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JUNGLE (ストレートプレイ)

「船底に押し込められた難民たちの祈りの声は、海の祈りのように響くのです。」

犬に見つからないように、と玉ねぎを1つ持たせられ、冷蔵庫のような箱で難民たちは運ばれる。18時間、息を潜め続けてようやくたどり着いた希望の国イギリスでも移民申請はなかなか通らず、「人以下」扱いは、延々と続く。

故郷に置いて来たレストランへの愛着を胸に、ようよう作った皆の憩いの難民キャンプ内のカフェも、あっという間にぺしゃんこにされる。

「うちを離れるのは、もう嫌なんだ」

イギリス政府やEUによる難民問題に対する施策について、歯に衣着せぬ物言いまくりな3時間弱だった。

観客の半数は、エアコンの無い(実際切っている!)蒸し暑い難民キャンプ内のレストランに生き、半分はドーバー海峡の崖から対岸の難民たちを見下ろしている。

この劇場、普段の舞台はどんな形状をしているのだろう。観客席と舞台が、こんなに一体になっているのは初めてだ。トルコ料理屋さんのカーペット席のように、脚を投げ出して座れる客席なんて、とても斬新。

真ん中のランウェイみたいなところが主な舞台。周りのカフェに着席しているのは観客。カフェ内でも話しは進むので、演者は全方位に現れる。臨場感が半端ない。すごい。

真っ暗闇の中、懐中電灯の明かりを頼りに難民密輸業者との交渉がすすんだり、夜中の警官隊突入の照明弾で難民たちの姿が顔無しのシルエットとして浮かんだり、と演出も度肝を抜かれっぱなしだった。

未だ続いている難民問題への、自分の意識の低さに良心の呵責を感じながら、劇場を後にした。

ポケットのコインは、寄付箱に入れてきた。

実際のカレの移民キャンプ(通称ジャングル)については、こちらとか。

https://www.bbc.com/japanese/37748450



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