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千人伝

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様々な人の評伝「千人伝」シリーズのまとめマガジン
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#評伝

千人伝(二百六十六人目~二百七十人目)

二百六十六人目 緑鬼 みどりおに、は木々に囲まれた森の中で暮らすうちに緑色に染まっていった人であった。巨漢であったために、人と思われず緑の鬼と勘違いされてしまい、本人もそのまま人から離れて暮らし続けた。 緑鬼は森の中にあるものを食べて過ごした。森に迷って行き倒れた人間がいたら、自分と同じように緑色に染まるのではないかと、しばらく一緒に暮らしたりしたが、誰も緑鬼のようにはなれずに去っていった。 森が焼かれてしまった時、緑鬼は焼け焦げた木々に合わせて黒く染まった。すぐに緑色

千人伝(二十六人目~三十人目)

二十六人目 原座 原座はある劇団の座長であったが、資金繰りが出来なくなり、やむなく劇団を解散した。団員はそれぞれ個々で活躍し、キャリアを上り詰めていったが、原座だけはいつまでも「元・座長」でしかなく、誰にも誘われず、何にも出演することもなかった。 原座は人を集めることを諦め、幽霊たちと共に過ごすようになった。曰く付きの物件やら心霊スポットやらを巡り、怪談ものを演りたいと誘えば、いくらでも幽霊をスカウトすることが出来た。演劇に興味を持つ死者は意外と多いのだ。 原座は両親を