千人伝(五十六人目~六十人目)
五十六人目 落下
おとした、と読む。何かを落としたような気がするが地面や床を見れば何も落ちていない、ということが稀にある。あれは下に落ちる寸前に落下により拾われてしまっているのである。鍵や指輪や小銭や若き日の夢や、大事なものもつまらないものも分け隔てなく落下は拾い上げる。持ち主の元に返したことはない。
五十七人目 ナメクジミミズ
雨上がりに大量に発生するナメクジの上に塩を振りかけて放置しておくと、跡だけ残してナメクジは消えてしまう。そこに死んだナメクジを慕い寄り添うよう