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346/366 ひとりしばい 『ラルスコット・ギグの動物園』 下野紘編

私は全て、思い出してしまったのだ。

空襲警報の最中、狂ったおじいちゃん象のクレバオーヌは、それまで忘れていたことの全てを思い出してしまう。

一体何を?

それが徐々に、紐解かれていく。

象と言えば、古今東西、人気者と相場が決まっている。クレバオーヌも、そもそもは平和の使者として、2国間の友好の証としてこの国に送られてきた。まだちっちゃい時に。本当は自分の国を離れたくなんて無かったのに。でも、その小さくて大きい胸に使命感を抱き、クレバオーヌはラルスコット・ギグの動物園に辿り着いた。

だが長い長い輸送の旅の途中で、2国は敵同士となっていた。だから、動物園を訪れる人たちも、他の動物たちですらも、敵国からきた象のクレバオーヌに石の礫を投げつけた。

こんなやつ、来なきゃいいのに。

そんな仕打ちの中で、いつしかクレバオーヌはひねくれ者の嫌われ者になっていった。

そんなクレバオーヌには、ずっと待ち続けているお友達がいる、らしい。彼に愛をくれたズズという少女だ。

「少し若い頃の自分(自称)」が書きおきしてくれた沢山のメモを読むことで、クレバオーヌは何があったのかを思い出そうとする。記録による、記憶の再確認。

それらの記録と記憶の欠片の数々が、空襲をきっかけにして全てピタリとはまってしまう。

戦火の中、クレバオーヌは立ち上がり他の動物を助けていく。昔ズズと一緒に経験した世界は、あまりにも美しかったから。そのことを誰もが知るべきだから。

これからはずっと運がいい

そんな一言を、クレバオーヌは「小さいから運が悪い」と嘆くばかりで逃げようともしないリスのモルにかける。それに力を得て、モルは大好きなララを探しに動物園から逃げ出していく。

一瞬だけ交錯する、動物園で一番大きなおじいちゃんと一番小さな青年の旅。

私は幸せだ。なぜなら私の中には愛が溢れているからだ

誰の中にも愛が溢れている。拗ねたり、いじけたりして表現できないだけで。でももう、それをそのまま出してもいいんじゃないだろうか。

だって、明日がどうなるかなんて、誰にも分からないのだから。

***

こんなに感情がグルグル動く一人芝居を1時間強やった後での下野さんのアフタートークのテンションが控えめに言っておかしすぎ!

脚本、演出の末原さん、マジ天才。

全3話、配信が始まっておりました。

先日書いたリスのモルのお話はこちら!

モルちゃん編について書いたnoteはこちら。この2つの絡み具合がもう... ヤバイ。泣ける。

どうしよう... これ三部作でさ... もう1作、虎の話があるんよね... ここまで来たらコンプするしかないんよね... そしてこの交錯具合を確認したくて、また最初っから見直したりするんでしょ... 

沼だよ、沼...

うぐぐぐ。

アイキャッチは、今年の春公演「メルリルルの花火」のチケット面!末原さんの絵、可愛いのです。

明日も良い日に。



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