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エデンの園の紀行文

 今日は暑いな。でもまだ29℃だ。こんな気温で参っていては先が思いやられる。宇宙人は例によって夏は土星の裏側の避暑地へ引っ込むので、運勢鑑定は7月から秋までお休みするよ。ブログやnoteの記事も電波情況によっては休止になる。ご用のある方はお早めに。『算命学余話』は6月19日までフォークNで購入できます。読者の方からnoteのマガジン機能を使って『余話』の便利な掲載・購読が可能だと助言されたが、荷物(=記事)が多いので引っ越しには時間がかかる。加えてこの暑さで集中力が低下している宇宙人なのだ。仕事は遅いぞ。
 なんとか読書をして正気を保つ宇宙人。良書を紹介しよう。高野秀行著『イラク水滸伝』。高野氏は世界の辺境を旅した記録をnoteに書き込むうちに紀行ルポライターになった作家である。東南アジアの納豆紀行図書は土星裏でも愉快に紹介したが、最新作の『イラク水滸伝』は500ページの大著である。単なる旅行記に留まらず、歴史や風土、不思議な風習や現地人との交流、その行動パターンなど多岐にわたって実見したものをリアルに活写している。実に愉快且つ知的な実録記なので、子供から大人まで夢中になって読めよう。挿絵や口絵写真もきれいだし、宇宙人が好きな山口晃や内田樹の名前も出て来る。本家『水滸伝』を読んでいた方がより楽しめるが、読んでいなくても理解はできる。何より高野氏の文章は流麗で表現も上手いから読みやすい。
 例によって宇宙人が付箋を立てた着目ポイントを、お時間のない方のために抜き出しておく。興味が湧いたら是非全編読破を。子供たちには夏休みの読書感想にピッタリだぞ。※印は宇宙人の合いの手。

――多くの文明は自然破壊によって滅びて来きた。具体的には森の消失だ。都市や国家が栄え、人が集まれば集まるほど、多くの燃料が必要になる。木をどんどん切っていくと、森の再生が間に合わず、森がなくなっていく。森がなくなると雨が降った時に洪水が起き易くなり、土地がやせる。同時に直射日光を浴びて地表の温度が上がり、水分の蒸発量が増えたり砂塵が巻き上がったりするなど複合的な作用から雨量が減る。やがて砂漠や荒れ地が増え、最終的には作物は育たず、家畜も飼えず、燃料は全くなくなる。そんな場所に人は住めない。だから大抵の文明は千年ももたない。ヨーロッパでも一度全土が禿山になっている。彼らが観光保護に熱心なのは身に沁みた教訓があるからだ。ところがイラクの湿地帯には(葦という)燃料が無尽蔵にある。――

――だいたい、葦という言葉はどこか誤解を誘いがちだ。多分フランスの哲学者パスカルの「人間は葦である。自然の中で最も脆弱なもの。だが人間は考える葦である」に影響されているのだろう。しかし実際には(イラクの)葦は笹のように細くてたやすく折れるものばかりではない。船頭の使う葦など物干し竿なみに太くて、パスカルの頭をこれで叩いたらかち割れるほど固い。湿地帯に生えている葦には優に高さ8メートルに達するものもある。――
(※西洋人の言うことは信じるな。大抵一部分しか見ていないのに、全体を知っているかのような口ぶりをする輩だから。話半分も信じたら怪我するよ。)

――(湿地帯は)人がいないことで生物たちの天国となっている…――
(※原発事故後に無人となった福島の村落も、動物の楽園になっていたなあ。人間とは自然に対して実に罪深い。)

――「シュメール人=宇宙人節」は私も馴染みがある。シュメール人は何者なのかわかっていない。――
(※宇宙人が何か真相を知っていると思っているアナタ。周囲を見回してくれ。宇宙人の末裔は意外と多く現代社会に棲息している。最近も、わが友人が勤める外資系企業の社長が実は宇宙人で、任期満了に伴い星に帰らねばならぬのに、日本が居心地良すぎて「帰りたくない」と駄々をこねていると聞いた。シュメール人の末裔が生き残っているのと、宇宙人が生き残っているのと、比べたところで大差はあるまい。)

――何よりも驚いたのは、「マンダ教徒はみんなコミュニストだった」というハイダル君の言葉だ。…二千年近くも自分たちの信仰を湿地帯の中で死守してきた人たちが無神論者になるというのは摩訶不思議としか言いようがない。だが考えてみれば、マルクス主義もグノーシスっぽいところがある。この世界は間違っていて、労働者は疎外されており、それを正しく認識した人たちが立ち上がれば、理想の社会が訪れる…オーストリアの哲学者エルンスト・トーピッチュは「マルクス主義とグノーシス」という論文の中で、「彼(マルクス)の初期の諸論文に見られる『疎外』および全著作に見られる弁証法などの基本概念や思考形態は、古代の新プラトン主義・グノーシス的・終末論的・黙示録的伝統に由来する」と述べているから、残念ながら私の独創ではなさそうだ。――

――イラクの人たちは本当に話好きだ。ギルガメシュ叙事詩の洪水伝説によると、シュメールの神々は「人間(の声や音)がうるさい」という理由で人類を滅ぼそうとしたという。ひどい話だが、イラクの男たちを見ていると神々の気持ちもわからなくはない。――
(※宇宙人もおしゃべりな人間は嫌いな方なので、シュメールの神々の意見に賛成なのである。)

――中東・アフリカの遊牧民系の社会では今でも氏族が残っている。…彼らの氏族社会は複雑に枝分かれしている。これを定住民にとっての住所のようなものと私は考えている。例えば私の実家東京都八王子市北野台二丁目…という住所である。東京都の下に貼冬至氏が蟻、それぞれシェイフ(長)がいる。更に北野台以下には町会長というシェイフがいう。それと同じだと思えばわかりやすい。遊牧民系は移動していくから、住所ではなく、氏族の系統でどこの誰かを特定するのだ。――
(※こういう考え方をスラっと出せるのが、高野氏の真骨頂なのだ。実に比喩が上手い。)

――昼間は道で水牛を轢くと運転手の責任になって賠償金を払わなければならないが、夜は水牛の飼い主の責任になる。――
(※あ、これは宇宙人が滞在したキルギスで聞いたドライバーの話と全く一緒だ! 遊牧文化あるあるなのだ。)

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