いつかおばあちゃんになるあなたへ…コント「ババ抜き」

コントみたいなリアルがデイサービスの日常です。よくスタッフ同士で「これあの監督で映画にしてくれたらめちゃくちゃ面白いのにね!」なんて言い合っていますが、映画になる前段階として、まずは私が書籍化を目指します…(本気です)


程度の差や型の違いはありますが、認知症の利用者様が大半を占めるデイサービス。

今日がいつかわからない方はたくさんいますし、自分が誰なのかもわからない重いレベルの方から、漢字も書けるし般若心経も暗唱できるのだけど、5分前の記憶が無いという一見しっかりして見える方までさまざまです。(短期記憶が保持できないタイプは典型的アルツハイマー型認知症です)


そんな認知症率100%のテーブルで今日はトランプが始まりました。

おなじみのババ抜きをするようです。

一見しっかりしているけれどバリバリ認知症の山下さん(リーダー)が仕切ります。

トランプを切ったり、配ったり、人のお世話をしながら自分に有利に(笑)ゲームを進行します。

ホンワカおっとりした川井さんはかなり認知症が進行していますが、なんとか必死で皆さんと話を合わせます。

谷口さんは川井さんの横で手や口を出すのが好き。つまり世話焼き。ご自身も認知症ですがそれは知りません、お世話兼ツッコミ担当です。

猫のミーちゃんのお世話が生き甲斐の鈴木さんは、自分の話をするのが好き。粋な事を言って人を笑わせたり、自分の教養に誇りを持っていらっしゃいます。いわゆるインテリ系おばあちゃん。


などなど、総勢数人で始まるババ抜き。


リーダー山下さんに進行をほぼお任せしながら、スタッフはさりげなく横で見守りつつ、別の仕事をしたりします。

山下さん(リーダー)「ボケ防止にはトランプが一番いいのよ!私達ボケないようにトランプしましょうね」


川井さん(ホンワカ)「そ、そうよね」


谷口さん(世話焼き)「そうよねってアンタ本当に話わかってるの?

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鈴木さん(インテリ)
「こんなババアばっかりでババ抜きするの?(笑)」


川井さん(ホンワカ)「そ、そうよね、そういえばそうよね」


谷口さん(世話焼き)「アンタ意味分かってないでしょ?(笑)」


山下さん(リーダー)「トランプすると頭が良くなってボケないから毎日やった方がいいわよね!」


川井さん(ホンワカ)「そうよね、私もそうだと思う」


谷口さん(世話焼き)「そうよねじゃないわよアンタの番よ、早く取りなさいよ(笑)」


鈴木さん(インテリ)「何?今トランプやってるの?ババ抜き?こんなババアしかいないのにババ抜き?(笑)」

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山下さん(リーダー)「ボケると治らないんだって。そういう人は見たことがないわよね。私達はトランプをやってボケないようにしましょうね!」


川井さん(ホンワカ)「そうよね、私もそれがいいと思う」


鈴木さん(インテリ)「こんなババアばっかりでババ抜きしてたら世話ないわね(笑)」


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…と、自分の番が来るたびに皆さんまた同じような事を言います(笑)。

回る順序が逆になったり、皆さんがあまりルールを理解していないのをいいことに、リーダー山下さんがズルしたりします(笑)。(スタッフは目の端っこでちゃんと見ています(笑))


揉めそうになると介入しますが、多少の混乱やズルも、脳が働いてこそなので、基本横目で見るだけで放置します。

でも皆さん本当に楽しそうで賑やかで、まるで女学生のような大騒ぎです。

認知症になっても自分はそれを分からないし、理解した場面があっても忘れてしまいます…


記憶に残らないとしても、日常にこんな楽しい時間が持てるのはある意味幸せなんじゃないかな。

ボケないようにしましょう、ボケたらダメよと口々に言ってますけど、皆さん実は認知症ですよ。

でも、ボケてもダメじゃないし、みんなでいたら楽しいよ(笑)そんなおばあちゃんに私もなりたい。

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