千人伝(百二十六人目~百三十人目)
百二十六人目 巣本
すっぽんと読む。カラスの巣と野鼠の巣との間にあった持ち主のいない巣に、かつての読書家が蔵書の全てを詰め込み、本の巣とした。溢れかえり拡張する本の巣を見て、もはや本を必要としない人々、本のことを忘れてしまいたい人々、自分の書いた本を人に見せたい人々が集まり、本の巣はカラスの巣も野鼠の巣も、その土地に住んでいた人々も飲み込んでしまう規模になってしまった。
自然発火か放火かは分からないが、本の巣は焼き払われた。焼け跡で発見された子どもが巣本である。亀のような