンできないのがライトニングバカラ。フラットで根気よく続ける忍耐が必要。

皆で天津を注文し直す。アツアツの胡麻団子にビールの組み合わせがなかなかイケる。名残惜しくエコペイズを開くと謎の残高300ドル。何だろう…。詩月だ。了でもやらない気の使いよう…。流石相棒だ。嬉い…。本当に楽しい1日だと心から思う。オンカジを知る輩と飲んで笑ってという事はなかなかできない。まだまだメジャーなギャンブルではないから…。だからこその団結もあり、オンカジ以外の相談もお互い話し合った。マダラが了に余計な事(私とマダラの肉体関係)を言うのではと不安もあったが、マダラは弁え(わきまえ)ていた。私はこれから先の本業に不安があった。何歳までケーキ屋の売り子として働けるだろうか…。マダラはAGA治療を本気で考えているらしい。了は今あるテレビがなかなか壊れなくて、新しくテレビを買うタイミングが分からないと…。そして最後に詩月だ。この詩月の相談が1番重たい相談だった…。

「私、3歳上の姉がいるんですけど、なかなかぶっ飛んでる姉で、うちは学歴だけは良い家系なんですけど、姉は飛び抜けてぶっ飛んでるというか…」歯切れが悪い。正月にかけた電話の時と同じだ。「姉は早稲田出てるんです」オイオイ!確か詩月も立教…。私は高卒…。天は二物を与えないの権化が私なら、この姉妹はなんなんだ…。「両親は2人とも拓大卒でまぁまぁなんですけど、姉が超高学歴という事で頭が上がらない様子で、姉が親にマウントを取る以上の事が起きてしまっていて…」聞き進めると家庭内暴力だそうだ。父親ならどうにでもできそうだが、学歴にこだわる親だからこそ自分より上の学歴を持つ娘に頭が上がらないとの事…。その姉が最近詩月のアパートに居座っているらしい。「お姉さん仕事は何してるの?」了が尋ねると「某化粧品会社で企画関係の部署にいたみたいですけど、最近は広報に異動になったみたいです」多分、学歴容姿共に良く怖いもの無しなのだろう。「夜も殆ど寝ないんです。多分、躁病だと思うんです…。ですけど、プライドの高い姉は病院に行ってくれなくて…」

マダラは何も喋らない。マダラが喋れない程にこの話は重い。了は煙草を吸いながらずっと左上を見上げている。多分これは実際に会ってみないと詩月の助けにはなってあげられない。「詩月はお姉さんに出て行ってもらいたいんでしょ?」と言ったのは左上を眺めたままの了。「はい。姉もお金が無いわけでは無いんです。もし無かったとしても私が新しい部屋を用意するお金は出せます」とはいえ、親の気持ちも分からなくも無い。まず躁を何とかするために自分達のそばに置いておきたいのではないだろうか…。

やっとマダラが口を開いたかと思えば、とんでもない事を言い出した。「了と美樹で詩月の部屋に遊びに行くフリして様子見てこいよ。俺はどう見ても人に不快感与える容姿だから行けないけど」確かにそうだが…。詩月の姉の名前は「早紀」私の同級生にも同じ名前の子がいた。とんでもない美人だった記憶がある。300ドルの義理を返すためにも、近いうちに了と私で詩月の部屋を訪れる事で話はまとまった…。

☆こんなフィクションなかなか無いでしょ?俺は誰も騙してないよw。俺、高卒で上手いこと書けてないけど、プロの作家さんならもっともっと肉厚な小説にできるんだろうなぁ。


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