戦争の始末(ゴジラ-1.0 に関するお気持ち表明 ネタバレ大)

見た感想をつらつらと。なお筆者、おわかりのことと思うが艦これ・ストライクウィッチーズあたりから入ったニワカミリオタ。
実際PV公開前に、残された海軍艦艇、具体的には戦艦長門が最後のご奉公に主砲41cm砲でゴジラをぶち抜く、というのも予想の案としてはあったのだが、海軍色そこまで出さないだろうと思ってボツにしてたのよ。そしたらゴジラガチ勢どころかミリオタまで大喜びの映画になってるじゃないですか…。
ネタバレしかないので未見の人は見るな。

ゴジラについて

シン・ゴジラの彼は恐竜の形してるけど使徒とかそういう類の正体不明の存在だったが、今回の彼は出自がはっきりしてる。大戸島近海に住み着く恐竜だったものが、クロスロード作戦で原爆をまともにくらったことから、人間に対する殺意が満々だ。戦争と核の具現そのものになっている。
しかも今回、放射能火炎がとんでもない威力になっている。キノコ雲は発生するわ大地はめくれ上がるわ衝撃波は発生するわ。まさに核爆発。前回のバスタービームもどきにも意表を突かれたが、今回の核爆発は改めてゴジラが核の申し子であることを真正面から示す形になっている。その威力の分、発射したゴジラにも多大なダメージが入っているのも新機軸。撃てば撃つほどに破壊を撒き散らすが、自分もまた傷ついていく。
…傷つくといえば、今回艦砲射撃が普通に有効なのね。有効ではあるものの再生速度が異常なので結果的に効果がないというだけで。ということは、防御力だけで見れば通常生物と大差なく、敷島たちの放った機雷を受けたとき、高雄の主砲を食らったとき、ワダツミ作戦で水圧攻撃を受けたとき、それぞれ大ダメージを受けてたことになる。…急にだいぶかわいそうになってきたぞ。
そして…エンドクレジット前のラストシーンで再生しているが…これ、見た当初は「殺せてなかった!」というホラーのベタな落ち案件かと思ってたが、上記のことを鑑みると「頭だけになっても死なずに、というか死ねずに再生している」という実に悲しみの深いことになりはすまいか。
このあと、再生が終わったあたりの話が1954年の初代ゴジラだったりするのかね。そりゃ憎しみのあまり東京を再び火の海にするわな。こうなると、芹沢博士のオキシジェンデストロイヤーでとどめを刺された件が、科学への警鐘という以上に、ゴジラにとってはある種救いになったのかな、とも思ってしまう。

それはそうと、完全に見逃していたがラストシーン、病室の典子さんの背中に蠢く何か、推定G細胞があったということで、「戦争は終わった」と喜んでいるところに実はゴジラの災い、つまり戦争の災いは終わっていなかったという話になってしまう…。まあ実際、史実としてもこのあと戦時中の日本および世界の国々が諸々やらかした話の後遺症とか、その後の核抑止論を背景とした冷戦の開始もあったりして、広義の第二次世界大戦が終わったからと言ってきれいな世界になることはなかったわけで。

重巡高雄について

そもそも終戦時点で自力航行不能な状態だったはずで、本来なら日本近海まではどう頑張っても来られない気がする。
それに、ゴジラが来た時期が1946年ごろとあったから、解体されてるか微妙な時期のはず。
それが来たということは、この世界の高雄は中破程度、修理すればなんとか日本に来られるくらいの損傷で終戦を迎えた+もともと返還の話があったりしたのかな。
重巡妙高も一緒にシンガポールで終戦を迎えたはずだけど、来てないということは史実通りに解体されたのか、それとも高雄の修理パーツに当てるためにバラしたのか…。
監督が出したかったというだけあり、登場の仕方がヒロイック。敷島の乗る掃海艇が飲まれかけたときに20.3cm砲を当ててゴジラをのけぞらせるというヒーローぶり。怪獣映画で通常兵器の効き目があるのは珍しいと思う。…あ。マグロ食ってるやつとかキングコングとかの例はあるか…。登場後も、大ダメージを受けつつも主砲をぶちあて、ついにはゴジラのダウンを取るとは。とはいえ脅威に感じたゴジラの放射火炎の一撃で葬られるのだが、ゴジラにしてもとっておきを使わないと倒せない敵と認識されたということで、これはもう大金星だったのではなかろうか…

駆逐艦たちについて

海軍将兵が集められ、戦力の説明がされたときに「受け取れたのは駆逐艦が4ハイのみか…」みたいなことを言われるが、メンツを見るに最大限の配慮をされている気がする…。
この時期、曲がりなりにも形が残ってた戦艦や巡洋艦は全部解体されている。復員船に使ってた空母はあるにはあったが艦載機がないから使いようがない。とすると駆逐艦か、それ以下のサイズの艦艇しかないわけで。最悪「海防艦と掃海艇でなんとかせい」と言われてもしょうがないところに駆逐艦、それも不沈艦とまで呼ばれた雪風はじめ武勲ある艦ばかり渡してもらったところを見ると、GHQは動けないなりに最大限の協力をしてくれたのだろう。…雪風、響、夕風が選ばれたのは「幸運艦」とか「不沈艦」と呼ばれたからだとは思うが、欅はなぜ?
個人的にはこのあたりの国家間の駆け引きを見たかったが…あまりにミリオタ向けの話になりすぎて話の趣旨が変わってきそうなのでダメだろうなと…。
なお雪風・響は史実では1947年に賠償艦としてそれぞれ台湾・ソ連に貰われていくわけだが、この世界の雪風・響はゴジラの放射線とか肉片とかをかなり浴びてるわけで、史実通り貰われるのか大変微妙な気がする…。

震電について

作戦に不安を覚えた敷島は戦闘機による特攻作戦を提案するが、そもそも戦後、武装解除されたあとでそんなものがあるはずがない。
あるはずがなかったのだが…
「あったんですが、ちょっと癖のある機体でねえ…」いや待ってこういうところで出る癖のある機体ってまさかアレじゃないでしょうね一旦落ち着きましょうそのドアから手を離して開けないで
「これは…」
ほーら前進翼でケツにプロペラがあるーーー!
「震電です」
…バカ(称賛の言葉)じゃないの!?震電の詳しい説明はWikiを読んでもらうとして、要は史実では未完成だったロマン兵器です。それを特攻に使用するとかどれだけ贅沢な使い方なの!?しかも離陸してからゴジラ上陸現場にたどり着くまで飛行風景の時間をたーーっぷりもらっちゃって!監督ゴジラ対震電がやりたかっただけでしょ絶対!いいぞもっとやれ。
…もっとやって最高の見せ場(飛行場から飛び立ってゴジラを海に引き戻す→水雷艦隊に向けて放射能火炎が放たれる寸前に特攻→パラシュート発動!)をもらった。脱帽。敬礼。
欲を言えば、敷島が従来の戦闘機とは全く違うこいつをろくな訓練もなく動かせる裏付けが欲しかったかな。いちおう、最序盤で間に合わせの特攻機にも関わらずきれいに着陸してる、という描写はあるんだけど。

つまるところ、この物語の敷島側パートは、いかにこの優男のゴジラに対する殺意を高め、震電に乗せて特攻させるか、にあるのだと思うね。その後のパラシュート脱出・嫁さん生存確認による浄化も含めて。…結果として終わってないっぽいんだけどね…。

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