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かげつみのツミ (劇団おぼんろ)


愛しさは寂しさの影だ   寂しさよ愛となれ

影があるということは、どこかに必ず光がある。

光に寄り添ってきたお人形たちの体内には、その時引き受けた影がいっぱい詰まっている。

縫い目の玉留めを解いたら、体内の影が白い羽根のように、外に舞う。

孤独を解放するように。

でもその影が、彼女らを立体的にしているのだ。

それは、私の中の影も同じだろう。

私を私たらしめているのは、光の成分よりも、その光に静かに寄り添う影の方だ。

影が濃ゆく感じられるのは、その分光が強いから。それは、悪いことじゃない。

「こんなにいっぱい飾り立てて。重かったでしょう?」

孤独を、寂しさを埋めるように、少しずつ少しずつ他者の何かを身にまとって、飾り付けて。小さなリボンの一つくらいなら良かったろうに、やれボタンだ、やれ腕の一本だ、と求めるものもどんどんエスカレートして。

ねえ、全部とっちゃいなよ。素のあなたが、一番綺麗なんだから。影の色をそのまま出した、涙を隠さないあなたが一番、あなたらしいんだから。

捨てられたり、死んじゃったり、人間が勝手に決めた賞味期限が切れちゃったりで、孤独にさせられてしまった人形たち。人間だって同じこと。少しでいい、ものがたりと共に、お互いに寄り添おう。

それだけで、心が動く。そして世界は少しだけ、色合いを増す。あなたの影の分だけ、鮮やかになる。

劇団おぼんろ、春の本公演。ギリギリ楽日に間に合った。

劇場を途中、4グループに分かれて移動するから、一度に体感できるのは、全体の四分の一。其々別の語り部が付くから、一つとして同じモノガタリはない。各キャラクターの視点から、同じ空間の物語が別の言葉で紡がれる。だけど、最後には同じ空間に帰ってきて眠る。其々が別のモノガタリを抱きながら。それは、世界の縮図。

テーマ曲の歌詞カードを帰り際に下さった。これだけでも色々思い出して泣ける。

主催、演出、脚本担当の末原拓馬さん、天才。

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